ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『禁断の実の美女』

2024-04-06 20:35:03 | 探偵・青春・アクションドラマ

2時間サスペンスの代表格と言うべき「土曜ワイド劇場 (テレビ朝日系列) 」にて1985年に放映された、ご存じ『江戸川乱歩の美女シリーズ』第22弾!

説明するまでもなく私立探偵「明智小五郎」が活躍するエログロナンセンス・ミステリーで、1977年から’85年までの25作品で『非情のライセンス』の天知茂さんが、次いで’86年から’90年までの6作品で『新宿警察』の北大路欣也さんが、そして’92年から’94年までの2作品で『新幹線公安官』の西郷輝彦さんが明智探偵を演じてます。

まぁしかし、我々世代(少なくとも私)にとって明智小五郎は、天知さん以外に考えられません。



このシリーズにおける明智探偵は、なにせ天知さんゆえピシッと決めたスーツ姿だけど『非情のライセンス』の会田刑事みたいなニヒリストじゃなく、けっこうお人好しなナイスガイとして描かれてます。

原作では袴姿&もしゃもしゃ頭なんだそうで、後発の「金田一耕助」に与えた影響は少なくなさそうです。


そして今回、第1作から第19作まで五十嵐めぐみさんが演じられた明智の助手=文代に扮するは、当時バラエティー番組でも活躍されてたアイドル歌手の高見知佳さん(第20作〜第23作)。

ちなみに天知茂版の最終2作では藤吉久美子さん、北大路欣也版では佐藤万里さんと高見恭子さん、西郷輝彦版では星遙子さんが同じ役を演じておられます。


ついでに書けば、明智探偵と親しい警視庁捜査一課の波越警部役は元ドリフの荒井注さんだけど、ウケを狙いすぎて演技がクサいです。

あと、大和田獏さんが初代を演じられた「小林少年」役は小野田真之という、華も無ければ演技力もまったく無い(たぶん高見知佳さんのバーターでねじ込まれた)新人俳優で、主たるレギュラーはその4人。

しかしこのシリーズにおける主役は言うまでもなく、タイトルにもなってる“美女”を中心としたゲスト女優陣。なぜなら、必ず全員がおっぱいを見せてくれるから!

いや、さすがに全員はおっぱいを出してないけど(全員がおっぱいを出してたらキリがない)、少なくともヒロインとサブヒロインには必ずシャワーシーン、あるいは官能シーンが用意され(首から下は吹替えである場合が多いけど)、乳首&おしりの見学が100%保証されてる点が好視聴率の要因だったことは誰も否定しないでしょう。そうでなきゃここでレビューする筈がない!


乱歩先生の初期を代表する短篇小説『人間椅子』をアレンジした本作でヒロインを演じ、約束どおりシャワー&官能シーンを見せてくれるのは、当時27歳の萬田久子さん。



映画じゃとっくにヌードを披露されてたのに、今回は(カット割りから見て)首から下はどうやら吹替え。主演級のスター女優がそう簡単に脱がないことは我々も分かってるのに、それでもテレビにかじりつくんだから女性の裸がどれほど偉大かって話です。女体こそ究極のアート、そして我が人生。



で、その萬田さんのヌードを我々と同じ眼差しで凝視する、物陰に潜んだ怪しい男。眼だけクローズアップするとイケメン風だけど、正体はレオナルド熊さんです。



『人間椅子』は何度となくドラマ化、映画化、舞台化もされてますからストーリーは省略します。とにかく男という生きものの実態と、その哀れさを描いた世紀の傑作!



萬田さんはただ椅子に座ってるだけなのに、中に潜んでる熊さんにとっては至福のひととき。



原作に忠実なのは恐らくこのシチュエーションのみ。だけどこれこそが全てですよね。思いつきそうで誰も思いつかないアイデアだし、もし仮に思いついたとしても本気で小説化するのは乱歩先生しかいないでしょう。



とはいえ、ヌード描写が萬田さんの吹替えだけなら私はレビューしなかった筈。

こうして手間暇かけて記事にしたのは、萬田さん扮する女流作家のアシスタント=咲子役でゲスト出演された、森田理恵さんのシャワーシーンが素晴らしすぎるから!



