ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

韓国動乱のゆくえ(その3)

2024-12-21 09:29:46 | 日記
(承前)

韓国社会の以上のような混乱を、当の北朝鮮はどう捉えているのか。最後に、この問題を考えてみたい。
北朝鮮からすれば、敵国である韓国の政治的混乱は、この敵国を攻撃する絶好のチャンスと言えるだろう。なのに、北朝鮮が事を構える素振りは全く見られない。なぜなのか。

戒厳令騒ぎで韓国が大騒ぎをしているのに、北朝鮮が何の動きも見せていないのは、(北朝鮮)国内の体制維持がやっとで、そこまで手が回らないからだろう」とする見方がある(ブログ「草莽隊日記」)。

だが、私はそうは考えない。
北朝鮮は意図的にこの事態を静観しているのではないか。
事態を静観すること、つまり「韓国に対して何も仕掛けない」ことこそが、非常戒厳を宣布した尹大統領の見方(=「北朝鮮は我が国を転覆しようと画策している」)を否定することにつながるからである。下手に動けば、逆に尹大統領の主張の正当性を裏打ちすることになってしまうのだ。

韓国の国会は先日、尹大統領の弾劾決議案を可決した。彼は今「内乱罪」の咎で一転、大罪人に仕立てられつつある。大統領が一転して罪人になるのはこの社会では日常茶飯事であり、そう驚くことではない。

それにひきかえ、我が日本の国会の、そのちんたらしたマンネリ論戦を見ていると、韓国の民衆の燃えるような政治的エネルギーがうらやましく思える天邪鬼爺である。

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韓国動乱のゆくえ(その2)

2024-12-19 08:51:04 | 日記
(承前)

「破廉恥な従北反国家勢力」によって自由韓国は蝕まれている、ーーこの尹大統領の見方は、はたして被害妄想の所産なのかどうか。この問題を考えてみたい。

朝日新聞は先日、ユーチューバーの介在を指摘して、次のように書いている。

韓国の極右のユーチューバーらは、2020年の総選挙から『不正選挙』を主張。現政権の保守系与党・国民の力が大敗した今年4月の総選挙を含め、『北朝鮮や中国のハッキング攻撃による不正』が行われたと主張してきた。尹氏がこうした主張に影響を受けたのではないかとも指摘されている。
(朝日新聞12月15日)

なるほど。ユーチューバーは「根拠のないデマや陰謀論をふりまく妄想オタク」という印象が強い。そうした「根拠のない印象」に基づけば、尹大統領の見方はたしかに「被害妄想」じみた思い込みだということになる。
根拠のない思い込みによって権威主義的な「非常戒厳」の鉈(なた)を振りかざし、民主主義の手続きを放り投げたのだから、尹大統領は民主主義を破壊した大罪人だということになるのだろう。

だが反対に、もしユーチューバーの言説が根拠のないデマではなく、ズバリ核心を突いているとしたら、どうなのか。韓国の民主主義は、北朝鮮や中国の策略によってすでに救いがたく破壊されている、ということになる。

北朝鮮や中国の策略によって政権与党「国民の力」が少数与党に転落した以上、「数の力」が物を言う民主主義の手続きに訴えても、勝ち目はない。
だからこそ尹大統領は「非常戒厳」という非常手段に訴えたのだろう。

韓国の国会が尹大統領の弾劾(だんがい)訴追案を可決した今、尹大統領がとったこの「非常戒厳」という非常手段の、その正当性は民主的な「数の力」によって完膚なきまでに否定されてしまった。
残された道は、憲法裁判所でこの正当性がどう判断されるかである。尹大統領はその最終舞台での闘争に望みをつないでいる。

私が懸念するのは、この憲法裁判所でも尹大統領の主張の正当性が否定され、彼の職務権限が剥奪された場合である。(韓国世論の大勢を向こうにまわし、これまで対日融和策をとってきた)尹大統領が失脚すれば、日韓関係は元の木阿弥で再び悪化し、(バイデン米大統領が主導してやっとこさ構築した)「日米韓」の軍事同盟はあえなく瓦解することになる。
そうなれば、尹大統領が心配した通り、また、日本の石破首相が心配する通り、中国や北朝鮮が跋扈(ばっこ)し、猖獗(しょうけつ)を極めることになる。
日本は、好戦的な中国・北朝鮮に対抗するかけがえのない盟友を失うことになるのである。

