論語を現代語訳してみました。
為政 第二
《原文》
孟懿子問孝。子曰、無違。樊遲御。子告之曰、孟孫問孝於我。我對曰、無違。樊遲曰、何謂也。子曰、生事之以禮、死葬之以禮、祭之以禮。
《翻訳》
孟懿子〔もういし〕、孝〔こう〕を問う。子 曰〔のたま〕わく、違〔たが〕うこと無かれ、と。樊遅〔はんち〕 御〔ぎょ〕す。子 之〔これ〕に告〔つ〕げて曰〔のたま〕わく、孟孫〔もうそん〕、孝を我〔われ〕に問う。我 対〔こた〕えて曰〔い〕わく、違うこと無かれ、と。樊遲 曰〔い〕わく、何〔なん〕の謂〔い〕いぞや、と。子 曰〔のたま〕わく、生けるときは之に事〔つか〕うるに礼を以〔もっ〕てし、死せるときは之を葬〔ほう〕むるに礼を以てし、之を祭〔まつ〕るに礼を以てす、と。
孟懿子〔もういし〕、孝〔こう〕を問う。子 曰〔のたま〕わく、違〔たが〕うこと無かれ、と。樊遅〔はんち〕 御〔ぎょ〕す。子 之〔これ〕に告〔つ〕げて曰〔のたま〕わく、孟孫〔もうそん〕、孝を我〔われ〕に問う。我 対〔こた〕えて曰〔い〕わく、違うこと無かれ、と。樊遲 曰〔い〕わく、何〔なん〕の謂〔い〕いぞや、と。子 曰〔のたま〕わく、生けるときは之に事〔つか〕うるに礼を以〔もっ〕てし、死せるときは之を葬〔ほう〕むるに礼を以てし、之を祭〔まつ〕るに礼を以てす、と。
《現代語訳》
孔先生が、魯〔ろ〕の国の宮殿に赴〔おもむ〕かられた際、有力貴族の当主である孟懿殿から、孝行の意味を尋ねられ、次のように仰られました。
父母に対する己の気持ちに逆らわないことです、と。
この時、先生の馬車の御者〔ぎょしゃ〕をしていたのが、樊遅さんでした。先生は樊遅さんに、孟懿殿との話のやりとりを聞かせました。
すると樊遅さんは、「己の気持ちに逆らわないこととは、どういう意味ですか」と、お尋ねになられ、先生はニッコリと微笑んで、次のように仰られました。
父、母がお元気なあいだは、しきたりなどにならってご奉仕〔ほうし〕し、お亡くなりになれば、礼法や礼式に従ってお祀〔まつ〕りさせていただく。
その際、ご先祖様の御霊〔みたま〕をもお祀りさせていただく、こういうことだよ、と。
〈つづく〉
※ 原文・翻訳の出典は、加地伸行大阪大学名誉教授の『論語 増補版 全訳註』より
※ 現代語訳については、同出典本と伊與田學氏の『論語 一日一言』から参考としている
※ 孔先生とは、孔子のことで、名は孔丘〔こうきゅう〕といい、子は、先生という意味
※ 孟懿とは、魯の国の三つの有力貴族(三恒氏)・孟孫家の当主のこと。
※ 樊遅とは、孔子の弟子で季孫氏に仕えていた。
※ イラストは『かわいいフリー素材集 いらすとや』さんより