今では、様々な問題で、できなくなった65年位前の貴重な実験の報告を紹介します。
九州大学医学部衛生学教室の神田三郎先生が行った
「口腔保健指導が児童の体格並びに精神発育に及ぼす影響に関する研究」(「九大齒科學會雑誌」1958年3月31日号)です。
昭和26年から29年にわたる実験の結果が報告されています。
神田先生らが6963人の幼稚園児、小学生、中学生の口腔内を検査し、偏食の状態を調べたところ、
口腔が汚れて虫歯が多い者は、ほとんどが強度な偏食があることがわかりました。
その中から虫歯が3本以上あり、体格、知能学力の平均値がやや劣っている児童120人(小学校4年生)を選び、
それを60人ずつの2学級に分けて、実験を行なったのです。
一つの学級の児童には、食事指導や口腔内の清掃、姿勢、生活習慣などを指導しました。
特に重点を置いたのが、咀嚼訓練でした。咀嚼回数を30回、慣れるに従い40~50回にしました。
昼食時間を30分早め、担任の教師も一緒に弁当を食べるほどの徹底ぶりでした。
その結果、実験開始7か月後から明らかな差が現れました。
3年後には、咀嚼や生活習慣などの指導をした学級の児童は、知能指数が平均(正常値)を上回り、
上知(IQ 110から120)最上知(IQ 120から140)となったのです。学力検査の成績も大きく向上しました。
この実験は口腔状態と子供の心身の発達に関する研究の先駆けの一つになっています。
今では、こういった実験は許されませんが、よく噛むことが学習能力の向上につながっている事を示しています。
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