ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

領土をめぐる中国の影(その1)

2024-12-11 09:22:06 | 日記
国家間の確執は、主に領土をめぐって繰り広げられる。領土をめぐる争いはたいていの場合、武力による戦争を伴うが、ときには戦争抜きで「領土の変更」が行われることもある。

ほう、それはいいことではないか。戦争ほど愚かで非道いものはない。私は戦争を激しく忌避する。戦争抜きで事が済むなんて、そんなすばらしい事例があるのなら、ぜひ知りたいものだ。ーーそう言いたくなる人も少なくないだろう。
だが、戦争抜きで行われるからよい、というものでもないのではないか。
こんな記事を見かけた。

日米国防拠点の無人島、迫った影 所有者『中国企業がお金出すと…』
鹿児島の南から台湾にわたって弧を描くように連なる南西諸島。そのうちの一つの無人島をめぐって、日本の安全保障を揺るがしかねない動きが今から数年前にあった。
無人島の名前は馬毛島(まげしま)。
日米の防衛の要所とされるこの島に、中国側の影が迫っていた。

(朝日新聞DIGITAL11月14日配信)

2011年の当時、日米両政府は無人島の馬毛島に、米空母艦載機の離着陸訓練拠点を作ろうとしていた。その無人島を買収すべく、中国企業が暗躍していたというのである。

ったくもう!中国って奴は、カネに飽かせて日本防衛の拠点にこっそり手を伸ばす。この国は油断も隙もないトンデモな国だ!
・・・と言いたいところだが、事情は少し違っているようだ。

キーになるのは、「立石勲」なる人物である。この男は当時、不動産会社「タストン・エアポート」の代表取締役だった。彼は馬毛島が日本防衛の拠点になるのを見越し、大枚をはたいてこの島を買い取っていた。
(つづく)


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戦争の終わらせ方(その4)

2024-12-09 09:04:03 | 日記
(承前)

ところで問題は、実際の事の成り行きである。
現実に目を向ければ、ウクライナ軍と北朝鮮軍との間では
リアルな戦闘が行われ、
北朝鮮の兵士に相当の死傷者が出ているという。
実際に投降した北朝鮮兵士の数は、公表されていない。
ウクライナの「甘い水」作戦は、まだ戦況を左右するまでには至っていないのか・・・。

そんな疑念が頭をもたげはじめたとき、次のニュースに出くわした。

ロシア国境付近で北朝鮮兵士18人集団脱走 派遣兵か 韓国紙報道
韓国紙の朝鮮日報は16日、ウクライナ軍高官の話として、ロシア西部ブリャンスク、クルスク両州のウクライナとの国境付近で、北朝鮮軍兵士18人が集団脱走したと報じた。ウクライナ軍は、脱走したのは北朝鮮が対露軍事協力の一環で派遣した兵士らで、まだ拘束されていないとみているという。
(毎日新聞10月16日配信)

ウクライナの「甘い水」作戦は、やはり着実に成果を上げていたのだ。

さて、これから戦況はどう変化するのか。
ウクライナの「甘い水」作戦が功を奏したからといって、
ローウク戦争が「一件落着」となるわけではない。
これがこの戦争の厄介なところである。
北朝鮮の援軍が役に立たないと知ったら、
ロシアのプーチンはさらに追いつめられ、
予告通り、核のボタンに手を伸ばすかもしれない。
そうなれば、世界は破滅に一歩近づくことになる。
くわばら、くわばら。

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戦争の終わらせ方(その3)

2024-12-07 09:42:05 | 日記
(承前)

ウクライナの「甘い水」作戦にしても、
黒田官兵衛の「調略」作戦にしても、
その成否の鍵を握るのは、事が秘密裏に行われるかどうかである。
ウクライナのようにSNSを利用し、大っぴらに事を仕掛けたのでは、
敵方(北朝鮮)の警戒心を徒(いたずら)に呼び覚まし、
事前に阻止される可能性が大きくなる。
北朝鮮の金正恩は、ロシアに派遣した兵士たちに対して
「投降した兵士は、即刻射殺するぞ!」とか、
「投降した兵士は、本国内の親族を皆殺しにするぞ!」と
脅しをかけることで、ウクライナへなびこうとする兵士たちを
思いとどまらせようとするだろう。

「甘い水」作戦にしても、「調略」の作戦にしても、
事を成功させるには、内密にこれを行う必要があるが、
それだけではない。
効率を考えるなら、
作戦のターゲットを兵士個々人ではなく、部隊全体とし、
部隊の指揮官に話を持ちかける必要がある。
もっと言えば、個々の部隊ではなく、
(北朝鮮という)国家全体をまるごと抱きこむことが、
最高のシナリオだということになる。

つまり、北朝鮮の政府高官に種々の「甘い水」を提示し、
友好関係を結ぶように持ちかければよいのだ。
多少コストはかかるが、それだって大したことはない。
リアルな戦闘を行うとなれば、
そのために必要な軍事物資を調達するコストは膨大なものになる。
それに比べれば、調略や抱き込みに必要なコストなど、物の数ではない。

これまでウクライナの最大の支援国だったアメリカは、
トランプが次期大統領に返り咲くことになり、
ウクライナへの支援は大幅に減額されると予想される。
その意味でも、安上がりなこの「甘い水」作戦は、
時宜にかなっていると言えるだろう。

(つづく)
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戦争の終わらせ方(その2)

2024-12-05 09:08:10 | 日記
(承前)

ローウク戦争の最前線に駆り出された北朝鮮の若い兵士たちーー貧しく哀れな兵士たちの身になって考えてみよう。
彼らがウクライナの「甘い水」作戦に乗れば、国家元首・金正恩の気まぐれな「気晴らしへの意志」に翻弄されることがなくなり、
加えて、これまで以上に数段恵まれ、安定した食生活が保証される。
これほどうまい話はない(笑、オヤジギャグです)。

