WILD THINK

ラテン楽団「Orquesta de WILD THINK」のバンマスが、日々思うことをダブワイズ

[連載小説]五反田アポロシアターマンデイスペシャル 其の2

2011年05月30日 | 小説 G.A.M
其の1はこちら

午前10時30分。
男は相変わらず前のめりで徘徊していた。

ところで、男はかつて大学の先輩に連れて行ってもらった四ツ谷のとあるジャズバーに行くのを習慣としていた。
大して酒の味も、ジャズの味も知りもしないくせに、ただなんとなく、
かっこいい、しぶい、という自分を演出したいがために、誰に見られるわけでもないのに、四ツ谷のジャズバーに行くのを習慣としていた。
意味のわからん名前のついたカクテル1杯1,500円×3、醤油皿が多少洋風になったものの上にのっかった微量のピーナッツとチーズ1,000円、同じくトマト5切れ1,000円、チャージ代500円、しめて7,000円也 
男はいつの日か会計をする度にこう思うようになったのだった。「この金で風俗に行けるではないか」と。
そんな時は、いつでもソプラノサックスの優しい響き、ジョンコルトレーンの「マイフェイバリットシング」が流れていた。。


夜はネオンに彩られるであろう、でも、閑散とした昼前の五反田。
そこに突然、陽光に抗うように極彩色に光る幅90cm高さ120cm程の四角い箱が男の眼前に現れた。それにはでかでかとこう書かれていた。
「アポロシアター 3,000円」。
看板の横には、深緑のコンポラ風のスーツをだらしなく着崩した色の浅黒い初老の男がにやにやしながら立っている。
男と目が合うと、彼は昔あったことのある友人だったかのように、「おはよう。」と酒焼けしたガラガラ声で挨拶をし、張り付いたような満面の笑みでこう言った。
「お兄ちゃん、どう?」
そして、右手で何か棒状のようなものを握る仕草をし、口を「ほ」の発音をするような形をつくり、若干首を前後させながら、「ウチはこれの店だから」とあっけらかんと馴れ馴れしく、言った。

突然の出来事に、男は怯み臆した。
そして、無茶を言うあのクライアントに見せるような、複雑な愛想笑いを見せながら、会釈をし、その場を通り過ぎたのであった。
男は若干気分が萎えた。「秘するが花」というが、これでは花が秘して無いではないか、と思ったのであった。

暫くし、男はこうつぶやいた「アポロシアター 3,000円か」と。
男の趣味はツィッターなのだがこの
つぶやきは、つぶやかなかったのだった。


たぶん、つづく、と思う。


--------【告知】--------
僕がバンマスやってるラテン楽団「オルケスタ デ ワイルドシンク」が、ライブイベントを主催いたします。

●07月17日 日曜日(祝前日)
Wild Think presents 「Yellow Atlantic」
場所:下北沢 440
開演:12:00(昼) / 終演:15:00
お代:1800円(ドリンク別)
チラシ持参で1500円

出演 :
●オルスタ デ ワイルド シンク
●ハリガリアンブル

DJ:
松本卓也(ロソララ/タムタム楽団)
デルクモ(ワイルドシンク)

陽光降り注ぐ下北沢のカフェ「440」にて日曜のお昼をトロピカルに彩ります。
真夏の東京を擬似カリブに誘いますぜ。
みなさま是非お越しをば。


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