陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

小説『涼宮ハルヒの憂鬱』

2009-07-17 | 読書論・出版・本と雑誌の感想
話題になっていたので、図書館で借りて読んでみたシリーズ(シリーズだったのか?)
今回は谷川流著『涼宮ハルヒの憂鬱』

アニメにもなってるんですよね。
いつぞや歌番組の「HEY! HEY! HEY!」で主演声優で主題歌うたった女性が出演していたような気がします。
それで、どんなにおもしろいのかと期待していたんですが。
う~ん、どうなんでしょう?


主人公はキョンという男子高校生。彼の一人称語りですすむ。
高校入学して同じクラスになった、ぶっとんだクラスメイト涼宮ハルヒ。タカビー(死語)な彼女に、ひたすら振り回されるお気の毒なお話。
「ただの人間には興味がない」と宣言してハルヒがたちあげた新しいクラブSOS団。そこには集められたのは、ひじょうにユニークな顔ぶれの三人、長門有希、朝比奈みくる、古泉、だった。

キョン以外のメンバーは、とんでもない正体を隠しています。宇宙人の手による人造人間だったり、未来人だったり、エスパーだったり。
じつは、この素性については事前に知っていたので驚かなかったのですが、物語読んでも、彼らの正体以外のミステリー要素がまったくありません。なにせ、彼ら、みずからの正体をあっさり主人公にバラしちゃうから。

キャラクターの性格に強烈な味付けをしていますが、話の運び方としてはさほど面白みはないです。ハルヒに精神のブレが生じて、彼女ともども異次元に放り込まれちゃうキョンのとった手段も、ありきたり。
けっきょく平凡で取り柄のない男の子を主人公として、複数名のきわだった魅力のある女の子をはべらせている。ヒロイン格の女の子とはいつも反目しているばかりだが、最後には彼女のいいところを見つけていい雰囲気になってしまう、というおさだまりなパターン。

この主人公の語り口はたしかに絶妙で味わいがあるんですが、とうしょ、長ったらしくてうんざりでした。彼の目からすると、ハルヒを含む女性陣はみんな宇宙人ぽくみえるらしいですが、人造人間とか、未来人とかいう設定はさておき、その人となりは、べつだん普通に思えます。
といいますか、もうすでに使い古されているキャラのタイプ。

この小説発売時の○三年は、こういうクセのあるキャラが珍しかったのかもしれませんが、コスプレさせるのが好きというキャラ、とか寡黙な眼鏡っ娘とか、前例があったような気がするけどなぁ。
キャラがどこかで見た感じでも、話の筋がおもしろかったらいいのだけど。

フロイトの夢判断だの、宇宙の物理法則がどうだの、という言葉が挿入されていきなり、ややこしくなってる部分がありますが、まるで教科書から抜書きして写してきたよう。口先でぺらぺら説明してるだけで、お話には絡んでない。

楽しさはあったけれど、読んでもなにも残らない。
物語というよりは、自分の理想形から外れた女の子を変人扱いして観察してる男性のエッセイのような気がします。宇宙人とか、未来人とか銘打ってるけど、すごく底の浅い設定にしか思えない。
たぶん、シリーズ進むにつれていろいろわかってくるんでしょうけど。
続編でどういうふうになっていくのか、読む気はないんですが、ハルヒたちの視点では描かれていなんですかね?

と酷評をかましましたが、ライトノベルとしてはたしかにうまい部分があるので、若い人にはおすすめでしょう。
イラストはかわいいですしね。ライトノベル作家志望の方がお手本にするという理由はわかるような気がしますけども。どちらかというと男子向けなのかな。

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