聞かば斯(すなわ)ち諸(これ)を行わんか
「子路問う、聞かば斯ち諸を行なわんか、と。子 曰(のたま)わく、父兄在(いま)す有り。之を如何んぞ、其れ聞かば斯ち之を行なわんや、と。冉有(ぜんゆう)問う、聞かば斯ち諸を行なわんか、と。子 曰(のたま)わく、聞かば斯ち之を行なえ、と。公西華(こうせいか)曰(い)わく、由(ゆう)や、聞かば斯ち諸を行なわんかと問うに、子 曰(のたま)わく、父兄在す有り、と。求(きゅう)や、聞かば斯ち諸を行なわんかと問うに、子 曰(のたま)わく、聞かば斯ち之を行なえ、と。赤(せき)や惑えり。敢えて問う、と。子 曰(のたま)わく、求や退く。故に之を進めり。由や人を兼(か)ぬ。故に之を退けたり、と。」
■その意味は?
子路が尋ねた。
『何かを学び〔聞く〕ますとすぐにそれを実行してよろしいでしょうか。』と。
孔子(先生)が答えられた。
『父兄が元気に過ごしておられるときは、他のかたから学んだからとて、どうしてすぐ実行してよいものか〔ひとりで決めるべきではなかろう〕。』と。
冉有が同じ質問をしたとき、孔子(先生)はこう答えられた。
『学んだならば、すぐ実行することだ。』と
そこで公西華は、質問を生じて尋ねた。
『〔同じ質問でありながら〕由〔子路〕のときは、父兄の意見を聞け、求〔冉有〕のときは、すぐ実行せよ、とのこと。〔どちらが正解なのか〕私は迷っております。どういうわけでしょうか。』と。
孔子(先生)が答えられた。
『求は控えめだから、前に出よと。由は出すぎだから、控えめにと教えたまでよ。〔結局は実行するので同じ結果だ〕』と。
(加地伸行全訳注「論語」より)
■感想
自分が真に善いと感じたこと、これを誰よりも先んじて行おうとはせず、まずは目上の方に行ってもらうように努める。
さらには、自分が真に善いと感じたこと、これを誰にも理解されなくとも、まずは「自らが行う」とする心がけに努めよう。