これぞ女優の鑑! いや、今はコンプライアンスとやらで「俳優」と呼ばなきゃいけないらしいけど、男のシャワー姿に価値などあるワケ無いから「女優」としか呼びようがない。



今回も変態事務局対策で「見えない瞬間」のみを切り取ってるけど、実際はもちろん見えてます。

森田理恵さんのプロフィールは『警視庁殺人課』#04のレビューで紹介済みゆえ省きますが、本当に素晴らしい仕事をなさってます。



ほか、小田桐かほるさん、丸山秀美さんといった当時の若手女優たちが脇を固めてますが、なぜかおっぱいは見せてくれません。



その罰が当たって小田桐さんは殺され、丸山さんもこんな凝りに凝った仕掛けで(↓)処刑されそうになるも……



そこに死んだはずのレオナルド熊が現れた! その正体は言うまでもなく……



我らが明智小五郎! なぜわざわざ変装したっ!?

変装を華麗に解くことだけが目的の変装!

まさにナンセンスの極致!

だからこそ面白い! こういうことを大真面目にやるのが真のエンターテインメント。リアリズムなんかクソ喰らえ!! 女優なんかおっぱい見せてりゃいいんだワッハッハッ!!(県知事を辞任します。)

そんなワケでセクシーショットはゲストの萬田久子さんと森田理恵さん、そしてレギュラーの高見知佳さんです。

 

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『三つ首塔』1956

2024-03-16 21:21:57 | 探偵・青春・アクションドラマ

先日、いにしえの時代劇スター・片岡千恵蔵さんが金田一耕助を演じられた1950年代の映画『獄門島(総集編)』と『三つ首塔』がCATV「東映チャンネル」で放映されました。

普通ならメジャータイトルの『獄門島』をレビューするところだけど、殿下(小野寺 昭)と山さん(露口 茂)の再共演が見られたテレビ版『三つ首塔』(’88) を最近レビューしたばかりなので、比較したくてこっち(’56年公開の東映作品)を選びました。

最大の違いは言うまでもなく、アメリカかぶれかよ!?と言いたくなる金田一探偵のスーツスタイル。



おまけに助手として白木静子(高千穂ひづる)という美女を連れ回し、恋愛関係まで匂わせてる!

これの一体どこが金田一耕助やねん!?って我々世代は思うけど、金田一が原作通りにモサモサ頭の袴姿で登場する映像作品は、石坂浩二さん主演の角川映画『犬神家の一族』(’76) が最初なんですよね。

1947年公開の『三本指の男』を起点とする金田一シリーズは、そもそも時代劇スターだった片岡千恵蔵さんのイメージチェンジを目的に創られたもので、それが人気を博して足かけ10年、全6作(この『三つ首塔』が最終作)が公開され、やはり最近レビューした高倉健さんの『悪魔の手毬唄』(’61) 等にもこういうアメリカンな作風が引き継がれたのでした。



そんなワケで、まずはキャストの比較から。


殿下バージョンで松原千明さんが演じたヒロイン=宮本乙弥に扮するは、ファミリーで出演されてた歯磨き粉(ライオン社のホワイト&ホワイト)のCMもお懐かしい、中原ひとみさん。


山さんが演じた乙弥の叔父=上杉教授役は、宇佐美淳さん。殿下バージョンではこのキャラが真犯人(たぶん原作通り)だったけど、本作では別キャラに変更されてます。


大門くぅ〜ん!の庄司永建さんが演じた弁護士役は、角川映画の金田一シリーズにもよく出られてた小沢栄太郎さん(当時のクレジットは小沢栄)。


角野卓造さんが演じた等々力警部役には、佐々木孝丸さん。


そして古尾谷雅人さんが演じたレイプ魔=自称“堀井敬三”こと高頭俊作役はなんと、のちに『太陽にほえろ!』で七曲署の2代目署長となる、南原宏治さん(当時のクレジットは南原伸二)。めっちゃ二枚目!


