マリみて読んでみて その１

以下の文面は8月頃に作成したので内容にタイムラグがあります。
『マリみて』最新刊の感想については後日またアップ予定（というか第一巻から書こうよ？）




今野緒雪　『マリア様がみてる・仮面のアクトレス』(2006年７月)



副題の「仮面」から類推されるとおり、一言で評するならば

――瞳子、恐ろしい子！

な、内容でした（大嘘）
…いや、瞳子の企みが判然としない点では、この表現も当たっているのかも。



アニメで粗筋は知って、原作小説「レイニーブルー」までは買い揃えている
（が、読破していない）んですが、その後は借りて読んでました。
今回のは、事前に某百合系感想サイト様やアマゾンのレヴューで盛大なネタバレを知ってしまいいつもどおり借りて済まそうかなと考えていたんですが。
お盆休みに本屋でパラパラ捲っていたら無性にじっくり読みたくなってレジへ直行。
文庫本くらい買えよってお叱り受けそうですが、中学時代以来ラノベ買ったことないし
手元に置いて何度も読み返したくなる本でない限り、金銭と空間の節約から
極力購入しないようにしてます。


こんな守銭奴な私めでも、この新刊買ってよかったと思わせるものでした。
だって女の子しか出て来なかったんだもん！！
（祐麒や柏木はともかく、妾を侍らしている祥子パパ等、本筋に絡まないような男性陣に
無駄に頁を割かれなくて良かったです）

黄薔薇三姉妹と生徒会選挙の二本立て+α ですが、サブタイトルの「仮面」に合わせて練られた構成でした。
ページ数が少なくて、内容が薄っぺらいと辛辣に評されてもいたんですが、
謎を残すために敢えて極度に描写を削り落としたといった印象をもちました。

なにせ瞳子の思考が読めないように、彼女に関する表現が極端に排除されています。
だから読者は感情移入できない。
キャラが理解しづらいので、初期の瞳子に抱いた嫌悪感を拭えず、瞳子嫌いと
物語のネタの使い回し感から飽きている読者も多いのではないでしょうか。


伏線を張り続けて読者を引っ張るという手法、商業的戦略だと揶揄されている方も多いみたいですが、私は不快には思いませんね。
むしろ読者の期待に応えて、たゆまず物語を書き綴っていく今野先生にエールを送りたいです。
そう思うのはまだ自分のファン歴が浅いからなのかもしれないですが。


祐巳の妹問題に一向に決着が付かなくてやきもきさせられるけれど、この話そんな簡単に
片付けて欲しくないなぁ。
もっと、祐巳と瞳子の間には色んな事件が起こって、多くの感情を消費して欲しいです。
これまでの薔薇姉妹たちの殆どは、予めスール関係になってからの出来事が多いんですが、そんな絆を結ぶ以前にひと悶着あるのも新鮮で良いですね。
だって障害が多いほど、実ったときの恋は大きいでしょ？
単にいちゃついている新婚夫婦よりも、お互い想い合っているのに擦れ違っている二人を
眺めている方がドキドキするでしょ？（サドですか？）


選挙戦を前に「水に垂らした一滴の油のように」クラス中から浮き上がっている瞳子。
瞳子が素顔を晒して祐巳の懐を求めるのか、それとも姉としての自覚を持ち始めた祐巳が一芝居うって彼女の蕾のようにかたく閉じた心を花開かせられるのか？
極端な話、たとえ祐巳の妹が一向に決まらなかったとしても、この二人の関係が良好に向かえば私は満足です。
誰を選んだか、よりも　どのように選んだか、が重要ですもの。
でも次代はツインテール紅薔薇姉妹が誕生！だったら面白いですね。
お揃いの紅い繻子のリボンを瞳子が照れながら祐巳に結んで貰ったりして（笑）



さぁーて、今回の最大の百合所は174-5頁！


　「お姉さま」
　「なあに？」
　「お願いが」
　「いいわよ」
　「抱しめてください」
　すると、躊躇なくフワリと祐巳は包まれた。
　「こう？」
　「そうです」
　包み込んで守るのが姉。そんな言葉が頭を過る。
　「すみません。もう少しだけ」
　満ち足りているはずなのに。まだ足りない。むさぼるようにお姉さまの愛情を求めた。



くぅーっ！最後の一文がいいですね。
淡々と書かれているだけに余計に、行間に妄想を埋め込みたくなる。
ひびき先生には、この部分の挿絵を描いて欲しかった！ただのリップサービスだから無理でしょうが（こういうウケのいいサービスショットがアニメになると過剰演出されるんですよね…。）