(つづく)

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韓国動乱のゆくえ(その1)

2024-12-17 09:09:20 | 日記
お隣の韓国が騒然としている。事の発端は、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がさる12月3日、「非常戒厳」を宣布したことにある。
この「非常戒厳」は、韓国憲法77条1項に基づいたもので、次のように規定されている。

「大統領は戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態において、兵力をもって軍事上の必要に応じる、あるいは公共の安寧秩序を維持する必要がある時には、法律の定めに則り戒厳を宣布することができる。」

この規定を根拠に、尹大統領は「自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布する」と述べたのである。

これを補足して、尹大統領はこうも述べている。

「いま大韓民国は直ちに崩壊してもおかしくないほどの風前のともしびの運命に直面している。北朝鮮共産勢力の脅威から自由大韓民国を守り、韓国国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一挙に排除し、自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布する。」

この報を聞いて、日本の政治家はどう思っただろうか。
野党の攻勢に手を焼いている少数与党・石破自民の右派議員なら、「うらやましい限りだ」と思ったかもしれない。
日本国憲法が韓国ばりの「非常戒厳」の宣布を許していたら、窮地の自民右派議員は「中国の脅威から自由日本を守るためだ」として、即刻この「非常戒厳」の大砲をぶっ放したかもしれない。
これとは逆に、立憲民主などの野党議員は、「こんな乱暴な大砲のような法令を許さないのが、日本の良いところだ。これこそ日本の民主主義が一歩進んでいる証拠だ」と思ったかもしれない。

どう思うにせよ、日本と韓国とでは決定的な相違がある。「北朝鮮」という脅威がリアルな脅威として身近に存在し、そのようなものとして重く感じられているかどうかの違いである。

尹大統領が野党を「破廉恥な従北反国家勢力」と呼んだとき、彼は「北の脅威」を身近に迫るリアルな脅威として感じていたに違いない。これは被害妄想でも何でもなく、「北朝鮮共産勢力の脅威から自由大韓民国を守る」ことを自らの使命とする、韓国大統領ならではの切羽詰まった感性である。
大統領のような政治指導者でなくても、同じ危機感を持った韓国国民は少なくなかっただろう。そういう国民は、尹大統領の「非常戒厳」宣布にいたく共感したに違いない。

しかしである。報道を見る限り、これに激しく憤り、強烈な反感を抱いた国民も少なくなかったようだ。
この反発の声に押されて、最大野党の「共に民主党」は尹大統領に対する弾劾訴追案を提出し、これに激しく対抗しようとした。

尹政権に対する反感の中心にあるのは、「国家権力を振りかざして国民を弾圧する、こういうやり方は昔の軍事政権と同じで、民主主義を否定するものだ」という思いだろう。「民主主義を守れ!」という声が、尹大統領に対抗して渦巻いている。

この声に押され、韓国の国会は先日12月14日、尹大統領の弾劾(だんがい)訴追案を3分の2以上の賛成で可決した。一部の与党議員も賛成票を投じたという。この議決によって尹氏の職務は停止され、今後、憲法裁判所が180日以内に、罷免(ひめん)が相当かどうかを判断することになる。

では、尹大統領の言い分と、野党「共に民主党」側の言い分と、そのどちらが正しいのか。
小此木政夫氏は、先日の朝日新聞で「尹大統領が『被害妄想』を膨らませて、『非常戒厳』を宣布した」と分析している(朝日新聞12月16日)。
むろん尹大統領は、小此木氏のようなこの見方に、猛然と異を唱えるだろう。尹大統領からすれば、「北の傀儡勢力」が民主主義を歪め、現状は「衆愚政治(ochlocracy)」に陥っている。尹大統領は、衆愚政治に陥った国政の現状を改め、真の民主主義を取り戻すためにこそ、非常戒厳によって「北の傀儡勢力」を一掃しなければならないと考えたのだ。
民主主義を守れ!
皮肉なことに、これはまた尹大統領の叫びでもある。