殿下バージョンの(つまり原作に近い)高頭俊作は、いきなり途方もない額の遺産相続人に指名されて命を狙われる乙弥を護りたい一心で、正体を隠しつつ彼女と会うたびにレイプしてたけど(なぜ!?)、千恵蔵バージョンの俊作はただニヒルを気取るだけで(それでも“なぜ?”だけど)ハレンチなことは一切してくれず、つまんないですw

そこは中原ひとみさんの……いや、たぶんBIGスター・片岡千恵蔵さんのイメージに忖度しての処置かも知れません。

あの頃のスター俳優はとにかく公明正大、清廉潔白、質実剛健、ひたすら立派でカッコいいヒーローを嫌でも演じなきゃいけなかった。だからこそのスーツ姿なんでしょう。

なにせ千恵蔵バージョンの金田一耕助は夜の繁華街で悪人たちと大立ち回り(もちろん一方的に圧勝)を繰り広げ……



おまけに美女を横に乗せてのカーチェイス!



そして当たり前のように銃撃戦!(もちろんピストルは常時携帯)



極めつけはクライマックスの謎解きシーン。なんと“三つ首塔”の神主にわざわざ変装し、一瞬でスーツスタイルに早変わり!



イメチェンの為に創ってる映画の筈なのに、ここに来て急に時代劇の“お裁き”口調。これの一体どこが金田一耕助やねんっ!? だけど、面白い!w

ファンサービスなのかご当人のワガママなのか知る由もないけど、この1シーンで片岡千恵蔵さんを好きになっちゃいました。



そうして颯爽と事件を解決させ、車掌さんの「切符拝見」も懐かしい汽車でモダンシティへと還っていく金田一耕助。

なんだかんだで結婚することになった乙弥&俊作のイチャイチャ姿を眺めながら、助手の静子さんとこんな会話を交わすのでした。



「白木くん、いい景色だねえ」

「うふふ、本当に。いい景色ですわね」

つまりこの2人もいずれは……っていう暗喩なんでしょう。これの一体どこが金田一!?って、文句言っても仕方ありません。このシリーズは横溝正史原作のミステリー映画じゃなく、あくまで片岡千恵蔵さんのアイドル映画なんだから。

そう割り切って観れば見どころ満載!

まずは、和洋中が入り混じったあの時代ならではのファッション。まるで『ブレードランナー』みたい!



’70〜’80年代の刑事ドラマでも活躍される稲葉義男さんもなにげに出演されてます。



そしてあの時代ならではの風俗。

見たことないデザインのラジオ。




COLTなのかS&Wなのか判然としないリボルバー。



レトロカーの数々。



個人的に“青春時代”を想起させる、8ミリフィルムのカメラと映写機。

一見地味だけど脱いだら凄そうな、高千穂ひづるさんのおっぱいも!


というワケで今回の締めは、高千穂ひづるさんと中原ひとみさんのブロマイド。現在の若手女優さんたちには無い“気品”を感じます。


 

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『傷だらけの天使』#19

2023-09-24 22:55:06 | 探偵・青春・アクションドラマ

そう言えば、このドラマを今までレビューしたこと無かったです。

1974年10月から翌年3月まで、日本テレビ系列の土曜夜10時枠で全26話が放映された、東宝&渡辺企画の制作による青春アクションドラマ。日本における「バディ物」ドラマのパイオニアとも云われてます。

殉職という形で『太陽にほえろ!』を降りたばかりの萩原健一さんに、同じ制作陣から言わば「卒業記念」としてプレゼントされたような企画で、俳優としてのショーケンに興味を引かれた深作欣二、恩地日出夫、神代辰巳、工藤栄一etcといった映画畑の一流監督たちが演出を引き受け、視聴率では苦戦したものの今や伝説として語り継がれてる名作中の名作。

