A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

色々チャレンジしてみても、最後は親の血筋は争えない・・・・

2008-02-12 | CONCORD
Sweet Lorraine / Lorraine Feather

父親にとって、自分の娘というのはいつまで経っても可愛いものかもしれない。
親元を離れ、独立して自分の道を歩み始めても色々気にはなるものだ。自分の生きてきた世界とまったく違う道を生きていくのであれば、自然と自分から遠い存在となっていくのだが。ところが、反対に自分の日々過ごしている世界に飛び込んで来るとそうはいかない。自分がその世界でそれなりの存在であればあるほど、娘の育つ姿が余計に気になるものだ。
愛娘が同じジャズの道を歩み始めたのがジミー・ロウルズ。何度も一緒に演奏する機会を重ね、無事二人でアルバムを作るに至った。ここまで来れば父親冥利に尽きるであろう。

ここにまた一人「ジャズの世界で有名人の娘」がいる。ジャズ評論家で有名なレナード・フェザーの愛娘であるロレイン・フェザーだ。
1978年、彼女はジャズ歌手としてConcordでデビューを飾った。といっても、親の七光りやコネでレコーディングに至った訳ではない。

両親と一緒にロスに住んでいたロレインだが、最初は演劇の道を目指してニューヨークで一人修行の道を選ぶ。その後、音楽の世界で生きていく決意をした彼女は、ニューヨークの多くのバンドで歌うことに。ジャズの世界ではなくぺトラクラークやグランドファンクレイルロードのバックも努めたそうだ。
そして、ロスに戻った彼女は。やはり親の血は逆らえないのかジャズの魅力にだんだん惹き込まれることに。
地元の小さなクラブに出ている内に、たまたまその中の一軒、Donte’sで歌っている時にジェイクハナの目(というか耳)にとまる。
そしてすぐに彼女の存在がカールジェファーソンの耳に入ることになる。
さっそくレコーディングとなった訳だ。

若い彼女に合わせてかバックにも若手が揃えられる。テナーのスコットハミルトンに加え、直前にデビューしたばかりのテッドナッシュも加わる。まだ彼が19歳の時だ。
ベースにはチャックドマニコが。ドンエリスの変拍子オーケストラクレアフィッシャーのオーケストラに加わっていたと思ったら、この頃にはすっかり中堅となっていた。
後は、お馴染みのハーブエリスのギターとピアノのロストンプキンスがリズムを固める。
そして、もう一人ギターにジョー・ディオリオが加わる。彼もコンコルド初登場だが、ロレインの父親レナード・フェザーにジョーパスの後継者と言わしめた中堅ギタリストだ。

これでお膳立てが完璧に揃った訳であるが、果たして彼女の歌がこのバックの期待に応えられる腕前があるかが気になるが・・・・。
心配は無用であった。これが期待以上に素晴らしい。短期間で色々な舞台の場数を踏んだせいだろう、新人デビューとは思えない多彩振りを見せてくれる。

1曲目のスタンダード”Someone to Watch over Me”は、ピアノをバックに始まる。何となくおぼつかない感じがしないでもない。
2曲目ではいきなりロックのヴァンモリソンの“Moon dance”で調子に乗る。
3曲目は再びバラードの名曲”Skylark”をトンプキンスのピアノをバックに歌うが、これもなかなかうまくこなす。
あとは快調にラテンリズムに乗って、さらに”Deep in the Night”では熱唱を聴かせてくれる。
B面に入ってボブドローの曲”I've Got Just About Everything”ではスインギーな側面も。マイルスの”All Blues”,” Four”ではアニーロスを窺わせる歌い方も披露。

Concord特有の何の飾りっけも無いアルバム作りであるが、かえってバックのバリエーションを含めて彼女の持ち味がストレートに引き出されている。
デビュー作としては十分及第点。その後の多方面での活躍を予見させる出来栄えだ。

父のレナード・フェザーがライナーノーツを書いたら、はたしてどんな解説になったであろうか?



