以前私も書いた清流の国岐阜の長良川。
そこで、最近、ニジマスの逸脱問題がありました。
これにより、私もニジマスなどの放流という、漁業の問題を知りました。
問題と言うべきか、事業と言うべきか。
(イラストACのイラスト利用)
それで、このたび、ニジマス界隈の事を調べて見たら、驚くことに、このニジマスだけでなく、全国では「放流」が行われています。
これは我が国が明治時代から、サケの放流などをよくやっていたからです。
それで、海や川でもっと採れるように、といろいろ放流されるようになり、今は70種ぐらいが放流されています。
どんなものを放流しているかは、こちらに
水産庁HP 令和4年度水産白書 (4)資源を積極的に増やすための取組:水産庁
魚を育成して、魚を獲る。というためのもので、最近では、栽培漁業と言います。
その名の通り、人口漁礁だの、エサ場提供だの、産卵場の提供だの、ブロック設置、保護育成礁だの・・・海が人工栽培のようになっています。
海も川も、こうした栽培して獲る形になり、その料金を放流した協会や漁協に支払う、栽培センターは種苗を育成する、簡単に言うと、そういうトライアングルか、フォーメーションというか、形になって、そこへ漁師さん、その他、魚やその釣り具を売る人らなどが関わっているのですね。
年間のニジマスの放流量は、514万匹 釣り一人、約22匹ほど利用・・・渓流魚の放流マニュアル 水産庁
ニジマスの細かい売上が分かりませんでしたが、この中に、サケマスの産出額が載っていました。
これを目分量で10憶円と見積もって、500万匹で割ると、一匹200円・・・
(・内水面漁業・養殖業をめぐる現状について 令和3年7月 水産庁 )
(・参考:海では約324万t、約8000億円 令和3年 漁業産出額:農林水産省 )
こうした中、川で釣りをする券の収入が漁協には、大きな収入になるところもあって、川での釣り客が買う遊魚の券は、大切な収入源のようです。
内水面漁業・養殖業をめぐる現状について 令和3年7月 水産庁 より
釣りをする券(遊漁承認証)が発行された枚数 上記の10P
約200万枚・・・けっこうな売上発行枚数になります。毎年200万PVあったら、すごいですよね。
この総額がこれといった額が分かりませんでしたが、まあ一人500円ぐらい使うとしても、全体ではでかい額と思います。
今回の件でよく出る言葉の意味
・第5種共同漁業権
これは法律上の呼び名で、川や湖沼などで行われる漁業のこと。主に、アユ、ウナギ、コイ漁業などが主流。
・第5種共同漁業権魚種
上の漁業で漁師が獲る魚で、漁協が管理する。川や湖沼などが魚などが枯渇しやすく、放流することが義務づけられているのが現状です。
そして、その中に、ニジマス、ブラウントラウトなどの外来種も入っているのも現状。
なぜ、ニジマスを放流する?なぜニジマスなの?となりますが、そこは魚も何でも可能かというとそうではなく、養殖のしやすさや扱いやすさなどから、です。
機材のない、明治時代でも出来て、川に最初に放流された魚です。
それで、昔から日本ではよく放流がなされ、北海道では盛んに放流され、定着し、問題になっています。
しかし、水温の関係で、本州で定着はしない、という説があり、そういう内水面で釣りをする人向けに、各地で放流がされているのが現行。
調べて見ると、出る数々の日本のニジマス放流イベント。
ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトの各地域の利用状況です。(養殖なども含む利用状況なので放流だけではありません)
水産分野における産業用外来種の管理について平成29年12月水産庁 より 抜粋
私もニジマスがここまで利用されているとは知りませんでした。(魚は、この3種が産業用外来種)
これらは産業用外来種と指定され、そのため適切な管理が必要です。
上記の管理について、より
『 「産業用外来種の適切な管理」
「産業利用されているものの中でも侵略性を有する外来種については、まず「入れない」対策として代替性(※)がないか検討することが必要です。
代替性がない場合は、外来種リストの「利用上の留意事項」を参考に、「これ以上の分布拡大をしない」よう、「捨てない(逃がさない・放さない・逸出させないことを含む)」対策が必要です」 』
ニジマスは北アメリカ、カムチャッカなどが生息地で、冷たい水を好みます。
これが海で育つと、我々がよくスーパーなどで買って食べているトラウトサーモン。刺身などの食材。(我々はよくノルウェーのを食べている。イクラにもなっています)
「外来生物法」(略)=正式「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」2005年より
では、産業用外来種。
環境省HP 特定外来生物等一覧 | 日本の外来種対策 | 外来生物法
世界の侵略的外来種ワースト100
日本の侵略的外来種ワースト100
問題:在来種と競合・捕食:ヤマメ、アマゴ、イトウ、サケ、オショロコマ、甲殻類など
北海道では定着して問題化していますが、水の冷たくない本州のほうでは死んでしまうし、繁殖もしないし、定着しないから、という説もあります。
しかし、水の冷たいところとか、高山など、冷たい環境を保つところはいくらでもあると思うのです。
全国を調べて見ると、それらしい情報はありました。
高知県 HP
「高知県で注意すべき外来種リスト」令和2年(2020)7月
「県内河川の上流域等で定着しており、いったん定着すると在来種との競合が生じるため、これ以上の分布拡大をしないよう注意が必要」
(これも上に出した同じ資料ですが)
水産分野における産業管理外来種の管理について 平成29年水産庁 P8 より
「問1 漁業権に基づいて行われているニジマスの放流は今後はどのような扱いになりますか」
