[10]は商標法でした。
〔10〕商標登録出願についての補正及び補正の却下等に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。
(イ) 拒絶査定に対する審判において、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものとして却下された場合、その却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(ロ) 願書に記載した商標登録を受けようとする商標が文字のみからなる商標の場合、その商標に色彩のみを施す補正は、その文字が同一である限り、その商標の外観、称呼及び観念に影響を及ぼさないので、要旨を変更するものとして却下されることはない。
(ハ) 補正の却下の決定に対する審判を請求した者は、その決定の謄本の送達があった日から30日以内であっても、当該補正後の商標について商標法第17条の2第1項において準用する意匠法第17条の3第1項に規定する新たな商標登録出願をすることができない。
(ニ) 2以上の商品及び役務の区分を指定した商標登録出願については、商標登録をすべき旨の査定の後、商標権の設定の際の登録料を一括して納付するのと同時の場合に限り、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。
(ホ) 商標登録の無効の審判において、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものと認められた場合、その補正が要旨を変更するものであったという理由によって、その商標登録が無効とされることはない。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ
【解説】
正解は1つの1でしたが、2を選んだ人もかなりいました。
(イ)誤り。「拒絶査定に対する審判」において補正却下された場合には、補正却下決定の取消しを求めて訴えを提起することができます。この「補正却下決定に対する訴え」というのは、商標法63条に規定する「第55条の2第3項において準用する第16条の2第1項の規定による却下の決定に対する訴え」のことですね。よって誤り。
(ロ)誤り。審査基準によれば商標の色彩の変更は要旨変更ということになります。商標の構成要素のうち、色彩は任意的付随的構成要素ではあるものの構成要素の一つですので、文字商標が黒色で、それに色彩を付して違う色彩にした場合には、少なくとも同一のものにはならず、要旨変更となります(70条は色彩のみ異なる商標同士が類似している場合には同一とみなす旨の規定であり、このことはそもそも黒い文字商標と赤い文字商標とは少なくとも同一とは考えないということになります)。よって、誤り。
ただ、この点については、「通常の黒インキで記載して出願・登録された商標は色彩を構成要素としていないので、どのように着色しても(単色である限り)、商標法70条を待つまでもなく、登録商標そのものであると考えます(平尾「商標法」第1次改訂版 学陽書房 16頁)。」という考えがあります。特に標準文字制度により出願した商標は、「色彩は黒」として出願したわけではないと思いますので、説得力ある話に思えます。
ただし、通常の文字商標が黒の文字商標と考えても、色彩を構成要素としてはいなかった文字商標と考えても、本問では彩色を付した場合には、「色彩の変更」と考えるにしても、「色彩が存在しなかった商標に色彩を付した」と考えても結論は変わりません。
(ハ)誤り。これはできます。ただ、逆はできません。補正却下後の新出願をすると原出願は取下擬制となるので(準用意匠法17条の3第2項)、原出願について補正却下不服審判をすることはできません。これに対し、補正却下不服審判を請求した後に、気が変わって新出願をすることはできます。この場合にも、原出願は取下擬制となりわけですが、その場合には補正却下不服審判は対象を失って審決却下ということになります。
(ニ)誤り。68条の40は、商標登録出願をした者は、第40条第1項又は第41条の2第1項の規定による登録料の納付と同時に、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる旨規定しています。40条1項というのは一括納付、41条の2第1項というのは分割納付ですので、「商標権の設定の際の登録料を一括して納付するのと同時の場合に限り」の部分が誤り。
(ホ)正しい。補正が要旨変更であったこと自体は無効理由になっていませんね。要旨変更の認定は、事件ごとに行われることになります。「出願時が繰り下がることで何らかの無効理由が含むことになる場合」には、「その無効理由」で無効になるだけですね。
合格者でも落とす人が多かった問題でした。意外でした。
〔10〕商標登録出願についての補正及び補正の却下等に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。
(イ) 拒絶査定に対する審判において、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものとして却下された場合、その却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(ロ) 願書に記載した商標登録を受けようとする商標が文字のみからなる商標の場合、その商標に色彩のみを施す補正は、その文字が同一である限り、その商標の外観、称呼及び観念に影響を及ぼさないので、要旨を変更するものとして却下されることはない。
(ハ) 補正の却下の決定に対する審判を請求した者は、その決定の謄本の送達があった日から30日以内であっても、当該補正後の商標について商標法第17条の2第1項において準用する意匠法第17条の3第1項に規定する新たな商標登録出願をすることができない。
(ニ) 2以上の商品及び役務の区分を指定した商標登録出願については、商標登録をすべき旨の査定の後、商標権の設定の際の登録料を一括して納付するのと同時の場合に限り、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。
(ホ) 商標登録の無効の審判において、願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものと認められた場合、その補正が要旨を変更するものであったという理由によって、その商標登録が無効とされることはない。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ
【解説】
正解は1つの1でしたが、2を選んだ人もかなりいました。
(イ)誤り。「拒絶査定に対する審判」において補正却下された場合には、補正却下決定の取消しを求めて訴えを提起することができます。この「補正却下決定に対する訴え」というのは、商標法63条に規定する「第55条の2第3項において準用する第16条の2第1項の規定による却下の決定に対する訴え」のことですね。よって誤り。
(ロ)誤り。審査基準によれば商標の色彩の変更は要旨変更ということになります。商標の構成要素のうち、色彩は任意的付随的構成要素ではあるものの構成要素の一つですので、文字商標が黒色で、それに色彩を付して違う色彩にした場合には、少なくとも同一のものにはならず、要旨変更となります(70条は色彩のみ異なる商標同士が類似している場合には同一とみなす旨の規定であり、このことはそもそも黒い文字商標と赤い文字商標とは少なくとも同一とは考えないということになります)。よって、誤り。
ただ、この点については、「通常の黒インキで記載して出願・登録された商標は色彩を構成要素としていないので、どのように着色しても(単色である限り)、商標法70条を待つまでもなく、登録商標そのものであると考えます(平尾「商標法」第1次改訂版 学陽書房 16頁)。」という考えがあります。特に標準文字制度により出願した商標は、「色彩は黒」として出願したわけではないと思いますので、説得力ある話に思えます。
ただし、通常の文字商標が黒の文字商標と考えても、色彩を構成要素としてはいなかった文字商標と考えても、本問では彩色を付した場合には、「色彩の変更」と考えるにしても、「色彩が存在しなかった商標に色彩を付した」と考えても結論は変わりません。
(ハ)誤り。これはできます。ただ、逆はできません。補正却下後の新出願をすると原出願は取下擬制となるので(準用意匠法17条の3第2項)、原出願について補正却下不服審判をすることはできません。これに対し、補正却下不服審判を請求した後に、気が変わって新出願をすることはできます。この場合にも、原出願は取下擬制となりわけですが、その場合には補正却下不服審判は対象を失って審決却下ということになります。
(ニ)誤り。68条の40は、商標登録出願をした者は、第40条第1項又は第41条の2第1項の規定による登録料の納付と同時に、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる旨規定しています。40条1項というのは一括納付、41条の2第1項というのは分割納付ですので、「商標権の設定の際の登録料を一括して納付するのと同時の場合に限り」の部分が誤り。
(ホ)正しい。補正が要旨変更であったこと自体は無効理由になっていませんね。要旨変更の認定は、事件ごとに行われることになります。「出願時が繰り下がることで何らかの無効理由が含むことになる場合」には、「その無効理由」で無効になるだけですね。
合格者でも落とす人が多かった問題でした。意外でした。
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