だからショーケンさんの代表作であると同時に、その「相棒」役に抜擢された水谷豊さん(当時、もう役者を辞めるつもりだった)の大出世作としても忘れちゃいけない作品。

なのに今までレビューして来なかったのは、その楽しみ方が放映当時ガキンチョだった私にはイマイチ解らなかったから。社会の汚さや残酷さをある程度、身をもって知らないと共感しづらいドラマなんですよね。

『太陽にほえろ!』はそういった苦難を乗り越えて成長するヒーローの物語だけど、『傷だらけの天使』の主人公たちはそのタイトル通り、いつも負けて終わっちゃうから観てもカタルシスが得られない。

当時流行ったアメリカン・ニューシネマみたいなもんで、実際ショーケンさんも『真夜中のカーボーイ』あたりを強く意識されてたそうです。

今回のエピソードは水谷さんが主役だけど、まさに「負けたまま終わるドラマ」の真骨頂と言える内容で、やっぱりガキンチョ時代の私が観たらどう受け止めてよいやら戸惑ったはず。

でも、今観たら解りすぎるぐらいよく解るし、バッドエンドなのに後味は決して悪くない。むしろ、これこそ青春のリアルだよねって、こういうことを経てオレらは大人になったんだよねって、『太陽〜』とは違ったカタルシスを感じたりします。




☆第19話『街の灯に桜貝の夢を』(1975.2.8.OA/脚本=市川森一/監督=恩地日出夫)

主人公は綾部探偵社のしがない下請け調査員の、オサム=木暮 修(萩原健一)とアキラ=乾 亨(水谷 豊)。

弟分のアキラは目下、場末のキャバレーで知り合ったホステスの明美(関根恵子=現・高橋惠子)とチョメチョメな仲で、彼女の「ヒモ」になることで兄貴分のオサムと決別しようと画策中。そりゃガキンチョが観ても共感できやしませんw



そこで思いついたのが、綾部社長(岸田今日子、残念ながら今回は欠場)から無料で借りてるペントハウスを、当時流行ってた絨毯バー(アットホームに演出した個室パブ?)に改装し、ポン引きした客の相手を明美にさせ、2人でスナックを開く資金を稼ぐこと。

実はアキラ以上にお人好しなオサムは、それで2人の夢が叶うならと協力します。



今さら言うまでもなく、私がこのエピソードをレビューに選んだ理由は『太陽にほえろ!』のレギュラーだった関根恵子さんがゲストで、マカロニ&シンコの組み合わせがまた観られるから。

水谷豊さんも『太陽〜』には計4回ゲスト出演されており、ことに第30話『また若者が死んだ』ではシンコを人質に取って逃走し、マカロニと対決する犯人の役でした。



そりゃ相手が関根恵子さんだけに客はみんな喜び、ある程度の儲けにはなる。けど、自分のカノジョにコールガールまがいの仕事をさせてる罪悪感に、さすがのアキラも苦しみ始めます。



そんな折り、綾部社長のアシスタント……というより忠僕である辰巳(岸田 森)が、勝手にペントハウスを商売に使った代償として、オサムとアキラに新たな仕事を命じます。

それは、明美に大手建設会社の社長である板倉(森 幹太)を誘惑させ、チョメチョメする現場を写真に撮るというミッション。つまり不倫スキャンダルを捏造する為のハニー・トラップ。

社長の追い落としを狙う専務一派による依頼で、オサムたちにも100万円の報酬を約束するという。



主人公がそんな仕事を引き受けてしまうのが『傷だらけの天使』という作品なんです。その報酬で明美を絨毯バーから解放してあげたい!ってな心情はあるにせよ、『太陽にほえろ!』の公明正大なヒーローたちとは対極にいるキャラクター。

どっちがドラマとして面白いかは置いといて、どっちが人間のリアルを描いてるかと言えば、やっぱコッチですよね。

理想は『太陽』だけど現実は『傷だらけ』。多少デフォルメされてるにせよ人間の本質はこんなもん。そうじゃないごく一部の人だけがヒーローになれる。



ターゲットの板倉社長が5年前に女子大生だった娘を交通事故で亡くしてることを知ったオサムとアキラは、明美に女子大生の役を演じさせます。(関根さんのメガネ姿はレアかも?)

