ただごと

たいくつこそがすばらしい!日常のただごとをただごとでない風に綴るのらくら日記

抱き合わせ

2011年12月04日 | 日記

一つ前の記事で、「自分好みの商品がない→じゃあ自作するべ!」という

わりと単純な流れをやってます、とご報告させていただきましたが、

それを書いていて思いだした事があるので、ついでに記事にしておきます。

(鉄は熱いうちに打て、ネタはできた時に書け)

 

 

 

  

昔々あるところで、七咲という人が100均のお店で働いていた頃のことです。

 

こぢんまりした100均だったので、店員2名で切り盛りし、仕事には上司も不介入、という

わりと自由気ままな職場だったので、好きなようにやらせてもらっていました。

商品の発注も、自分の販売計画でほいほい入荷させていました。

 

その中で、七咲が力を入れていたのが、「観葉植物」です。

地域で1番の店になるには、これだ!と目をつけたカテゴリーの一つです。

「あの店にいけば自分スタイルの観葉植物が提案してもらえる」というのを

最大限の売り!にするために日々いそしみ、いそしむあまり、

「葉っぱのミカタ」というブログまでも立ち上げてしまったくらいですが、

(そして商売人じゃなくなった今モチベーションがすっかりなくなってしま…)

…それはまあ、ここではまた別の話でして。

 

とにかく、観葉植物を売る!その関連商品はもっと売る!!

 

というわけで、毎度ガーデニング関係は、とにかくスペースとの闘いで、

ありとあらゆる商品を入荷させていました。

 

その中で、一番てこずっていたのが、ガーデニングプレート関係。

 

庭に飾るウエルカムボードから、鉢にさすちいさなピックスまで、

これでもかと種類を取りそろえて発注していたのですが、

これらはすべて「カントリーシリーズ」として、うさぎ・テディベア・グリズリーの

3キャラクターが、それぞれ可愛く塗装されている、というものです。

 

一番人気が、うさぎ。次に、テディベア(と勝手に呼んでる。茶色のくま)。

まったく売れないのがグリズリー(これも勝手に命名。灰色のくま)。

 

だったら、うさぎとテディだけ発注すればいいようなものですが、

100均のメーカーさんは、値段が値段だけに、最大限にコストを下げるため

 

融通が利きません。

 

同じ商品の色違いや柄違いがあった場合は、ほとんどの場合が『アソート』です。

(これが100均じゃない通常の売り場の場合だと、1点から注文できます。

100均だと200~300個単位でないと注文も受けてもらえません)

 

プレート1枚発注すると、うさぎ×4、テディ×4、グリズリー×4、が

否応なく入荷する仕組みなのです。

 

そうすると、いつまでたっても人気のないグリズリーが売れない!

 

他のが完売しているので、グリズリーが売り切れるのを待っていられなくて、

またもや注文する→他は完売、グリズリーは二倍在庫。

しかし人気商品がないのでまたもや注文する→完売、グリズリー三倍在庫。

それでも目玉商品が欲しいのでしつこく注文する→完売、グリズリー四倍…と

 

こんな魔のエンドレス!!

 

売れる物が欲しいので大量に注文すると、もれなく売れない物も大量に入荷する

阿鼻叫喚な売り場、それが100均!!

(食器とか文房具とかでも一緒!全部、売れるのと売れないのがアソート!摩訶不思議!)

 

それを繰り返すあまり、七咲は悪魔のささやきに負けました。

 

売れないなら、売れる商品にすればいい

 

というわけで、人気のない倉庫で油性マジックを手にとり、グリズリーを鷲掴み、

その可愛くない御面相を、これでもかというほど可愛くしてくれるわ!!

と、

 

死んだ魚のような目を、つぶらなお目目に大改造!!

 

するとどうでしょう!

今まで、大量に在庫を抱え、こいつさえいなければと歯ぎしりした日々が嘘のように

 

ざっくざっく売れる!!

 

悪魔にそそのかされた所業のおかげで、その売れ行きの良さに高笑いでしたが、

それよりも何よりも笑ってしまったのが、二番人気の茶色いテディを追い抜いて

 

完売したんですよ。あのグリズリーが。

 

倉庫で屍のようだった大量のグリズリーが、一躍スポットライトを浴びた瞬間でした。

ブラボー!油性マジック!!

ブラボー!悪魔に魂を売った自分!!

 

ああ、そうとも。

俺様、売り上げのためならたとえ人でなしと後ろ指をさされようが、

入荷してきたグリズリーを、片っ端から油性マジックの餌食にしてやるのさ。

人の道をはずれた所業に震え上がるような子羊はお呼びじゃないんだぜ。

 

そんな感じでついつい調子にのって、最後の方なんかもうつぶらなお目目どころか

ちょっと困った眉毛とか、恥じらいの頬染めとか、すねちゃうぜな口元とか

 

七咲オリジナルに大改造

 

して、素知らぬ顔で売っちゃってたんですが…

…。

……。

 

 

 

 

…もう、時効ってことで、いいですよね?

 

 

 

 

  

100均を退社しての惜しむらくは、次の人にその「悪魔のささやき」を伝授してくるのを忘れた!

というところでしょうか。

七咲がいなくなったあとも、あのカントリー3兄弟グッズが入荷しているとすれば、

グリズリーの大量在庫が目に見えるようだ…、と目頭が熱くなります。

 

そんな悪事伝授しなくていいから!!

 

そんな、メーカーさんとお客様から非難ごうごう必死な思い出でした。

 

なんだ。

ハロウィンとクリスマスの製作で、もう世間に媚びちゃうぜ!と意気消沈でしたが

結構昔から媚びちゃってたんだな、と、立派な守銭奴の素質があったことに

今更ながら気づいちゃった、という話。

 

そう、七咲は売る!仕入れる!売る!仕入れる!の、売上がっぽり生活が大好き!!

その為なら仕事といえども、楽しくて楽しくて趣味や娯楽もそっちのけで売る売る売る!

という勤め人時代。

(いや、工場で延々、作る作る作る、もたまらなく好きでした。ためるのがすきな性分なのかな…)

 

今で言う「モンスター」との連日の死闘を十数年も続けていると精神の方が疲弊してきて、

このままだと自分の人間性も危うい!!と危機感を抱いたので

やむなく販売の場から離れたんですが、

お客さんさえいなければ、販売という仕事は何よりも楽しい天職でした。

 

…お客さんがいなければ、販売が成り立たないんですけど、ね、…ええ。はい。

 

売れるものと売れないものは抱き合わせ!

楽しい事と楽しくないことも抱き合わせ!

そんなもんです。