「ニジマスやブラウントラウトは、降海して他の河川に生息域を拡大したり在来種と交雑する能力を潜在的に有しているので、関係する都道府県や水産試験場等と協力して、対象魚種の分布や再生産の状況、管轄する漁業権漁場からの移動(地域によっては降海魚の存在を含む)及び交雑種の有無等に関する情報を収集していただきたいと考えています」
ということで、ながながと書きましたが
これは・・・もう少し、怖れて扱っても良いのでないかと思います。
万一、繁殖はせずとも、好適地の冷たい水の環境に入って生き残れたとしますと、数年と長生きする場合もあるでしょうし、放流が繰り返されたら、ずっと群れや個体は持続するようにもなり、定着している形にはなるのでないでしょうか。
ニジマスは、大型では50cm、60以上になるぐらいになるものもあるそうです。
ざっと計算してみましたが、一年目の小さいニジマスで、一日たとえば3gのエサ(在来種など)を食べるのが3000匹いると、
一匹3g×放流3000匹×365日=3285000g=3285kg=3t
トキが60羽の群れで生息するのに、年間で必要なエサ必須4,4t、(安定には年間10倍の40tが必要)ですから、トキ60羽の群れに匹敵します。
50センチ1キロのニジマスで、一日たとえば30gのエサ(在来種など)を食べると、
一匹30g×放流3000匹×365日=32850000g=32850kg=32t
在来種を食い、在来種と競合もするのですから、トキが本来なら60羽で暮らす共生の関係がなくなってそこはある種、単調な生物層になっている、ように思われます。
そもそも、放流には、いろいろと、懸念の声もあるようです。
参考HP
wedge online
海外では放流などあまりしてないようで、資源管理によって増加を推進しているようです。
放流に頼らない川もあります。
放流だけに頼らない!天然・野生の渓流魚(イワナやヤマメ・アマゴ)を増やす漁場管理 水産庁
こちらでは、野生魚は放流魚より生存率が高く、生き残るのが多いので、すなわち効率が良いことが言われています。
これは海のほうも参考になりそうな話です。
・・・・・
ということで、総合的に考えたら、ニジマスなどの利用や釣りなどは、施設とか、自然と関わってない人工的なため池とかの、限られた場でやるほうが良いのではと思いました。
外来種も漁業も、産業用も広い話ですが、これ以上書くとまとまり切らないように思いますので、割愛です。
(ブラックバス(オオクチバ・スコクチバス)放流=特定外来生物、飼育運搬放流等禁止などの件も)
放流や栽培漁業については、今が良い状態なのか、その選択で良いのか等、漁獲高の低下のニュースが多くなってきている現在、今だけではままならない現状も見えています。
今後、気候変動で水温が高くなり、このまま海の環境、川の環境が変わり続けたら、放流した魚も増えるか・・・琵琶湖も不良となっています。
自然に流れる川では、また自然が天然更新していく、海や干潟でも、また時期が来たら増えて来るようにしていたら、強いです。
今後、30度以上の日がもっと増えて来たら・・・各地、どうなるか分かりません。
そのため、自然を強くしておく、在来種を守る、在来種で守る、ことは重要なことです。
自然には温度の調節サービスがありますから、自然で我々も冷やし、自然環境も冷やしながら・・・お互いを守り合うこともできると思います。
田んぼや開発された町では暑いですが、うちの近所は山に囲まれ、池も海あり、川に囲まれ、温度がかなり下がって涼しいです。
今はセメント固めよりもそういう部分をいかに減らすか、変えるか。在来種をいかに守るか、その強さでどう我々を守るか、の時期と思います。
そうして変わる部分でまた、経済的な機会も作れるでしょう、
海もそうですし、漁師さんが厳しいと言うのは川もそうでないかと思いました。
これはもっと生物多様性を増やして、その界隈で観光やイベントなどをして、経済活動をしても良いですね。
河畔林、ワンド、湿地、池などを増やしたら、釣りではお父さんと息子ぐらいしか行かないでしょうが、お母さんとその娘さんも連れ立ってやって来てもらえる場になるのでないでしょうか。
そういう池や水路、湿地などが増えたら、魚なども増えて、漁師さんも採る魚も増え、その他いろいろと機会が増えて、収入アップにつながるのでないでしょうか。
そういう場を営む生物多様性を維持する方々にも、これもまたいろいろ新しい取り組みや機会が出て来ることと思います。
まとまりきりませんが、まとめますが、
逸脱については、我々にも問題が関わります。
いつでも買える、ホームセンターのホテイアオイのような繁茂する水草、ネットで売買できる野生動物、繁殖業者のトカゲや両生類等のペット、遺伝子組み換えメダカなど・・・
私も何かの園芸種や、友人からもらったアサガオ、何かに紛れて入って来たスミレ、その他がその辺に逸脱しているのを見て、びっくりしたんですね。
なのに、園芸店で売っているものも、ホームセンターも、誰も教えてくれません。
ですが、アサガオなどは着実に広がりつつあります。私は一生懸命引き抜いている途中ですが、近辺でうちから逸脱したのではない、他人の家から逸脱しただろうアサガオを見ます。(冬は枯れています)
我々はこうした逸脱について、無知です、私もそうです。
今でもホテイアオイは何トンも駆除されながら、売った側が現地を救いに行くとか、回収するとかはなくまた売られています。
が、我々の側も、何せよ、「逸出させないこと」をよく考える必要があるだろうと思います。
遺伝子汚染してしまう国内の在来種も含めて。
我々も未然に、これは使用しても大丈夫だろうか?という警戒心を常日頃、頭の中に置いておくべき事と思います。
それが己の住む地域のため、家族や友人のためにもなります。
※前に書いた長良川の記事
魚道と田んぼをつないだ生態系ネットワークで魚が増え、漁業でも利用できる話
この記事内のリンク切れを発見したので、読売新聞の記事
サーモン・・・