「ずいぶん汚い手を使うのね」と言いつつも、彼らと同じように現状から抜け出したい願望を持つ明美は、暴漢(を演じるアキラ)に襲われる女子大生をみごとに演じ、板倉の気を引くことに成功するのでした。



そりゃあ、こんな瞳で見つめられりゃオヤジはイチコロです。いや、もしかするとイチコロだったのは、得意の空手でアキラを一瞬でノックアウトしたセレブ社長を見つめる、明美の方だったかも?

そしてイチコロで倒されたアキラはどこまでもブザマ。天は社長に二物も三物も与え、若さだけが取り柄のアキラには何も与えない。これもまたリアル。

努力した者としなかった者の差だと人は言うだろうけど、世の中には努力する=自分を追い詰めることに生き甲斐を感じるド変態がいるんですよ!

それこそが天に与えられた「才能」だと私は思う。努力しない自分を責めてるあなた、ド変態になりたいんですか?



しかしミッションはどうやら成功し、社長が「おちる」のも時間の問題。

「考えてみりゃ男の運命なんて儚いもんだ。1代で築き上げた地位も名誉も財産も、たった1枚の写真で脆くも崩れ去る。要は権謀術策さ。叩き上げなんてのはもう流行らん。知恵だよ。最後に笑うのは知恵者だけだ」

辰巳の言い分もこれまたリアル。世の中なんてそんなもん。この歳になっても私が毎日あくせく働いてるのは、知恵が足りないからだと自覚してます。

もちろん、アキラや明美がこんな事になってるのも知恵が足りないから。だけど兄貴分のオサムには、ちょっとだけ知恵があった。

「最後に笑うのはよ、オレたちだよ」



みごと板倉社長のチョメチョメ現場をカメラに収めたオサムは、そのフィルムを辰巳に渡すんじゃなく、板倉自身に買い取らせようと画策します。そうすれば百万どころじゃ済まない値がつくだろうと。

