13:51 2011/03/24
http://www.remnet.jp/lecture/b03_03/4-2.html
■ 2.放射線被ばくによる甲状腺への影響
甲状腺への放射線の影響は、外部被ばくによる場合と
甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素の内部被ばくによる場合がある。
安定ヨウ素剤の予防服用は、放射性ヨウ素の内部被ばくに対してのみ
有効である。
放射線の甲状腺への外部被ばくは、
放射性ヨウ素の甲状腺への内部被ばくに比べて、
放射線の影響が厳しくなることを踏まえ、
ここでは、甲状腺への放射線の外部被ばく及び内部被ばくの知見を
考え合わせることとする。
■ 2-1 甲状腺がん
広島、長崎の原爆被災者の長期にわたる疫学調査(1)によると、
甲状腺外部被ばく後、長期間にわたり甲状腺がんの発生確率の
増加が認められている。
すなわち、被ばく者の生涯にわたる甲状腺がんの発生確率(生涯リスク)
については、甲状腺がんの発生確率は、被ばく時の年齢が20歳までは、
線量に依存して有意な増加が認められる(2)
被ばく時年齢が、40歳以上では、甲状腺がんの生涯リスクは消失し
放射線による影響とは考えられなくなる(2)
という結果が得られており、被ばく時の年齢により
甲状腺がんの発生確率が異なることが判明している。
(注)本報告では、放射線の単位である「Gy」と「Sv」については、
概念の混乱を避けるため、準拠した文献の記載どおりとした。
また、β線やγ線の放射線荷重係数を1として、1Gy=1Svとする。
広島、長崎の原爆被災者のデータに加え、
放射線治療後の患者のデータをまとめ甲状腺外部被ばくによる
甲状腺がんの発生確率を解析した結果(3)では、
以下の知見が得られている。
■・5歳未満での被ばくに比較して、10~14歳での被ばくでは、
その発生確率は5分の1に低下する。
・また、20歳以上では、1Gy以下の甲状腺被ばく後の甲状腺がんの
発生確率は極めて低い
■・若年時に被ばくした者の甲状腺がんの発生確率は、
100mGyの甲状腺被ばくでもその増加が観察される
・若年時に被ばくした者の甲状腺がんの発生確率は、
被ばく後5~9年で増加し、15~19年で最大となり、
・40年後でも発生確率は残存する
■・マーシャル諸島における核爆発実験で生じた放射性降下物による
甲状腺被ばくの影響調査(4)では、
・小児の甲状腺がんの発生確率の増加が認められている。なお、
甲状腺に集積した放射性物質としてヨウ素以外にテルルの存在が
報告されている。
・チェルノブイリ事故後の国際的調査に関して、
被調査集団の事故時の年齢が15歳未満で、
その60%は5歳未満の小児を対象とした調査では、
甲状腺内部被ばくによる甲状腺がんの発生確率は
痔有意?な増加が認められている(5,6,7,8)。
・また、チェルノブイリ原発事故当時の乳幼児に関する調査では、
事故直後の短半減期の放射性降下物による甲状腺内部被ばくによる
甲状腺がんの増加が示唆されている(8,9,10)。
■ さらに、ロシアで甲状腺内部被ばく者の
甲状腺がんの発生確率に関する調査では、
被ばく時の年齢が18歳未満の者では成人の3倍である(11)。
なお、チェルノブイリ事故では、
ヨウ素-131と甲状腺発がんリスクとの関連が報告されてきたが、
最近の別の研究では、甲状腺がんの発生にヨウ素-131以外の
放射性ヨウ素が寄与している可能性が示唆されている(12,13)。
● 上記のi)~iv)の調査より、以下の知見が得られている。
・ 放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの発生確率は、
特に乳幼児について高くなる
■ 放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの大部分は、
甲状腺濾胞細胞に由来する乳頭腺癌であり、
一般的には、悪性度が高くないため、適切な治療が行われれば、
通常の余命を全うできる
■ なお、放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんに関する
上記のいずれの調査も、
死亡に基づくものではなく罹患率に基づいて得られた解析である。
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