特別支援学校と京都市の総合支援学校
総合支援学校の建築計画に関する研究(1)(2)(3)
日本建築学会大会学術講演梗概集(東北) 2009年8月
上野淳 栗田実 杉田淳志 菱田佳奈
1 研究の目的
本研究では総合支援学校の実態を1)学校運営 2)児童の学習・生活活動の実態 3)学習空間の利用・構成状況 4)空間の構造化の状況 等の観点から把握し分析することで総合支援学校の建築計画に関して基礎的知見を得ることを目的とした。
2 研究方法
特別支援教育に先進的な取り組みをしている京都市に注目し、北総合支援学校(以下北総合)と西総合支援学校(以下西総合)で調査を行った。
1)終日観察調査を両校の8学年29学級に対して行い学校生活の流れと、空間の利用実態を把握
2)全校において、空間の構造化に関する実態調査
3)学校管理者に対して学校運営面に関するヒアリング調査により、総合育成支援教育への取り組みの把握
3 児童生徒の学習生活活動の実態
北総合の教室空間にはオープンスペースがあり、可動式の壁を開閉することで様々な空間を構成可能である。西総合では北側方廊下の従来型教室空間構成で、均質な空間が並んでいる。両校とも、教室の付近に広いスペースがあると動的な活動と静的な活動の空間の使い分けがなされやすい傾向が見られた。また、基本的に一人の教師が複数の児童を支援している。
4 構造化空間の構成の状況
常設空間での視線の通り方や形状を評価するために「開放率」を定義し、その開放率別に常設空間設置数を分析した。
北総合ではオープン型の教室空間において常設学級を複数学級で効率的に利用している。西総合では1学級に1か所以上が設定されている。両校とも閉鎖型と開放型の設置数が多くみられ、死角となる場所の設置件数が顕著に多い。また、廊下側ほど「閉鎖型」、外部側程「開放型」の空間構成を採る傾向にある。
構造化空間(注)における利用行動はプライバシーレベルが高い行動である傾向があり、利用行為と空間の性質の関係によると、常設空間では特に多目的利用されていると指摘できる。
注)本研究での「構造化」とは教室空間等に、特定の機能を持つ領域化された空間を持つことである。
5 まとめ
以上より以下の知見を得た
・教育空間には予め、常設空間を計画しておく方針に、検討の余地がある。またその常設空間には、小学部に柔軟な床材を置くなど、障害児に配慮した環境や、一定の収納機能を有することが望ましい。
・5�までの常設空間が有効であり、広いほど「開放型」、狭いほど「閉鎖型」として設定されやすい。また、廊下側ほど「閉鎖型」、外部側程「開放型」の空間構成を採る傾向にある。
・教室空間は可変性のある空間構成が有利であり、近辺にやや広めの空間があるとさらに良い。また、教師の支援活動に有効な見通しおよび、学園のまとまりを確保し得る学習空間計画が重要である。
6 感想
常設空間をオープンスペースにすることは障害児にとって有効な計画だと感じた。障害児一人一人に対応をしやすくするため、通常の学級よりもオープンスペースの重要性を感じた。
(副島眸)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます