分け入っても分け入っても本の森

本読む日々のよしなしごとをそこはかとなく♪

●ちいさなヨンダくん20

2006年04月12日 22時03分57秒 | ちいさなヨンダくん
ヨンダくんは、がっこうのことをおかあさんにそうだんできずにいます。
なにしろ、がっこうへかよっているパンダのこどもというのは――みわたすかぎりでは――いないのです。
ヨンダくんは、かんがえました。
「ぼくひとりじゃなくて――」
パンダのこどもたちみんなで、がっこうへいきたいというのです。
そうです。それですよ。そのためには。
「ぼく、みんなと――パンダのこどもたちと、もっとなかよくならなきゃ」
つぎのひから、ヨンダくんはいつにもまして、せっきょくてきにパンダのこどもたちとあそぶようになりました。

●ちいさなヨンダくん19

2006年04月02日 21時27分50秒 | ちいさなヨンダくん
「がっこうへ、ね。ぼく、いってみたいです」
「ヨンダクラブがっこうへきてくださるなら、しんぱいすることはなにもありません。ぼくが、せきにんをもってあんないしますから。きみはただ、きてくれさえすればよいのです」
田中さんが、ねっしんにそういうと、ヨンダくんはにっこりわらいました。
「すると、ね。ぼく、おかあさんにそうだんしなくちゃね」
「え、――」
「おかあさんにそうだんしなくちゃ。ぼく、おかあさんがいるんだよ」
「なんですって」
「あのね。ぼく、おかあさんがいるんだよ」
もういちど、ゆっくりそういったヨンダくんの、とくいそうなかおったら。

ヨンダくんのこたえは、田中さんをこんらんさせました。
ヨンダくんに、おかあさんがいるって。そんなはなしは、きいたこともないぞ。
『ヨンダくんたんさくマニュアル』に、そんなれいはのっていたかしら。
いえいえ、ヨンダくんについて、わかっていることは、すべてべんきょうしたのです。せんぱいたいいんのあとについて、たんさくのじっちけいけんもつみましたが、そんなはなしは、きいたこともありません。
しかし、そのことをヨンダくんにむかって、くちにするきにはなれませんでした。
なぜか、それは「してはならないこと」のようにおもわれたのです。
田中さんは、こまってしまいました。

よる。たんさくたいのきちにもどって、『ヨンダくんたんさくマニュアル』をよみなおしながら、田中さんは、せんぱいのたいいんへ、そうだんのでんわをかけます。
「でも、ぼくのみつけたヨンダくんには――」
ぼくのみつけた、にちからをこめて、田中さんはいいました。
「ぼくのみつけたヨンダくんには、おかあさんがいるというのですよ」
おや、へんですね。はなしながら、田中さんは、なんだかとくいそうなのです。
「ヨンダくんについては、まだわかっていないことも、たくさんあるからなあ」
でんわのむこうでは、せんぱいたいいんが、はっきりしないことをいいます。
田中さんは、ふしぎにまんぞくでした。
田中さんのみつけたヨンダくんには、おかあさんがいる。これは、しんじじつではないのでしょうか。
ぼく、おかあさんがいるんだよ――そういって、にっこりわらったヨンダくんの、とびきりかわいらしいえがおを、田中さんはおもいました。