問題は、そうした尹大統領の見方が「被害妄想」かどうかである。

(つづく)

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領土をめぐる中国の影(その3)

2024-12-15 08:52:02 | 日記
(蛇足)
私は毎朝、起きがけに朝日新聞の「紙面ビューアー」に目を通し、そこで印象に残った新聞記事を(ネットの「共有」機能を使い)コピペしてメールボックスに保存する習慣がある。
前回のブログ記事で引用した(12月1日付の)朝日新聞の記事も、そのようにして私のメールボックスに残してあったものなのだが、きのうブログに書くために改めて朝日新聞の「紙面ビューアー」を確認したところ、奇妙なことに、この記事はどこにも見当たらない。

なぜなのか。

もしかすると、この記事は(「中国は油断も隙もないトンデモな国だ」という)反中感情をあおる記事だったために、中国政府のクレームを招き、削除せざるを得なかったのかもしれない。ったくもう、朝日って奴は、腰抜けもはなはだしいぜ!


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領土をめぐる中国の影(その2)

2024-12-13 09:21:27 | 日記
(承前)

馬毛島を買い取った「立石勲」なる人物については、サイトJBpressの記事が詳しい。

JBpress「基地建設開始、『馬毛島』の権利を手に防衛省と渡り合った男の一代記」(2023/1/27配信)

この記事では、立石氏は遠洋マグロ漁船の乗組員から身を起こし、馬毛島のオーナーにまでなった立志伝中のの人物として描かれている。

それはさておき、日本政府は2011年、馬毛島に日米の防衛拠点を作ろうとして、この島の買収にとりかかった。ところが、この島のオーナーだった立石氏の希望売却額は400億円超。一方、日本政府側の希望は約40億円。かなりの開きだった。

立石氏はこの頃、政府要人に電話をかけ、「実は、中国企業がお金を出すと言ってきているのですがねぇ」と伝えたとされるが、これは、日中両国を競り合わせて、この島を高値で売りつけようとする(がめつい)商魂の意図から出た言葉だろう。

朝日新聞は次のように報じている。

帰国後、『(中国側から)あなたは政府に毅然と対峙する気骨のある人だ』とたたえられ、出資や融資を打診された――と周囲に話す立石を、(当時、環境相だった)原田は『資本を持たれるってのはうるせえもんだぞ。絶対にだめだぞ』と繰り返し説得した。
立石は原田に『先生、なんとか200億は超えるようにしてください。大台は超えてください』と懇願し続けた。
19年の晩秋。立石は頻繁に東京・永田町の議員会館にある原田の部屋を訪ねるようになっていた。焦りを見た原田は『もう我慢せい』と強く伝えた。
11月末までに億単位の資金を用意できなければ立石の会社は事実上、倒産する恐れがあったとされる。そして19年11月下旬、160億円での売却で政府と基本合意した。

(朝日新聞12月1日)

この合意からしばらくして、立石氏は老衰のために死去したとされるが、(防衛拠点作りに四苦八苦する)日本政府を手玉に取ろうとする、こういうあくどい商人こそ「売国奴」と呼ぶにふさわしいのだろう。
JBpressの記事では、立石氏は防衛省と「渡り合った」人物とされるが、この「渡り合い」の中身は、「手玉に取る」という形容がふさわしいのではないか。私はそう見ている。

ところで売国奴といえば、桜田義孝なる人物(衆議院議員、元東京オリンピック担当相)も、相当な食わせ者だと言わなければならない。
当時、中国企業ーー馬毛島を買収しようと暗躍していた中国企業ーーが立石氏らを交えて設けた宴会の席に、この議員の姿も見られたという。この事実は朝日新聞の報じるところだが、記事が報じる「桜田義孝」なるこの人物も、カネにむらがる売国奴の一味なのかもしれない。
(つづく)

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