旅する心-やまぼうし

やまぼうし(ヤマボウシ)→山法師→行雲流水。そんなことからの由無し語りです。

蚊のおとす 涙の海に舟浮かべ

2007-08-13 22:39:40 | 日々雑感
「蚊のおとす涙の海に舟浮かべ棹さす人の腕のほそさよ」とは、随分と昔に李御寧(イ オリヨン)さんから聞いた歌である。もうかれこれ15年以上も前になるだろう。地球文化シンポジウムと銘打った催しでのことだった。

李御寧サンは、初代の韓国文化大臣をされた方で、日本に対する造詣もとても深い。

先の歌は、「縮み」思考の日本人を論じた中で、その日本人の心の細やかさを例えたものであった。小さな蚊の涙を“海”に見立て、さらにはそこに“舟”まで浮かべ、まだ足りないとみえて“棹さす人”を乗せ、その人の“腕の細さ”まで凝視していこうとするなんともすごい心の働き。この歌は、シンポジウムの中で最も強烈に記憶に残った。

(注)
当時のメモを探したが見つからない。この歌の標記(特に漢字部分)が正確であるかどう確認できずにいるが、内容的には誤りはないと思っている。



今日の午前中は、久しぶりに裏庭の草取りをした。あまり暑くならないうちに片付けようと始めたのは良いが、それでも11時頃には30度を超していたであろうか。とにかく早く終えようとしていたのであまり気にも留めなかったが、けっこう“やぶ蚊”がいたのである。

ずんずんと草がむしりとられていくと、残り少ない安住の地が侵略されたと解したか、こちらに向かって吸血に来た。Tシャツからはみ出している腕の4箇所ほどが、彼ら(正確には彼女ら。血を吸うのはメスのみだから)の攻撃地となった。うち1匹が私の返り討ちにあったが・・・。

そうこうしているうちに思い出したのが、先の李御寧さんから教えられた歌。ブツブツ小言を言いながら草むしりに汗を流している自分と、いにしえの心細やかな日本人とを比べ、可笑しさがこみ上げてきた。

そういえば今日は盆の入り。仏教では三川草木悉有仏性とも言うそうだ。雑草などと決め付けて、蚊の安住地を破壊してはいけなかったのだろう。



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