陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

健康本、読んだからといって健康になるわけがない(前)

2020-01-28 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

世の中には、人間の欲望を掻き立てるキャッチコピーが氾濫しております。
そりゃもう買わせる方だって必死ですから。本のタイトルだってその典型ですよね。

最近、人生百年時代、生涯現役時代が謳われています。
おのずと、健康や長生きに関する本も多くなります。中年期にもなりますと、体力も傾きがちになりますから、かつては見向きもしなかった健康本に関心が深まります。私がこれまでに読んだいくつかの健康指南本を紹介します。参考までに。

「疲れない身体」をつくる本
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『「疲れない身体」をつくる本』(斉藤孝著・PHP研究所・2015年)
読書論や論語を子ども向けに編纂した本など博識で定評のある、明治大学教授の著者。ご自身の体力維持の方法を惜しみなく紹介した本です。健康本といいますと、なんとなく、医者が書いた本やアスリートが歯磨き剤のCMのような爽やかな笑顔付きの肉体改造賛美を謳ったかのようなスポーツ大好き本が多いのですが、文系の、インドア派もいいところの職業人による健康指南本というのは、とても自分の肌合いに近くてためになります。とくにこの著作で触れられている呼吸法(お腹の中の空気をすべて出し切るまで息を吐く)は、たまにやってみるのですが、たしかに一時的に疲労回復効果があって驚きでした。この本は好評だったのか、2017年に改訂版が出版されていますね。

ねこ背は治る! ──知るだけで体が改善する「4つの意識」
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『ねこ背は治る! ──知るだけで体が改善する「4つの意識」』(小池義孝著・自由国民社・2015年)
整体師さんが書いた姿勢矯正の本。パソコン仕事をしていると、ついつい悪くなってしまう姿勢。からだの歪みは、不健康をもたらします。この本は図解付きで読みやすいのはもちろんですが、白骨標本のように、骨組みを部分的にわかりやすく描かれているのが特徴。とくに、ふだん、我がわれが勘違いしやすい骨組や筋肉の構造についても誤解を正している点がすばらしいです。二本の脚の付け根は腰ではなく、胴体の中心、おへそのあたりを意識する。立つときは、足首の関節が足の裏のど真ん中に垂直になるのを意識する。ほんとうに実践してみると、からだがかなり楽です。スマホ中毒で肩こりが酷いとお悩みの皆さん、これはぜひともご一読を。

病気にならない暮らし事典-自然派医師が実践する76の工夫-
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『病気にならない暮らし事典-自然派医師が実践する76の工夫-』(本間真二郎著・セブン&アイ出版・2016年)
オーガニック食材を使ってヘルシーライフを称揚する本や、うさんくさい食生活アドバイザーだかなんだかの講師はよくいますよね。この本は現役の医師によって書かれた本。都会の大病院を離れ、アレルギー体質のお子さんのために田舎に引越し。有機野菜を育ててながら、地域医療にも貢献しているパパお医者さんの体験談から。ナントカの食材はよくないとか、糖質や脂質は敵だとか、いやむしろ良薬だ、とか、世間にはとくに食事に関する医学的見地が正しいのか、単に頭のいい人らしい頑固な自説なのかわからないような健康ガイドが溢れています。この本の凡てが正しいとは思いませんが、なんとなく体調を崩しがちだなと思った方は手に取ってみてもいいでしょう。

自律神経を整える 「あきらめる」健康法 (角川oneテーマ21)
自律神経を整える 「あきらめる」健康法 (角川oneテーマ21)小林 弘幸 角川書店 2013-08-29売り上げランキング : 9255Amazonで詳しく見る by G-Tools

『自律神経を整える 「あきらめる」健康法』(小林弘幸著・角川書店・2013年)
これも新聞広告で大きく売り出されていてベストセラーになった本。
高校時代に自律神経失調症と診断され、入浴時に熱湯と冷水を交互に浴びてカラダを鍛えなさい、と意味不明なアドバイスを実践しても体調が改善しない私にとっては、人体のミステリーゾーンが神経系統。からだを活発化する交感神経、休ませる副交感神経。この二つのバランスを保てないと疲れやすくなる。ここまでの理屈はわかるのですが、その実践方法が読んだけれどできるかなと思うものも多いですよね。この本の慧眼は、「明らかにする」とは原因を突き止めていくだけでなく、それにとらわれない様に「あきらめる」の意味もあると指摘した点です。病は気から。確かに自分に病巣があるのではと信じ込んでしまった時点から、もう神経が病んでしまいそうです。

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『脳が冴える15の習慣』(築山節著・NHK出版・2006年)
脳神経外科の専門医である医学博士の著作。NHK出版の生活人新書のレーベルなので、この方は、テレビにもよく出ているような御用学者的な人なのでしょう。マスコミによく出る学者さんがワイドショーやら雑誌やらで説く健康本は眉唾だったりもしますけれど。ちなみにこの本は、もともと資格試験勉強中に効率的な勉強法が知りたくて購入した本。そこから脳活用への興味が広がり、いろいろな脳活本に手を出しましたが、やはりこれがわかりやすいですね。

最近の健康ブームでは「睡眠負債」という言葉が流行っていますね。
経済雑誌でも特集が組まれていますし、そういった類の本も出ています。でも、仕事が押し迫っていたら、いくら理想睡眠時間が8時間といったって確保できるわけがない! そうかといって、たしかに、3時間、4時間、下手したら徹夜明けで仕事に行っていたら、1箇月で身体は壊します。食事も運動もそうなのですが、ライターの方が書く理想の健康ライフというのは、実践するのには、お金も時間もかかってしまうんですよね。例えば、野菜を買いたくても収入が低い、家族が多い人には、天候次第で高値になってしまえば届かない。

運動法も凝り過ぎたら続かない。
私はウォーキングが趣味ですが、ランニングにしても、ウォーキングにしても、素人が参入しやすいスポーツでも、やり方まちがえると寿命が縮まると警告するような健康本もありまして、どきりとします。


医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法
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軟弱体質だけれど、医者通いも好きではない私は、現役の医学部講師が書いた毒のある話題本『医者に殺されない47の心得』という本を読んで、納得したような、しないような気分にもなります。お医者さんの健康本って、病院にとっちゃあ、商売敵。士業の人間が手の内を丸っきり明かさないように、読んだらすべて病が治るというのでもないような。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。


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