2007年のアメリカ映画「NEXT-ネクスト-」は、ニコラス・ケイジ主演のSFサスペンス。2分先の未来が見える男が、核爆弾テロからアメリカを救います。
ラスベガスでしがないマジシャンとして舞台に立つクリス・ジョンソン。
じつは2分先の未来が見通せる予知能力の持ち主なのだが、あえて目立たないように暮らしている。
ある日、FBIの女性捜査官のカリー・フェリスが彼に接触。ロサンゼルスで計画されているテロを未然に防ぐために、クリスの協力を求めたのだが…。
幼い頃から能力を実験台にされ傷ついていたクリスは、協力を拒み逃走。
いっぽう、クリスはかねてから片想い中だったリズに喫茶店で声をかけることに成功。ふたりは両想いになりますが、クリスの確保を強引に進めるカリーたちによって離れざるをえなくなります。
特殊能力を持った人間が恋人を救うために立ち上がるというオーソドックスな展開。さらに国家の危機を救うはずのFBI側が手段を選ばずにクリスに迫ってきたりするあたり、正直、テロリストと比較してどちらが正義なのかと疑うような描写。テロリストを白人ばかりの若者にして、FBIを多人種にしたのも、911テロ事件からはじまる人種差別への配慮だったのでしょうか。
SFなので予知能力を生かしてどう難局を切り抜けるかが見ものだったはずなのですが、正直、この設定あってもなくても成立するような話なんですよね。落下物とか人の攻撃を読んで避けるという業は、傍から見れば単に反射神経がいい人だけにしか見えないわけです。
自分に関係のあるわずか2分先のことしか見えなかったはずが、いつのまにか、先々のことまで見えるようになってしまう。それは矛盾のように思えますが、要するに、クリス自身が騒動の火中にいれば犯人側の弾の動きですら読めるようになってしまうということ。おそらくその恐怖に巻き込まれるのを恐れて協力を拒んでいたのだと後半になればわかってはくるのですが、前半の描き方からすれば主人公も我が身かわいさで逃げ回っている臆病な人間にしか見えません。予知夢というよりも、むしろ妄想癖に近いトリック。過去に捜査に協力させられて追った心傷があったとか、カリー捜査官との因縁があったとか他人選りすぐれているからこそなお深い闇を抱えている、といったエピソードがあればよかったと個人的に感じました。
ただ主人公がとりえる行動の可能性を多重的に見せる描写など、映像の演出としてはよかったです。
ラストを見れば、定められた未来に縛られるのではなく、それを積極的に変えていこうとする勇気をうたったものだと判るのですが、同じ映像をループしてなんども見せられるという手法に飽きてしまいます。主演がなまじいいだけに、評価が分かれるところでしょう。
監督はリー・タマホリ。
共演はジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビールほか。
原作は「マイノリティ・リポート」「ブレードランナー」の原作者として知られるフィリップ・K・ディックの短編小説「ゴールデン・マン」。
(2011年9月12日)
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ラスベガスでしがないマジシャンとして舞台に立つクリス・ジョンソン。
じつは2分先の未来が見通せる予知能力の持ち主なのだが、あえて目立たないように暮らしている。
ある日、FBIの女性捜査官のカリー・フェリスが彼に接触。ロサンゼルスで計画されているテロを未然に防ぐために、クリスの協力を求めたのだが…。
幼い頃から能力を実験台にされ傷ついていたクリスは、協力を拒み逃走。
いっぽう、クリスはかねてから片想い中だったリズに喫茶店で声をかけることに成功。ふたりは両想いになりますが、クリスの確保を強引に進めるカリーたちによって離れざるをえなくなります。
特殊能力を持った人間が恋人を救うために立ち上がるというオーソドックスな展開。さらに国家の危機を救うはずのFBI側が手段を選ばずにクリスに迫ってきたりするあたり、正直、テロリストと比較してどちらが正義なのかと疑うような描写。テロリストを白人ばかりの若者にして、FBIを多人種にしたのも、911テロ事件からはじまる人種差別への配慮だったのでしょうか。
SFなので予知能力を生かしてどう難局を切り抜けるかが見ものだったはずなのですが、正直、この設定あってもなくても成立するような話なんですよね。落下物とか人の攻撃を読んで避けるという業は、傍から見れば単に反射神経がいい人だけにしか見えないわけです。
自分に関係のあるわずか2分先のことしか見えなかったはずが、いつのまにか、先々のことまで見えるようになってしまう。それは矛盾のように思えますが、要するに、クリス自身が騒動の火中にいれば犯人側の弾の動きですら読めるようになってしまうということ。おそらくその恐怖に巻き込まれるのを恐れて協力を拒んでいたのだと後半になればわかってはくるのですが、前半の描き方からすれば主人公も我が身かわいさで逃げ回っている臆病な人間にしか見えません。予知夢というよりも、むしろ妄想癖に近いトリック。過去に捜査に協力させられて追った心傷があったとか、カリー捜査官との因縁があったとか他人選りすぐれているからこそなお深い闇を抱えている、といったエピソードがあればよかったと個人的に感じました。
ただ主人公がとりえる行動の可能性を多重的に見せる描写など、映像の演出としてはよかったです。
ラストを見れば、定められた未来に縛られるのではなく、それを積極的に変えていこうとする勇気をうたったものだと判るのですが、同じ映像をループしてなんども見せられるという手法に飽きてしまいます。主演がなまじいいだけに、評価が分かれるところでしょう。
監督はリー・タマホリ。
共演はジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビールほか。
原作は「マイノリティ・リポート」「ブレードランナー」の原作者として知られるフィリップ・K・ディックの短編小説「ゴールデン・マン」。
(2011年9月12日)
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