2019年度支部共通事業 日本建築学会設計競技 課題:「ダンチを再考する」
設計趣旨
ダンチを再考する。
かつて,ダンチは団地族と呼ばれる,小家族で比較的世帯年収の高い,家族形成期の人々の住まいとして,人々の羨望の的であった。そこには,居住者相互の類似性に依拠する暮らしの共同体があった。
時代は流れ,家族の構成や就労状況、生活時間が多様化し,「標準世帯」用住戸群から成るダンチのあり方との齟齬,コミュニティバランスの崩壊が生じている。そこで,一住戸=一家族の住まいを脱却し,その境界線を融かし,一住棟を家とすることで多様な住まい方と家族のための住まいをつくる。
階段室ごとの1階から最上階までが,一つの家である。
アプローチを北側から南側に反転し,階段室をセミプライベートスポットとする。既存の骨格を残し、住戸の南北にアタッチドフレームを 設置して耐震性を高め,かつ階段室の踊り場を拡張することで趣味や勉強などの時間・空間を共有する活動の場をつくる。
各家族の部屋を必要最小限とする。セミプライベートフロアには吹抜けを設け,建物荷重を軽減するともに,住まいの機能を選択的に利用する多様な住まい方と,居住者が聴覚や嗅覚、視覚で気配を感じるつかずはなれずの距離感をつくる。暮らしが表出するプライベートスペースは,人々の寄りあいの場となる。
住戸=家と従来の家族の境界の融解により,一つの家にともに暮らす「イエゾク」という新しい関係性が生み出される。これは,分解と再構築の時代の新たなコミュニティである。
2019年7月
榎村賢,齋藤美優,押尾萌加,張尚灝,岡田一希
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