「アニキ、最初からそのつもりだったの?」

「違うよ。おまえがあのジジイにぶっ飛ばされてからだ。いくらカラテ映画が流行ってるからってよ、なにもキザに空手なんか使うことねえじゃねーかよ」

「だけど、ヤバいよ」

「アキラ、希望は大きく持てよ。オンナを好きなようにされて、おまえ悔しくねーのか」

「そりゃ悔しいよ」

「だろ? いまどき百万で何が出来るっつーんだ。スナックやりてえんだろ?」



「……オレ、スナックもだけど、その前に所帯持つよ」

「……明美とか」

「そろそろ、マジメに身固めたいしね。オレ、結婚すんだ」

「……おまえ、よっぽど好きなんだな、あの女」

「へっ、オレってバカだからさ、きっとこんな事でも無きゃいつまでも気がつかなかったろうに」

「そうだな……ちょっと早いなって気持ちはあるけども、所帯持つっていいもんな、温かくて」

そして1本の薔薇を用意したアキラは……



「苦労させたけど、オレ所帯持ったら、ココロ入れ替えて、もう二度とあんな悲しいことさせないよ」

「アキラちゃん……なにも聞かないで、そのフィルム私にくれない? ううん、どうしてもちょうだい」

「そりゃまあ、これは明美ちゃんが写ってる写真だけど……」

そう言いかけて、アキラはふと、明美がスーツケースに自分の衣服を詰め込んでることに気づくのでした。

「どっか行く? どこ行くの?」

「……あの人のとこ……板倉さんがね、私を待ってるの」

「……へっ、まさか!」



「こんなこと言っても信じてもらえないだろうけどさ、あのヒトとっても優しくって……私、今までずっとあんなヒト探してきたような、そんな気がするの」

「騙されてんでしょう!?」

あまりに板倉社長に優しくされて、罪悪感に苛まれた明美は、実はこれがハニー・トラップであることを正直に話してしまったらしい。



「ごめんね……あの人もさ、最初はびっくりして、でもすぐに笑って、そのフィルム、こっちの言い値で買ってくれるって言うのよ。だからさ、あの人に売ってあげて」



「……惚れてる?」

「……今更こんな私が、おかしいでょ? でもさ、あのヒト神様みたいに優しくて……それに比べて私、あのヒトに何にもしてあげられなくてね……」

明美は、絨毯バーで稼いだ金の預金通帳を「これで堪忍して」とアキラに渡すんだけど、あれだけ働いて約30万しか貯まってないのがまた切ないです。

「……板倉、どこにいるの?」

「……言えないわ」

「ほらぁ、オレっていつもこうなんだよ! あんなジジイのどこがいいの!? 金持ちだから? だったらオレも一生懸命働くから!!」



「……私ね、そのフィルム渡したら、あのヒトの前から姿消すつもりよ」

「なんだよそれ、カッコつけて」

「違うわよ。バカな女だったけど可愛いヤツだったって、あのヒトにそう思って欲しくて……それだけよ!」



「じゃあオレはどうなんの?」

「あんたにはオサムちゃんがいるじゃない」

「そんなの自分勝手だよ! 男どうしで何が出来んの!? びえ〜ん!😭」

アキラ、ついに号泣。これが男のリアルですよねw

ホントこれが青春だし、これが恋愛だと思う。かくも女性はシビアなリアリストであり、弱くて知恵もない男は恋のライバルにすらなれない。

「勝手言ってごめんね……フィルムは、あんたの好きにして」



「ありがとう……本気で所帯持とうって言ってくれたの、あんたが初めてよ。嬉しかった」

結局フィルムは諦めたのに、それでも女は出ていっちゃう。ガキンチョにはこの矛盾が理解できないけど、一度でも本気で恋をした人なら解るはず。

アキラは確かに弱いし知恵もないけど、明美のことは本気で好きだったようで、ペントハウスの階段を降りた彼女の足元に、プラスチックの小さな筒が転がって来ました。



「アキラちゃん……」

いちいち解説するのは野暮だけど、もしかすると若い読者さんは見たこと無いかも知れません。アナログカメラのフィルムを収めたケースです。



そのあとフィルムを受け取りにやってきたオサムの手を握って、アキラがまた号泣。

レビューするために本作を観たちょうどその日、趣里さんが主演するNHKの次期朝ドラ『ブギウギ』の番宣が放映され、一瞬だけどヒロインが号泣するシーンが流れて、泣き方がお父さん(念のため、水谷豊さん)そっくりなのに私は感動しましたw カエルの子はカエル。そういや2人ともカエル顔かも?

