※時々お世話になっている家庭料理の旨い居酒屋『わか葉』のお上さんの作品(刺繍)
「そういえばそうだよな~」と思い出させてもらった。それは2月9日(金)に開催された(財)宮城県地域振興センター主催のセミナー『住民主体の地域再生 地域コミュニティと協働のまちづくり』でのこと。
事例紹介者として招かれた“NPO法人ITサポートあいづ”理事兼事務局長の渡部ひろみさんが、かつて自身が書いたコラムの内容を紹介してくれた。そのくだりが、夏目漱石の代表作『草枕』の冒頭のもの。
何やかや言ったって“住みよい地域にしていくのは自分たちでしかない”ということを、渡部さんは訴えたかったのである。
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そこで、帰宅後、本棚の隅でホコリまみれの積読状態にあった本を取り出して、『草枕』を読み返してみた。やはり、名文。(文中の詩画に続くあたりから、宮澤賢治の農民芸術概論綱要を想起させるが。) 良い本は読み返してみるべき。
それもこれも、セミナーに参加したからのこと。
「そういえばそうだよな~」とは、結局のところ何でもそうだが、“自分として動かなければ自分が変わらない。世の中住みやすくなるかならないかも自分次第(認識から行動へが大事だが)。サボリに身をおいては何も得られない。機会を見つけて参加でもすれば、何かは得る。”そのことを改めて認識させられたということである。
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●夏目漱石 『草枕』 の冒頭文
山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画(え)が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。
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電子図書館青空文庫で『草枕』を読むことができます。
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