1. Someone to Watch over Me    Gershwin, Gershwin 5:04
2. Moon dance              Morrison 3:33
3. Skylark                Carmichael, Mercer 2:53
4. I Don't Believe You         Frishberg 3:22
5. Deep in the Night          Merriam, Miller 3:09
6. I've Got Just About Everything Dorough 3:29
7. All Blues               Brown, Davis 5:45
8. Wave                 Jobim 3:24
9. Four                 Davis, Hendricks 3:45
10. You and I              Kellaway, Mackay 3:56


Produced by Carl Jefferson & Frank Dorritie

Lorraine Feather (vol)
Scott Hamilton (ts)
Ted nash (as.fl)
Joe Diorio (g)
Herb Ellis (g)
Ross Tompkins (p)
Chuck Domanico (b)
Jake Hanna (ds)

Recorded at Sunwest Recording Studios, and United Western Studios, Hollywood, CA, June 1978
Originally released on Concord CJ-78

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サド・メルの2人の出会いはまだ終わりではなかった・・・

2008-02-12 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Thad Jones&Mel Lewis / UMO The New Music Orchestra

先日紹介したサドジョーンズとメルルイスのカルテットの演奏が2人の最後の演奏と書いてしまったが、これは早とちり。2人の共演はその後もまだ続いていた。このアルバムは1977年暮れの録音だ。

自分達のオーケストラを引き連れてツアーを行っている途中、2人であるいは仲間を誘って地元のプレーヤーと演奏を行うことが多かった。その結果、オーケストラでもコンボでもサド・メルの分身のようなアルバムが生まれた。このアルバムもそのような一枚だ。

現地にオーケストラを引き連れて来ていたかどうかは分からないが、このヘルシンキでの録音はフィンランドの地元のオーケストラ”UMO/The New Music Orchestra”に2人が客演しての演奏だ。
オーケストラの他のメンバーの参加はなく、2人以外はすべて地元のメンバーである。

アルバムの曲はジェロームリチャードソンのグループマーチャントを除いてすべてサドジョーンズの曲、そしてアレンジもすべてサドが提供している。どの曲もすでにサド・メルのオーケストラで録音されたものばかりだ。
デビュー当時のビレッジバンガードでのライブに入っていた“Little Pixie”から、最新の“SUITE FOR POPS”からの“THE SUMMARY”まで。
お気に入りの“Groove Merchant”も一曲目に収められている。当然本家の演奏との比較がしたくなる。
サド・メルのオーケストラの良さは、その日の気分によってソロのオーダーや長さも自由に変えて、オーケストラでありながらコンボのように変化をつけた演奏をすること。特に、ライブのステージでは。
今回はいつものレギュラーオーケストラとメンバーも全く違うので、サド・メルのオリジナルの演奏と比較して一味違った演奏が聴けるのではとの期待が高まる。
良く聴くとソロのパートだけでなくアレンジも微妙に変えている部分がある。今回の録音のために変えたのか、最初の演奏から時代を経て変えていったのかは分からないが。

サド・メルのオーケストラの晩年はメンバーが定着せず、複雑化するサドのアレンジのアンサンブルを合わせるにも苦労したと聞く。
今回はサドのアレンジとチームワークのとれたEsko Linnavalliが率いるオーケストラとのガチンコ勝負だ。短期間でどこまでサドのアレンジを消化できるのか?
そして、結果は?
元々美しい響きに拘りを持ったサドのアレンジであるが、同じアレンジを使っても北欧のオーケストラの響きはさらに透明度が増すように感じられる。持って生まれたバンドカラーなのかもしれないが、サドのアレンジとのコラボレーションはバッチリだ。

ひょっとしたら、この北欧のオーケストラの響きに惹かれて、翌年サドジョーンズは自分のバンドをは離れてデンマークへの旅立ちを決意したのかもしれない。

1. Groove Merchant
2. It Only Happens Every Time
3. Tiptoe
4. The Great One
5. Kids Are Pretty People
6. Summary
7. Little Pixie
8. Only for Now

UMO/The New Music Orchestra

Thad Jones (Arranger, Composer, Conductor, Cornet)
Mel Lewis (ds)

Esko Heikkinen , Markku Johansson , Simo Salminen , Kaj Backlund (tp,flh)
Petri Juutilainen , Mircea Stan , Jussi Aalto (tb)
Tom Bildo Trombone (btb)

Juhani Aaltonen (as,ss,fl,cl)
Eero Koivistoinen (ts,ss)
Pekka Poyry (as,ss,fl)
Teemu Salminen (ts,cl.fl)
Pentti Lahti (bs.bcl)
Esko Linnavalli (p)
Otto Berger (eg)
Pekka Sarmanto (b)
Esko Rosnell (per)

Produced by Esko Linnavalli
Recorded at Soundtrack , Helsinki, December 3-4, 1977
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする