A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ただでさえ特異な演奏は、ストリングスをバックに、そしてアレンジでも異彩ぶりを・・・

2015-07-22 | PEPPER ADAMS
Left & Right / Roland Kirk

1968年7月13日、サドメルが初めて日本に来日したが、来日直前の6月18日にサドメルのオーケストラは歌手のルースブラウンとの共演アルバムを録音した。ここではトランペットのマービンスタムがダニームーアに替わり、テナーのジョーファレルがセルドンパウエルに替わる。このメンバーがそのまま来日メンバーとなる。

その日、ペッパーアダムスはローランドカークのレコーディングセッションにも参加する。記録によると18日だが、アダムスのメモでは19日、夜を徹しての録音だったのかもしれない。
このカークのセッションは前日17日から行われていた。その日はカークのプレーをメインにした短めの曲でウォーミングアップ。アルバムでは4曲目のIXLoveからクインシーのクインテッセンスまでの3曲となる。基本はストリングスを加えたバラード集だが、Hot Chaだけが少し雰囲気が違うジャンプブルースだ。このストリングスのアレンジがギルフラーだが、カークが次から次へと楽器を繰り出し、カーク節のオンパレードとなる。ソリストとしてのローランドカークの本領発揮だ。

翌日はバラード集の残り2曲を録り終えると、今度はがらりと道具仕立ても変る。
今度はカークのプレーヤーとしてではなく作編曲家としての側面をクローズアップするが、これは19分を超える組曲風の大作だ。いくつかのパートに分かれているが、こちらはミンガスのグループを彷彿とされるソロとアンサンブルを交錯させたグループサウンドが特徴的。アリスコルトレーンのハープも加えてアンサンブルとカークだけでなく参加プレーヤーのソロが交錯する。アダムスももちろん登場。

ペッパーアダムスとローランドカークの接点は、それまでの活動歴を見てもあまり密だったようには思えない。しかし、ミンガスグループでこの手の演奏には慣れていたアダムスは、アンサンブルでもソロでもカークの意に沿った演奏をしているように感じる。アダムスとしても、このような集団インプロビゼーションを求めるセッションも得意であったようだ。

このローランドカークは、2つの楽器を同時に吹くというその独特な演奏スタイルから、ジャズを聴き始めた時、すぐにその名前は覚えた。しかし、ある種のゲテモノ趣味に思えた演奏を積極的に聴くことは無かった。持っているアルバムもドミノ位だった
しかしカークのキャリア辿ると、色々な楽器を演奏するだけでなく、作編曲にも長け、独自の音楽観を持っている天才肌のミュージシャンの一人だということが分かる。彼も盲目のミュージシャンの一人だが、ハンディキャップを背負うと反対に健常者には持ちえない才能が生まれてくるのかもしれない。

この録音の直後にニューポートの舞台にも立ち、そのライブも残されている。それが当時のカークのグループの普段の演奏であろう。その演奏と較べるとこのアルバムでは、バラード関してはストレートな演奏、そしてアンサンブルではアレンジを含めたグループサウンドと表現方法は多彩だ。

このアルバムのタイトルはLeft & Right、天才カークの頭の中は右脳も左脳も凡人のそれを超えた物であったようだ。

1. Black Mystery Has Been Revealed              - 1:17
2. Expansions
  : Kirkquest
   Kingus
   Mingus
   Celestialness
   A Dream of Beauty Reincarnated
   Frisco Vibrations
   Classical Jazzical
   El Kirk"                  Roland Kirk - 19:37
3. Lady's Blues                 Roland Kirk - 3:46
4. IX Love                   Charles Mingus - 3:40
5. Hot Cha                    Willie Woods - 3:23
6. Quintessence"                 Quincy Jones - 4:11
7. I Waited for You"          Gil Fuller, Dizzy Gillespie) - 2:54
8. A Flower is a Lovesome Thing        Billy Strayhorn) - 3:55

Roland Kirk (ts, manzello, stritch, clarinet, flute, organ, narrator)
Jim Buffington, Julius Watkins (French horn)
Frank Wess (woodwinds)
Ron Burton (p)
Vernon Martin (b)
Roy Haynes (ds)
Warren Smith (percussion, vocals) unidentified strings, Gil Fuller (arranger)

Recorded in NYC, June 17, 1968

Roland Kirk (ts, manzello, stritch, clarinet, flute, thumb piano, celeste)
Richard Williams (tp)
Dick Griffith, Benny Powell (tb)
Daniel Jones (bassoon)
Pepper Adams (bs)
Alice Coltrane (harp)
Ron Burton (p)
Vernon Martin (b)
Jimmy Hopps (ds)
Gerald Brown, Warren Smith (percussion)
Recorded in NYC, June 18, 1968

Produced by Joel Dorn
Engineer : Buruce Tergesen


レフト・アンド・ライト
クリエーター情報なし
ワーナーミュージック・ジャパン
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