ハズレ映画を観たくないから、あらかじめネタバレの動画であらすじを押さえておく、といった視聴者が多いらしい。以前、そんなニュースが世をざわつかせました。映画のみならず、本でも言えるのでしょう。
私は本やら、映像作品やら、もしくは食べものでも、はたまた人づきあいでもいいけれど、まずは試してみて失敗しておくのもいいかな、と考えています。もちろん、それは若いうちだからこその挫折が取り戻せる無謀さも手伝って、なのですが。
多くの本を読めば、どれが自分にとって興味がないか、ご縁がないか、なんとなくわかります。非常に残酷めいた読者の視点ですが、おもしろくないと思った本には似たような傾向があります。市井のレビューがいいから信用できるかといいましたら、そうではないんです。今回はそんな、つまらないと思った本に共通していたことを列挙してみます。
なお、これはあくまで個人の主観であり、以下の傾向にある本を楽しまれる方の読書意欲を削ぐつもりはありません。
・改行がやたらめったら多すぎる
小説でよくあるのですが、二、三行ぐらいですぐ改行。下手したら一行で次へ、ということも。段落というものを形成していませんし、頁を開いたときも、スカスカで見栄えが悪いです。古くなって編目のほころびが見えはじめたセーターを着ているような、みすぼらしさを覚えてしまいます。文庫本のラノベだったらわかります。けれど、ご立派な文学賞受賞した作家が、単行本でやらないでいただきたい。新聞小説を本にまとめた場合に多いのですが、余裕のある作家さんはきちんと加筆修正して、文章の密度を高めてくれるんですよね。改行して頁数稼ぎをされると、安っぽい商売をされてるのを感じてげんなりします。
・目次がない、わかりづらい
とくに小説がそうですが、やはり章立てならばあったほうがいい。あとから振り返って読むときに辿り着きやすいですし。目次を見ただけで流れを追えると、理解がはかどります。
・著者近影の写真が悪い、経歴が意味不明
失礼なのですが、写真写りが悪くてイメージを損なっている方。ふざけて余計なことを書かれていたり、あるいは経歴をあきらかに盛っているなとわかる方。ビジネス関係の本に多いですよね。
・挿絵がなんとなくダサい、ユルい
一頁まるまるがイラストだけの本とか。図解があるけど、本文を読んだら理解できるので助けになっていないとか。著者はまじめに書いているのに、絵のだらけ具合のせいで、おふざけ本のように感じて損しているとか。
・まえがき、あとがきで見える著者の顔
地の文面ではわからない作者の人間性というものが、わかる部分がこれ。とくに歴史小説やファンタジーなどで、締めくくりの余韻に浸っているのに、あとがきで作者がごちゃごちゃ近況報告めいたエッセイを載せているのは、雰囲気ぶち壊しということもあります。漫画のコミックスでもよくありますよね。それが面白い場合もあるのですが。
・装丁が似つかわしくない
おとぼけエッセイ本なのに、作者がやたらとはりきってハードカバーに仕立て上げたとか。デザインのセンスがないように見受けられるとか。
・そもそも、その想定読者層に該当していない
文芸本なのに物語が子どもっぽいと思うのは、若者向けのものだから。ビジネス本だけど軽めに書いているのは、仕事に関する本をあまり読みたがらない人向け。本は読書好きばかりをターゲットにはしていません。どういう層、とくに年齢を対象としているかによって、味わいは異なってきますよね。
なんとなく、ごちゃごちゃイチャモンつけましたが。
要するに、本はネット上のサイトにある文章だけとは異なり、物理的な形態にもその印象を左右されてしまうことがあるということです。
改行が多いのは、ネット上の文章ではむしろ好ましく、推奨されているのですけれども。
本でやられてしまうと、薄っぺらく見えるんですよね。文章が短いのに、辞書で拾い上げたかのように難しい言葉だけぽんと象嵌してきて、けれどとくに何も深いことを描写してはいない。像が浮かび上がってこない、感覚を打ち震わせないような。
作者が読者にその言葉を届けて震わせるには、何かの仕掛けが必要なんです。
ただ目の表面で字を追っているだけなのか、それとも、こころの襞に沁み込んでいっているのか。
(2021.09.13)
読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。