ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

屁みたいなニュース

2023-08-19 11:08:56 | 日記
屁みたいなニュースである。


中国電力が山口県上関町に提案した使用済み核燃料を一時保管する『中間貯蔵施設』の建設をめぐり18日臨時の町議会が開かれ、西哲夫町長は建設に向けた地質などの調査を受け入れる考えを表明しました。調査は関西電力と共同で実施され、実際に建設されれば全国で2か所目になります。
(NHKニュース・防災8月18日配信)


ニュースというと、なにかエポック・メーキングな出来事のように思われるが、地方の一町議会が「中間貯蔵施設」の建造に向けたボーリングなどの調査を受け入れたからといって、何がどう変わるものでもない。


原発問題にとって重要なのは、原発施設の「トイレなきマンション」状態をどう解決するかである。原発で生み出される「核のゴミ」つまり使用済み核燃料を最終的にどう処分するかが重要であり、この問題が解決されなければ、「核のゴミ」は増えていくばかりで、一時的な仮置き場(中間貯蔵施設)を一つ増やしたところで、何も変わりはしない。


なるほど上関町の住民にとっては、「核のゴミ」の仮置き場建造を受け入れるかどうかは、暮らしに関わる重大な問題なのだろう。中間貯蔵施設の建造に向けた調査を受け入れれば、政府から多くの「飴玉」がもらえ、そこそこリッチな生活が保証される。
しかし「核のゴミ」の中間貯蔵施設が建造されれば、想定外の大地震などで大量の放射性物質が地表に露出し、住民は大きな健康被害を被ることにもなりかねない。政府が差し出す各種の優遇措置、つまり「飴玉」は、そうしたリスクを引き受けることへの代償なのだ。


世知にたけた町会議員の中には、受け入れ反対派の住民に向かってこんなふうに言う人がいるかもしれない。


「なーに、これは調査を受け入れるかどうかであって、中間貯蔵施設を受け入れるのとは別の問題なのです。調査の結果、施設の建造には適しない、という結果が出ればそれで良し、仮にそういう結果が出なかったとしても、放射性物質のリスクを抱え込むのは同じですから、リスクが嫌なら、施設の建造を受け入れなければいい。いずれにしても、それまでは政府の優遇措置がもらえるのですから、もらうのが得に決まっています。ここは四の五の言わずに、もらっときましょうや」


だが、この話は甘いと言わなければならない。中間貯蔵施設の建造を受け入れなければ、政府はすぐにこの町への「飴玉」の提供を差し止めるだろう。それまで「飴玉」をなめてリッチな生活に馴れてしまった住民が、それ以前の貧しい生活に戻れるだろうか。これまでのリッチな生活か、それ以前の貧しい生活か、ーーその選択を迫られたとき、大半の住民はこれまでのリッチな生活を望み、中間貯蔵施設の建造を受け入れるのではないか。


もちろん、政府や電力会社の関係者は、そんなことはとっくにお見通しである。

コメント
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