A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

マイナーなアルバムでも実力者が歌うとちゃんと評価を得られる出来に・・・

2015-07-21 | MY FAVORITE ALBUM
Ridin’ High / Sue Raney

物事の評価をするのに数字が良く使われる。学生時代は試験の点数がその後の進路を決めてしまう。学業の成績とは試験の成績がすべてとは思わないが。
会社勤めの時も目標管理は色々やらされたが、結局最後は予算であり、実績の数字になる。特に今の時代は会社の業績評価も数字だけの利益至上主義になってしまった。東芝のような会社を生み出してしまったのも、その弊害であろう。
野球では打率であったり防御率、テレビであれば視聴率、政治の世界では内閣支持率ということになる。しかし、数字が良ければ中身が良いかというと、そうとは限らない。数字以外の評価がますます大事になっている。

「歌が上手い」という評価を何で行うか。カラオケだと点数が出てくるが、音程があっている、リズム感がいいなど、いくつかの項目で点数は付けられるであろう。
しかし、ジャズの世界で上手い歌手というと、その評価項目はかなりの項目になると思う。その基準自体も絶対的なものではなく、個人の好き嫌いに近い主観的な要素も含まれてくる。それらが点数化するのは難しいとは思うが・・・・

スーパーサックスと一緒に活動したL.A.Voicesというコーラスグループがあった。コーラスグループに加わる事が出来る歌手は音痴では務まらないので、総じて「上手い歌手」の部類に入るのであろう。
このL.A.Voicesのリーダー的な存在がスー・レイニーであった。スーパーサックスのリーダーであったメッドフローリーはアルトサックスだけでなく、コーラスにもバスで参加している。こちらは、上手い下手を超えて多才ということになる。

さて、このスー・レイニーとういう歌手は、アルバムこそ60年代から出しているが、必ずしも一流ジャズ歌手の仲間入りをしていた訳ではない。ジャズもPopsもこなし、活動の中心は、テレビやスタジオであった。いわゆる何でもこなすファーストコールのスタジオミュージシャン達と同様、スタジオでは何でもこなせるボーカリストだったということだろう。
さらに、自ら後進の指導も積極的に行う教育者でもあったようだ。

彼女のキャリアを見ると、母親やおばさんも歌手、4歳から歌を始め、5歳で人前で歌ったという。家系的にも生まれながらの歌手ということだろう。
L.A,ボイセズで活動を始めたのが83年、続けて3枚毎年のようにアルバムを出したが、丁度この頃ソロ歌手としてのアルバムを作ったのがこのアルバムである。

レーベルは、地元のマイナーレーベルのディスカバリー。バックを務めたのは日頃スタジオで顔を合わせることが多かったメンバー達であろう、アレンジャーとして有名なボブフローレンスがピアノ、中堅のベースボブマグヌソン、ハーブアルパートとティファナブラスの出身で、その後西海岸で活動しボブプローレンスのビッグバンドにも参加していたニックセロリのトリオをバックにした演奏だ。曲によってフリュゲルホーンが加わっているが、これは隠し味といった感じで。

ピアノトリオをバックにしたアルバムというのは歌手だけでなく、バックのメンバーも大事だ。それなりの技を持ち合わせていないと平凡な演奏になりがちだが、このアルバムでは普通のトリオ演奏とは一味も、二味も違う。

ボブフローレンスが加わっていることもあり、どの曲も上手くアレンジが施されている。フローレンス自身もピアノだけでなく、エレキピアノやシンセサイザーも用いて変化をつけている。

曲もフローレンスのオリジナルでスタートするが、ボサノバ有、スタンダード有。バラード有と変化があるが、流石百戦錬磨といった感じで、これらを難なくこなしていく。リズムもバラエティーに富んでいる。

彼女の歌はバックと同様多彩であるが、ある種教科書のような正確性もあり、それぞれの曲のイメージに合わせた表現力もある。自分の持ち歌を毎日こなしているだけの歌手と、日々新たな歌にチャレンジしている歌手との違いのような気がする。

このアルバムは1985年のグラミー賞のボーカル部門に、カーメンマクレー、ジョーウィリアムス、メルトーメ、ロレツアレキサンドリアといった有名ベテラン達に混じってノミネートされた。個性あるベテラン達の「上手さ」とは違った、何でもこなせる「上手さ」が器用以上にちゃんと評価された結果であろう。

1.How's That for Openers                    Bob Florence 2:30
2.This Happy Madness                  Antonio Carlos Jobin 4:00
3.Stardust                Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 4:00
4.Baseball                           Michell Franks 4:18
5.I Let a Song Go Out of My Heart  D. Ellington / I. Mills / H. Nemo / J. Redmond 3:30
6.Pure Imagination              Leslie Bricusse / Anthony Newley 3:40
7. Tea for Two                 Irving Caesar / Vincent Youmans 5:15
8. Ridin' High                          Cole Porter 2:07
9. Body and Soul  Frank Eyton / Johnny Green / Edward Heyman / Robert Sour 4:36
10. No More Blues                   Antonio Carlos Jobin 3:10

Sue Raney (vol)
Bob Florence (keyboards)
Bob Magnusson (b)
Nick Ceroli (ds)
Carmen Franzone (Flh)

An Albert Mark Production
Recorded at Monterey Studio,Glendale, Cal.on May 23,24,June 4, 1984
Engineer : Arne Frager


Ridin' High
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