窓に入る日が傾きはじめた。
そろそろ、ここを出る時間。
手にしていた本を閉じる。
「メドはつきそうか?」
かける言葉に、目で返す。
どうも、つきそうにないらしい。
しかし、用意していた材料も、あとわずかとなり、
手を止めた。
「んー。今日はここで辞めます。」
不本意そうに言う。
うまくいかないことも、まれにはある。
他の人との違いは、その頻度と、継続して行うことで、
成功へ辿りつける確率をあげているということ。
まわりをひと通り片付けながら、これまでの経緯を思い出し、
成功への手段を考えている。
頭から離れない様子。
それが彼の目にはおかしくも見えた。
「夢中になると、他にはなんにも見えなくなるんだな。」
くすくすと笑う。
「あ。。。すみません、どうもクセらしいです。」
照れながら言う。
自分でも判っているのだけど、どうにも治らないらしい、
「いいんだ、ただ帰り道だけは気をつけてくれよ。」
考えながら歩いて、迷子にでもなりそうなくらいだった。
部屋を出る。
街頭の明かりが、ふたりの姿を照らす。
歩きつつも、まだ頭の中はいっぱいの様子。
彼よりも少し遅れている。
それを確認しながら歩く。
分かれ道。
ここからふたりは、それぞれの寮へ帰る。
「じゃ、気をつけて。」
「はい。」
ひとつお辞儀をして、ホームズは足を進めた。