本日は世界禁煙デーなので、それにちなんだ話をしよう。
Taspoが導入されたのは、たしか去年の今ごろだったはずだが、近くの喫煙者に聞くと、自販機利用を避ける人が多かった。おかげでコンビニの売上げが上昇したらしい。
以前はたばこだけを専門に売る個人店が多く、猫を膝に抱いたような老人が店番をしていたりしたが、近年はほとんど見かけなくなった。
父も喫煙者だったが母と結婚する際に、すっぱりやめたらしい。私は嫌煙家だが、喫煙が精神安定になっているのはわかるので、吸う権利は否定しないが。分煙さえ、まもってくれればね。
ところで、以前に電気タバコを話題にしたことがある。
禁煙スペースでも吸えるたばこ、各国で開発中(Wired Vision 〇七年五月十八日)
各国での開発に余念がないとのこと。世界じゅうどこにおいても嫌煙キャンペーンはすさまじいらしく、なかにはドラッグ並みに禁止されている国もあり、禁煙にふみきれない愛煙家の一助ともなりそう。そのむかし、禁煙パイポのCMのキャッチフレーズが流行語にもなった。
イタリア産の『NicStic』は、たばことおなじサイズのプラスティックチューブは、内蔵されている充電式の加熱コイルがたばこを燃やすのではなく気化させるもの。煙が出ないので、たばこの煙に含まれるタールやヒ素、カドミウム、ホルムアルデヒドを放出しない。火がいらないから、禁煙スペースでも堂々と吸い放題。
ところが、どんな便利品にも欠点はあるもので、この商品、においが半端じゃなくキツい。喫煙者すら嫌がるほどの強烈なニコチン臭が残ってしまうらしく。それに、あの唇の先で紙を湿らせていく感触や、淡い焔を明滅させながら灰がじわじわと紙を削り落としていく醍醐味などが失われることを惜しむ、愛煙家も多いとか。
さて、この電気たばこに倣って、欲しいと思うもの。それは、電気キャンディ。
三月に歯医者に罹ったが、あまりの歯のひどさに苦笑されてしまった。ヘヴィスモーカーなみに飴を食べるのが好きで、当時は下手すると、一日でひと袋かるく舐めきっていた。ふだんお菓子はあまり食べないが、この飴だけはかならず欠かさず食している。もともと喉が弱かったのと、仕事しながらガム・キャンディの飲食が許されていたの以前の職場の習慣が抜けなかったらしい。フリスクの多用なども原因だ。
この電気キャンディというのは、舐めるにしたがって甘みがにじみ出るけれど、それはカロリーほとんどなし。電気で味覚に刺激をあたえ、砂糖のような甘さがあると錯覚させてしまう。とうぜん、虫歯にはならず、温かいものを口にすると、食欲もおさえられる。しかも、融ける速度が遅いので、なんどもくりかえし仕えて経済的。
この原理を応用してさらに商品化がのぞまれるのが、電気アルコール。ある特殊なイオンが融けたワインのような液体を飲むと、あらふしぎほろ酔い加減に。もちろん肝臓にも負担はかけない。
無頼の甘党の糖尿患者や、アルコール中毒者にとっては、うってつけの商品。
このようなことを夢想したが、よくよく考えてみれば、味覚を偽装するというのはおこなわれてきたことだ。
味をだまされているといえば、合成着色料とか香料とか化学調味料。きゅうりに蜂蜜をかけるとメロン味がするとか、食べ合わせのごまかしもある。ちなみに私は豆腐に蜂蜜と醤油をたらしてプリン代わりに食べるのに、いっときかなりハマった。
感覚を変化させるというのは二方向性あるように思われる。
ひとつは感官を鈍らせる。麻酔をうつとか、虫歯の神経を抜いてしまうとか。催眠術で舌をだまくらかしてしまうこともあるようだ。
そしてもうひとつは電子タバコのように、感覚内容をつくりかえてしまう、似せてしまうか。
アートの世界ではトロンプ・ルイユといって眼をあざむくしかけがある(「トリックアート」)
この場合、さしずめトロンプ・ラング(Tromp-la-langue: 冠詞のつけ方を誤っているかもしれないが)とでも申すべきかな。
しかし、海外産牛肉を国産といつわったり、食品偽装があばかれた日本はすでにトリックフード大国だったりして。
さて、きょうは世界禁煙デー。
この日がくるとかならず、今年こそはあれをはじめようとか、やめようとか計画するのだが、ふつうに過ぎてしまう一日だ。
とりあえずケーキでも買ってくるか(懲りてない)