さて、ことの顛末を報告しに来たオサムとアキラに、どうやら板倉建設の専務一派の企みは事前に洩れていたらしいと辰巳が告げます。



「策士、策に落ちるとはこの事だ。専務の方が逆に足をすくわれ、失脚した。こちらも骨折り損のくたびれ儲けだった。で、あの女はその後どうしてるんだ?」

「板倉社長と結婚すんじゃないの?」

「ふっ、そうか。板倉って人はそんなロマンチストなのか。怖い男だね、あの人は。知らないらしいから教えてやるけどな、2日前に箱根の山中で女の変死体が見つかった」



「手口から言ってプロの殺し屋だ。もちろん迷宮入りだろう」



「板倉って人は苦労人だからな。そのへん、やることにソツがない。昔から客に惚れる遊女はいたが、遊女に本気で惚れる客なんか滅多にいやしない。キミらも甘いな」



数日後、箱根の山中にオサムの姿が。顔を隠したいのか防寒なのか、何にせよ「ショーケン巻き」とでも呼ぶしかない俺ジナルな着こなし。


箱根に来た目的はもちろん、別荘から東京に戻る板倉を撃ち殺すこと。



だけど、同じことを考えてライフルを構えるアキラを見つけたオサムは……



自分の用意した拳銃を放り出し、夢中でアキラにタックルするのでした。

「バカヤロウッ! テメーにいつ人殺し教えたコノヤローッ!?」



「だってえーっ、だってよおーっ!! びえええ〜〜〜ん!!!😭😭😭😭😭」



オサムにしがみついて号泣する、アキラのこの上なくブザマな姿でジ・エンド。これが『傷だらけの天使』というドラマです。

2人とも殺人犯にならずに済んだのは良かったけど、明美ちゃんの末路を思えば究極のバッドエンド。

しかしそれは、世の中にはどうにもならない壁があり、触れちゃいけない闇もあることを示したメタファーなんですよね、きっと。

根っこは誰もが一度は経験する大失恋のストーリーで、だからこそ哀しくもあるけど甘酸っぱくもある。まさに青春ドラマ。

当時のショーケンさんは本当に神懸かり的な天才役者だったけど、今回に限っては水谷豊さんが素晴らしすぎました。つくづく凄い俳優さんです。もちろん関根恵子さんも!


 

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『三つ首塔』1988

2023-08-26 16:10:14 | 探偵・青春・アクションドラマ

1988年7月、テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」枠で放映された、原作=横溝正史/脚本=佐治 乾/監督=野村 孝による単発2時間ドラマ。

我らが殿下=小野寺昭 主演による「名探偵・金田一耕助」シリーズの3作目で、1作目が『真珠郎』、2作目が『仮面舞踏会』、4作目が『夜歩く』と、ほとんど映画化されてないマイナーな原作を選んでるのが本シリーズの特長。

ただし『三つ首塔』は1972年、1977年、1993年にもTVドラマ化はされており、’77年版(連ドラ)と’93年版(単発)は共に古谷一行さんが金田一探偵を演じてます。

原作が比較的マイナーなのは金田一の出番が少ないせいもあり、’72年版ドラマには金田一が登場しないとか。

それを如何にして「金田一モノ」として成立させるかが腕の見せどころで、この土曜ワイド劇場版『三つ首塔』はキャスティング、すなわち金田一耕助=七曲署の殿下であることが最大限に活かされてます。



まず、原作に準じた袴姿が殿下の場合、純白カラーという爽やかさ。本来メンズ向けの娯楽小説だった金田一モノを、女性たちにも楽しんでもらおうっていう明確な意図を感じます。

そもそも殿下は『太陽にほえろ!』で女性人気ナンバーワンを誇った人。頭を掻くたびフケを撒き散らす金田一役には本来向かない貴公子キャラなんです。

そしてメインゲストがこの人。同じ七曲署の「山さん」こと、露口 茂さんですよ!



山さんはメンズにも人気があるけど、全身がエロで出来てる女優の太地喜和子さんが「理想の男性」として名前を挙げたほどの超セクシーガイでもある。

『太陽にほえろ!』を観て育った世代がそろそろ映像業界に入り始めた時期、っていう側面もあるにせよ、殿下+山さんの組み合わせは特に女性ファンたちの琴線に触れたはず。

いきなりネタバレになるけど、山さん扮する国文学者=上杉誠也が連続殺人事件の真犯人で、’72年版では仲谷昇さん、’77年版では佐分利信さんが演じておられます。(’93年版には未登場)

さらに’72年版で島田陽子さん、’77年版で真野響子さん、’93年版で安永亜衣さんが演じられたヒロイン=音禰(おとね)役には、ちょうど本作が放映された’88年から1年間『探偵!ナイトスクープ』の初代秘書役を務められた、松原千明さん。



お馴染みキャラの等々力警部役には、若けりゃ若いほど近藤春菜に見えちゃう角野卓造さん。



山さんの顧問弁護士役には西部署から「山村くぅ〜ん!」とハイトーンボイスで駆けつけた二宮係長こと、庄司永建さん。



おまけに事件の鍵を握る謎の青年役には、私鉄沿線の97分署から駆けつけた本城刑事こと、古尾谷雅人さん。



偶然にせよ必然にせよ、とにかくレビューしないワケにいかないメンツが揃ってるワケです。

で、冒頭シーンで山さんが殿下を自宅に招き、姪っ子で養女の千明さんを「嫁にどうだい?」と切り出したもんだから、大いに照れちゃう殿下。



ヒロインと金田一にほのかなロマンスが生まれるのも殿下シリーズの特長で、その辺りにも女性視聴者への配慮を感じます。

が、そこは横溝正史原作ですから、ほのぼのした場面はここまで。千明さんの遠縁にあたる資産家が、数千億円にのぼる遺産の相続人に彼女を指名したもんだから、血で血を洗う争奪戦が勃発!

