[16]ですね。商標権侵害の話です。
【問題文】
〔16〕商標権の侵害に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。
1 商標権者から、商標権の侵害であるとして侵害行為の差止めを請求された者は、その行為が無過失によるものであることを立証することにより、その行為の差止めを免れることができる場合はない。
2 他人の防護標章登録に係る指定商品と同一又は類似でない商品についての当該登録防護標章に類似する商標の使用は、当該商標権の侵害となる場合はない。
3 団体商標に係る商標権を有する団体の構成員は、その地位に基づき、当該商標権を侵害する者に対し、その侵害行為の差止めを請求することができる。
4 商標権者による指定商品についての登録商標に類似する商標の使用は、他人の登録商標に係る指定商品についてのその他人の登録商標に類似する商標の使用に該当する場合でも、その他人の商標権の侵害とはならない。
5 自己の氏名を普通に用いられる方法で表示する商標の使用は、他人の商標権の侵害となる場合はない。
【コメント】
1 差止めの請求については、侵害者側の故意過失は要件となっていないので(これ自体は超基本事項ですね)、商標権者はそもそも相手の故意過失を主張する必要がないわけです。それに対して侵害者側がいくら「私の行為は故意過失によるものではない。」と主張したところで、主張は全然かみ合ってないですね。 「差止めを免れることはできない」というのが問題文なので、正しい。
この枝を落とした人は、この問題を解いていたときに頭の中で何か別なことを考えていたのだろうと思います。例えば、権利行使が権利濫用の場合には差止めは認められませんが、そのようなことを思い浮かべながらこの枝をついうっかり×にしてしまったとしたら、それはケアレスミスなどというレベルの問題ではありません。
2 防護標章登録に関して商標権侵害とみなされるのは同一商品かつ同一標章に限られ、類似する範囲については商標権侵害にはなりません。よって、正しい、と考えた人が多かったようです。
しかし、本問では防護標章登録に係る商品と「非類似の商品」を考える問題ですので、防護標章登録と商標登録とでは指定商品は非類似であることが防護標章登録の要件であるところ、登録防護標章自体を考えるのではなく、本来の商標権のことを考えなければなりません。本来の商標権の侵害となる範囲は、登録商標に係る指定商品と同一類似範囲で、登録商標と同一類似範囲ですから、本問の態様は防護標章登録の基礎になった商標権の本来的な侵害となる場合がありますね。よって誤り。
この枝をささっと読んだだけで○にしてしまった人は、問題文を読む際の集中力に欠けています。問題文を読む瞬間の集中力が不十分だと、いくら知識を増やしても点数に結びつきません。
3 団体の構成員に認められる権利は、商標の使用をする権利ですから、差止請求はできませんね。誤り。青本31条の2の解説でも「なお、本項は、箇々の団体構成員に、登録商標の使用をする権利を認めたのであって、構成員以外の者の使用を排除すること、いわゆる禁止権までも認めたものではない。」と明確に述べられています。
4 商標権者にとって自己の商標権の禁止権範囲には25条の効力、すなわち、「登録商標を使用する権利」は認められていません。単に37条によって他人の使用を排除する効力しか認めていないわけです。従って、自己の商標権の禁止権範囲内で自ら使用したとしても、それが他人の商標権の禁止権範囲に入っている場合には当該他人の商標権の侵害になりますね。
青本25条の解説には、「禁止権の効力は、このように他人のその部分の使用を禁止しまたは排除しうるだけで、積極的にその部分を使用する法律上の保護は何ら与えられていない。それ故に、他人の権利によって制限されない限り商標権者がその部分を事実上使用するのは自由であるが、もしその範囲が商標権同士相互に重なり合ったり、他人の著作権、特許権、意匠権等と抵触した場合には使用できず、もし使用をすれば、権利侵害となるのである。」と明確に記載されています。よって誤り。
5 26条1項1号については、例外が2項で規定されています。不正競争目的の場合には、適用されないので、「侵害となる場合はない」というわけではない。よって誤り。
☆さすがに3、4、5を選んだ人は少なかったですが、本問は合格者と不合格者とで差がついた問題でした。この問題を落とした不合格者は、「なぜ、私は、この問題ができなかったのか。」と自分に問いかけて下さい。ケアレスミスだったということで片づけてしまうと、来年、同じようなケアレスミスをするだけに終わってしまうかもしれません。
【問題文】
