COVID-19禍のただなかですが、高輪ゲートウェイ駅の開業がちょっと話題です。
いろいろな技術の試験採用がされたそうです。
AI駅員・さくらさんがあからさまなセクハラ質問にも「ごめんなさい、聞こえなかったことにしておきますね」などと対応する設定である、ヒトがプログラムをつくるこの世界で、この案件の発注と承認権限者はハラスメントやジェンダーバイアスを野放しどころか肯定した上世界に誇ってみせるのか今何世紀だこの人権後進国が、という案件も炎上中です。
(その後、設定が改善されたみたいです!)
それから駅の表示サインが明朝体。視認性悪すぎ。見ればカーニング(文字間調整)もされてない。デザイナー入れてないのか? 案件も炎上中です。
それぞれ気になることがあり、新しいものにはいろいろなツッコミが入るのはある意味で当然と思います。
いろいろなツッコミを、どう改善に生かしていけるか、も、このSNS時代のポイントなのかもしれません。
さて、この駅について、こんなツイートがありました。
「高輪ゲートウェイ駅で一番凄いと思ったのは黄色い点字ブロック!
あれって色規定なかったんだ!
確かに、そもそもの用途を考えると色はそれほど関係ないはず。だけど、やたらと目立つ色にして駅構内を美しく見せようとする際の妨げになっていた。それを彩度落として目立たなくしてた!」
ご本人が後に、この点字ブロックのカラーリングについての開発経緯を調べて補足されています。
「クールイエロー」で景観にも配慮した、と。(ご興味のある方は掘ってください)
このコメント、「見えない人用の設備だから色は関係ない」には、大きな誤解があります。
盲の方(見えない)よりも弱視・ロービジョンの方(見えにくい)のほうが多く、視覚障害者の7割を占めます。
ロービジョンの方にとっては、触覚情報も大切ですが、色彩による情報もとても助けになります。
そして、「黄色い線」と認知している子供や知的障がいのある方、高齢者などにとっても「統一された色覚情報」は有効です。
触覚と視覚(色、輝度比)の両方による情報提供は、より多くの人、より多くの状況にとってメリットが多い。
検証してみました。
こちら、一般的な駅ホームです。
アスファルト舗装と内方線付き点字ブロック、輝度比が高いです。
❇︎内方線付き点字ブロックだと、ブロックの上を歩いた時にどちらがホームの内側か線路側かが判ります。
色覚特性ごとの見え方を確認できるアプリケーション「色のシミュレータ」で、グレー舗装と黄色い点字ブロックの駅ホームと、エスカレーターを見ます。
C以外の色覚タイプは日本人では男性の5%、女性の0.2%が該当します(北欧系男性は8〜10%とも)。
男性の、佐藤さん鈴木さん高橋さん田中さんに会ったことがあれば、5%とはその確率と同じです。
さて、どの色覚特性でも、黄色の点字ブロックや黄色のラインは判別性が高いことがわかります。
高輪ゲートウェイ駅に来ました。
茶色系の舗装と、「クールイエロー」の点字ブロックです。ホームドアがあるから不要と判断したのか、内方線はありません。
茶色系の舗装と、「クールイエロー」の点字ブロックです。ホームドアがあるから不要と判断したのか、内方線はありません。
ロービジョンの方(中心視野欠損、周辺視野欠損、低視力…)の見え方を確認できるアプリケーション「見え方紹介アプリ」を使います。
設定次第でいろいろな見え方を試せますが、ここではまず50センチ指数弁程度の低視力に設定。
黄色とは判別しにくいですが、舗装の色が茶色と異なることは判ります。
30センチ指数弁。
こちらは、グレーやホームドア腰壁の白と混ざり始めます。
色覚特性ごとの見え方。
T(3型2色覚)の場合は、茶色系の舗装との関係で色による認知はしにくいです。
エレベーターの前の誘導ブロックと点字ブロック。
30センチ指数弁程度で見ると溶けます。
人気の吹き抜け空間。
写真を撮っている人多数。建築関係?わあお仲間ですか?
足元を見ます。階段。段鼻は触覚情報優先のデザイン。
ロービジョン視点では、色は見えません。
他のカラーリングのホームも見てみます。
ロービジョン視点では、色は見えません。
他のカラーリングのホームも見てみます。
グレーの舗装、黄色の内方線付き点字ブロック、ホームドアなし。横浜駅。
ロービジョン、色覚特性それぞれともラインが見えます。
こちらは、内方線付き点字ブロックに黒のペインティングで縁取り、ホームドアなし。上野駅。
同様に、
よりはっきり見えます。
なお、色覚特性とロービジョンの両方と視覚特性をもつ方ももちろんいます。
エスカレーターの段差の配色、段鼻が黄色で地の色が黒だと、よく見えます。
ロービジョンの設定でも見えます。
こちらは段鼻に黄色と、その横に黒の縁取りをした配色。
ロービジョンの設定でも段差の位置が判ります。
ホームドアがある場合とない場合では、カラーリングの意味が違うのでは?
エスカレーターの段差の配色、段鼻が黄色で地の色が黒だと、よく見えます。
ロービジョンの設定でも見えます。
こちらは段鼻に黄色と、その横に黒の縁取りをした配色。
ロービジョンの設定でも段差の位置が判ります。
ホームドアがある場合とない場合では、カラーリングの意味が違うのでは?
という疑問もあると思うので。
こちらはグレーの舗装、黄色の点字ブロック、その脇に明度の高いグレー。ホームドアあり、千代田線ホーム。
色の情報は大きいなと、思っていただけたのではと。
もちろんそれは景観への影響の裏返しで、どこでもかしこでも黄色と黒の配色でないといけない、となると景観デザインの可能性が制限されるという意見もあります。
不特定多数が一見でも利用する公共交通機関と、利用者が限られ、要配慮者には個別対応が可能な種類の施設では求められる条件が異なります。
「視覚障害者のための設備には、色の配慮は重要ではない」という認識だけは、明確に誤解です。
この記事の意図はそれだけ。
なお、本学の大階段、
特に曇りの日の下りは全然まったく最高に、段差が判別できません。
特に曇りの日の下りは全然まったく最高に、段差が判別できません。
そんなこんなも体験型で学び、改善提案を行う大学院科目「地域施設計画論(成果の紹介ページ)」は前期配当科目です。
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