旅する心-やまぼうし

やまぼうし(ヤマボウシ)→山法師→行雲流水。そんなことからの由無し語りです。

逆転の思考~地球温暖化と地方圏の生き方~

2007-06-27 21:32:55 | 日々雑感


(栗駒山:国定公園)

「ふるさと納税」が話題に上っている。応益負担に基本を置くこれまでの税のあり方を越えて、自分がかつてお世話になったり、特に応援したいと思う地域(自治体)に納税できるようにしようというものだ。
    
国土の圧倒的面積を占める地方圏では人材を育成するも、彼らの活躍できる舞台は大都市圏にあることから、常に流出過多が続いている。言い換えれば、わが国の繁栄を支えてきたは地方圏出身者ということになる。しかし、彼らの活躍や収入に起因する富や税金は、彼らを育てた地方圏にはストレートに還流しない。財源配分の頼りとしてきた地方交付税も、はやその力を失った。

地方圏の疲弊は、「自ら過度の投資をしたツケ」、「自助努力が足りないため」とか言われてしまえば、経済的にも日常生活的にも苦労しつつ人材輩出をし続けた地域にとっては、何ともやりきれない。

ここで、視点を転じてみたい。
地球温暖化は、21世紀最大の問題。


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2007年5月30日の読売新聞の報道によれば、「地球温暖化対策の柱と位置づける二酸化炭素(CO2)の2005年の森林吸収分が予定の8割弱にしか達していない」ことが環境省などの試算で明らかになったという。

この報道では、「国内の森林は、管理されていないものも含めると9600万トン分の二酸化炭素を吸収する能力がある」「国内の温室効果ガス総排出量は約 13億6000万トン(CO2換算)で、京都議定書の目標値を13.8%上回っている」「同省では、ここから森林吸収分として3.8%、途上国への技術協力などによる削減分として1.6%を差し引き、8.4%分の削減対策がさらに必要になると計算」。


環境省のあるデータによると、CO2排出量とその吸収に必要とされる木の本数換算(杉の場合)は
 ・人の呼吸では年間約320kg/人・・・杉23本
 ・自動車排気ガス  年間約2300kg/台・・・杉160本
 ・一般家庭(電気やガス等の使用・自家用車・廃棄物からの排出)
 約6500kg/年・・・杉460本

また、他のあるデータによると、人が1km移動する場合のCO2排出量は、
 鉄道:19g、バス:53g、乗用車:175g、飛行機:111g 

だという。

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となれば、東京や大阪、名古屋などの大都市圏は、人口も多く、企業活動も盛んだから、温室効果ガスの排出量も相当なもの。

加えて、ゴミや産業廃棄物でも同じことだが、都市活動によって排出される好ましからざる産物は、越境し、全国に散らばっている。

「それらをどこで吸収し、バランスをとっているか大いに考えて欲しい。」とは、地方圏に住むものにとっては当然の思いだろう。

地方圏は急速に進行する少子高齢化の中で、地域経済も疲弊の一途をたどっている。これを裏返して言えば、温室効果ガス排出量の増加の伸びが大都市圏よりはるかに小さいということになる。しかも豊かな自然を保ちながら・・・だ。


世に“水攻め”“兵糧攻め”なる戦法があるが、“人間生存に不可欠なものを絶つ”戦法として、CO2を含めた温室効果ガスの吸収努力を地方圏が放棄したらどういうことになるのだろう。

”肉を切らせて骨を切る!!” 

大都市圏に住む“地方圏の存在意義をあまり認識しない人々”には、そんなことを突きつけてみたい。


「ふるさと納税制度」は、地方圏に住む人たちの思いの象徴の一つのような気がしてならない。

「余計な工業団地や住宅団地などの開発をしない」、「開発済みであっても余分なところは自然に戻す」 そういったことが企業誘致や地域経済活動の活性化の切り札になる。効率性、経済性を重視すぎる今日のわが国社会の行く末を、こうした思いで見つめていたい。


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