〔16〕商標権の侵害に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。
1 商標権者から、商標権の侵害であるとして侵害行為の差止めを請求された者は、その行為が無過失によるものであることを立証することにより、その行為の差止めを免れることができる場合はない。
2 他人の防護標章登録に係る指定商品と同一又は類似でない商品についての当該登録防護標章に類似する商標の使用は、当該商標権の侵害となる場合はない。
3 団体商標に係る商標権を有する団体の構成員は、その地位に基づき、当該商標権を侵害する者に対し、その侵害行為の差止めを請求することができる。
4 商標権者による指定商品についての登録商標に類似する商標の使用は、他人の登録商標に係る指定商品についてのその他人の登録商標に類似する商標の使用に該当する場合でも、その他人の商標権の侵害とはならない。
5 自己の氏名を普通に用いられる方法で表示する商標の使用は、他人の商標権の侵害となる場合はない。
【コメント】
1 差止めの請求については、侵害者側の故意過失は要件となっていないので(これ自体は超基本事項ですね)、商標権者はそもそも相手の故意過失を主張する必要がないわけです。それに対して侵害者側がいくら「私の行為は故意過失によるものではない。」と主張したところで、主張は全然かみ合ってないですね。 「差止めを免れることはできない」というのが問題文なので、正しい。
この枝を落とした人は、この問題を解いていたときに頭の中で何か別なことを考えていたのだろうと思います。例えば、権利行使が権利濫用の場合には差止めは認められませんが、そのようなことを思い浮かべながらこの枝をついうっかり×にしてしまったとしたら、それはケアレスミスなどというレベルの問題ではありません。
2 防護標章登録に関して商標権侵害とみなされるのは同一商品かつ同一標章に限られ、類似する範囲については商標権侵害にはなりません。よって、正しい、と考えた人が多かったようです。
しかし、本問では防護標章登録に係る商品と「非類似の商品」を考える問題ですので、防護標章登録と商標登録とでは指定商品は非類似であることが防護標章登録の要件であるところ、登録防護標章自体を考えるのではなく、本来の商標権のことを考えなければなりません。本来の商標権の侵害となる範囲は、登録商標に係る指定商品と同一類似範囲で、登録商標と同一類似範囲ですから、本問の態様は防護標章登録の基礎になった商標権の本来的な侵害となる場合がありますね。よって誤り。
この枝をささっと読んだだけで○にしてしまった人は、問題文を読む際の集中力に欠けています。問題文を読む瞬間の集中力が不十分だと、いくら知識を増やしても点数に結びつきません。
3 団体の構成員に認められる権利は、商標の使用をする権利ですから、差止請求はできませんね。誤り。青本31条の2の解説でも「なお、本項は、箇々の団体構成員に、登録商標の使用をする権利を認めたのであって、構成員以外の者の使用を排除すること、いわゆる禁止権までも認めたものではない。」と明確に述べられています。
4 商標権者にとって自己の商標権の禁止権範囲には25条の効力、すなわち、「登録商標を使用する権利」は認められていません。単に37条によって他人の使用を排除する効力しか認めていないわけです。従って、自己の商標権の禁止権範囲内で自ら使用したとしても、それが他人の商標権の禁止権範囲に入っている場合には当該他人の商標権の侵害になりますね。
青本25条の解説には、「禁止権の効力は、このように他人のその部分の使用を禁止しまたは排除しうるだけで、積極的にその部分を使用する法律上の保護は何ら与えられていない。それ故に、他人の権利によって制限されない限り商標権者がその部分を事実上使用するのは自由であるが、もしその範囲が商標権同士相互に重なり合ったり、他人の著作権、特許権、意匠権等と抵触した場合には使用できず、もし使用をすれば、権利侵害となるのである。」と明確に記載されています。よって誤り。
5 26条1項1号については、例外が2項で規定されています。不正競争目的の場合には、適用されないので、「侵害となる場合はない」というわけではない。よって誤り。
☆さすがに3、4、5を選んだ人は少なかったですが、本問は合格者と不合格者とで差がついた問題でした。この問題を落とした不合格者は、「なぜ、私は、この問題ができなかったのか。」と自分に問いかけて下さい。ケアレスミスだったということで片づけてしまうと、来年、同じようなケアレスミスをするだけに終わってしまうかもしれません。
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