この話に乗らず、殺(や)られるのを承知で敵陣に攻撃を仕掛けても、
何も見返りは期待できないのだから、
この誘いに乗らないのは、愚の骨頂である。
ーーこれは馬鹿でもわかる理屈だ。

ふりかえってみれば、人類は「力への意志」(ニーチェ)に操られ、戦争へと駆り立てられる一方、テクノロジーを駆使して、戦死者を減らす知恵も発達させてきた。
今、ウクライナとロシアの戦場では、重火器を搭載した無人のドローンが飛び交っている。
ウクライナ軍もロシア軍も、無人のドローンを使って相手を攻撃することに余念がない。
無人ドローンのターゲットは今のところ生身の人間だったり、敵方のインフラだったりするが、これを迎え撃つのも無人ドローンである。
そう遠くない将来、戦場は無人ドローン同士の攻防の場になり、生身の兵士の死傷者は激減するに違いない。

こうした「テクノロジーによる戦場無人化の動向」とともに、
ウクライナが今回編み出した「甘い水」作戦も、
戦死者を減らすもう一つの妙手だと言えるだろう。

古今東西の歴史を見渡せば、
この「甘い水」作戦は、しかし今回が初めてのものではないことがわかる。
そこには、日本の戦国時代にしばしば見られた「調略」の戦術と共通の発想がみてとれる。
「天才軍師」として名を馳せた黒田官兵衛は、「調略」の名手だった。

(つづく)

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戦争の終わらせ方

2024-12-03 09:10:17 | 日記
難しい問題である。ローウク戦争はどうすれば止めさせることができるのか。
バイデン米大統領がウクライナに対し、すでに供与した長距離ミサイルATACMSをロシア領内への攻撃に使用することを許可したのは、さる11月17日のことだった。
これに対してロシアは激しく反発し、核の使用をほのめかすとともに、北朝鮮の援軍を頼み、ウクライナへの攻勢を一段と強めた。
バイデン米大統領の決定は、ローウク戦争の火に油を注ぎ、これを大きくエスカレートさせてしまったのである。第3次世界大戦の危機を招いたといっても過言ではない。

考えてみれば、この事態は予想されたことだった。バイデン米大統領がこれまでATACMSをロシア領内への攻撃に使用することを許可しなかったのは、この事態が予想されたからである。
にもかかわらず、バイデン米大統領はなぜ今になってこれを許可したのか。
それは、トランプが来年1月、米大統領に就任すれば、ウクライナへの支援を中止すると予想されるからである。そうなれば、ウクライナは確実にロシアに敗北する。それは何としても避けたい、とバイデンは考えたのだ。

ウクライナの敗北、すなわちロシアの勝利を避けようとすれば、トランプが米大統領に就任する前に、ウクライナをもりたてる確実な手立てとして、ATACMSのロシア領内への攻撃を許可したほうがよい。ーーそう考えたとき、バイデンは頭に血が上(のぼ)り、ローウク戦争のエスカレーションの可能性などすっかり忘れてしまったに違いない。半ボケ老人の悲しさである。

けさの朝日新聞に、次のような記事がのっていた。

正恩氏『米が軍事介入』 ロシア追加支援協議か 国防相と会談
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記が29日、平壌でロシアのベロウソフ国防相と会談し、米国などがウクライナに供与した長距離ミサイルでのロシア領土攻撃を認めたことを、『直接的な軍事介入』だと非難した。金氏は会談でロシアへの支持を改めて鮮明にしており、北朝鮮兵のロシアへの追加派遣などさらなる軍事協力が協議された可能性がある。
(朝日新聞12月1日)

この記事を読んで、私は、「この戦争、何とかならないものだろうか」と思案をめぐらせた。そして、数日前に書いたブログ記事のことを思い起こした。私はこう書いたのだった。

******************

戦争はどうすれば無くすることができるのか。
この問題を考える上で、興味深いニュースを目にした。

ウクライナ政府のロシア兵に投降を促すプロジェクト『私は生きたい』は23日、ロシアに派遣された北朝鮮兵に対し、投降を呼びかける動画と文章をSNSに投稿した。ロシア語と朝鮮語で『他国で無意味に死ぬ必要はない』と訴えている。
(朝日新聞DIGITAL10月24日配信)

北朝鮮の兵士は、本国では「ドングリ泥棒」をしなければならないほど苦しく貧しい生活を強いられているという。
興味深いのは、ウクライナがこの北朝鮮の兵士たちに対して、どういう呼びかけを行ったかである。記事は次のように続く。

23日の動画では2階建ての捕虜収容所が映し出され、北朝鮮兵が『広く、暖かく、明るい部屋』に入れられると主張。肉や野菜を含む『1日3回の温かい食事』や『医療サービス』も与えられるという。『ウクライナの収容所は国籍や宗教、イデオロギーに関係なく受け入れる』とし、連絡先も記している。
(同前)

なるほど。本国でかなり困窮した生活を強いられてきた、哀れな北朝鮮の兵士たち。
彼らはこのような「甘い水」の誘いを受ければ、
当座の「温かい食事」に目がくらみ、
銃器などうち捨てて、そのままウクライナ軍に投降しようという気になるに違いない。
そうなる可能性が高いとしたら、たしかにこれは上手い作戦である。
思わく通りに運べば、ウクライナ兵が北朝鮮兵を攻撃することもなくなり、
北朝鮮兵がウクライナ兵に攻撃を加えることもなくなる。
こうして無益な殺生は確実に減ることになるのだ。

(つづく)

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