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真の動物福祉牧場を目指して

妊婦のカイラス巡礼 ③

 今回ようやく、「聖母マリア」のような妊婦を登場させますが、それには舞台設定をもう少し整える必要があります。

 トゥルク(転生活仏)を宿した妊婦を見出すタメにダラムサラーからやって来た「賢者ユパ」と「踊り子シルヴィア」は、「ブレサリアン(不食者)ターシャ」がカイラス山中に築いた革命根拠地の司令部にいったん落ち着きます。
 しかし洞窟の要塞で暮らすのは100歳代後半の2人にはキツいので、ボン教徒のキャラバンに移るとします。

 チベット亡命政府の長老であるユパならば、チベット寺院でも当然歓迎されますが、それでは目立ち過ぎて党(ドン)の内偵に察知される恐れがあるタメ、ユパとターシャはボン教徒の遊牧民に扮してカイラス巡礼もします。

 一方で、シルヴィアはフランス人のお婆さんなのでお寺で暮らした方が快適で、「妊婦のカイラス巡礼」を見出すには全ての巡礼宿を把握する必要もあるので、シルヴィアには仏教寺院とヒンドゥー教寺院とジャイナ教寺院にも泊まって貰います。

 しかしそうした寺院は、世紀末感の高まっている近未来では満員御礼で、高額の喜捨をしなければ泊まれない状況とし、「聖母マリア」のようなチベット女性にはそんなお金は無いので、彼女はボン教徒のキャラバンに泊まってコルラ(巡礼)するコトとします。

 コルラ(左回りでカイラスを1周)は基本的に3の倍数で行われ、「99+9=108」を最終到達回数とする向きはありますが、わたしは「30×4=120」の方がスッキリしていて良いと思います。
 これはジャイナ教のコルラ回数にも通じ、1年の内で真っ裸で走ってコルラできるのは真夏に限られ、1日に1周が限度なので1年では30周までとされました。

 この「気力が続かずに歩いたら低体温症で死ぬ」という荒行は、手厚いサポート体制を整えても毎年数人の死者を出しており、中国政府はこれを禁止しましたが、クレージーな人々を止めるコトは現実には不可能であり、「踊り子シルヴィア」はそんな馬鹿達を後押しするエールを贈るとします。
 
 馬と鹿の混血種ヤックルは現実にはまだ存在して居ませんが、チベット高原の馬は明らかにロバとの混血で、短足で太っています。
 そうでなければ厳しい高地では生きられず、そんな馬は騎馬戦には向きませんが、乗り物としては安定していてわたしでも楽に乗りこなせました。

 今回見出し画像にした雪豹は日本の動物園で飼われており、どうやってヒマラヤから日本まで運んだのかは知りませんが、雪豹も猫のように人に懐くコトは確かなようです。
 こうしたアトラクションが有れば、ボン教徒のキャラバンも集客力がずっと増すと思い、それは「カムイ伝」の女版と言えるターシャが雪豹と友情を結んで連れて来たとします。

 ユパとターシャはボン教徒からアニミズム的な崇拝を受けて迎え入れられ、その巡礼宿に「妊婦のカイラス巡礼」も腰を下ろすとします。

 

 
 
 
 
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