遺産を狙うライバルたちを高林由紀子さん、水原ゆう紀さん、そしてボインぼよよ〜ん!と武田久美子さんが演じておられます。



山さんに何不自由なく育てられた千明さんは遺産なんか欲しくないのに、身の周りで次々と人が殺されるわ、警察には容疑者扱いされるわ、古尾谷雅人には再三レイプされるわで、踏まれたり蹴られたり犯されたり。



ただこの、清楚で儚げな松原千明さんの苦悶顔、あるいは困惑顔が、我々の奥底にあるSっ気を絶妙に刺激してくれて本当に素晴らしい!



ああそうさ、オレは変態さ。なにが悪いっ!?💢

けど変態はオレだけじゃなかったようで、松原千明さんは次作(シリーズ第4弾)の『夜歩く女』でも再びヒロイン役に起用されてます。

それはともかく殿下は気づいてしまう。あの山さんも変態の1人だったことに!



千明さんの周りで起こった連続殺人の犯人は、彼女を護りたい一心で……というより手放したくない一心で暴走した、我らが山さんだった!

そう、山さんは姪っ子で養女の千明さんを、ひとりの異性として愛しちゃった。

ひとつ屋根の下で一緒に暮らしながら、何年も何年もチョメチョメしたくてチョメチョメしたくてチョメチョメしたくて悶々としてたワケです。山さんが悶々とチョメチョメ。姪っ子とチョメチョメ。養女とチョメチョメ。



すべての元凶となった3人の男の首が並ぶ供養塔、すなわち三つ首塔についての説明は面倒だから(と言うかよく解らんから)省略しますが、そこで山さんは武田久美子も殺すつもりだった。



けど、その寝顔が千明さんとダブってどうしても殺せなかった……っていう甘さは横溝正史らしくなく、ちょっと蛇足に感じました。これはたぶん、山さん=露口茂さんのご要望により付け足された場面だろうと推察します。

見るからに聡明で、人生の成功者だった男を狂わせてしまった、老いらくの恋。そんなあまりに人間くさい犯人像にこそ惹かれて、露口さんは出演オファーを引き受けられたんでしょう。(ただの友情出演とは思えない)



最後は例によって犯人の自害(今回は三つ首塔と共に焼死)で幕を閉じますが、それじゃ後味悪いので千明さんと古尾谷雅人の結婚がエピローグで描かれます。

この古尾谷さんもまた、実は千明さんを護るために色々動いてたらしいけど、だったらレイプなどせず最初からそう言えよ!って話だし、山さんの恋とネタが被っとるやん!とも思う。

原作から大きく改変されてるのかも知れないけど、金田一シリーズの中で『三つ首塔』がマイナーなのは、そのへんにも理由がありそうな気がします。



まあしかし、ストーリーは正直どうでもいい。とにかく殿下と山さんの再共演をレビューしたかっただけで、正和さんや健さんはその前フリに過ぎません。

あと、ナイトスクープ初代秘書=松原千明さんのセクシーショットと。(ただし3枚しか見つからず、不足分は武田久美子さんにカバーして頂きます)


 

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『悪魔の手毬唄』1961

2023-08-20 21:41:37 | 探偵・青春・アクションドラマ

映像作品で名探偵・金田一耕助を演じた俳優たちを、Wikipediaに基づき(そしてパロディや番外編的なものは除いて)列挙すると、映画版が片岡千恵蔵、岡 譲司、高津清三郎、池部 良、高倉 健、中尾 彬、石坂浩二、渥美 清、西田敏行、鹿賀丈史、豊川悦司。

テレビ版は岡 譲司、舟山裕二、金内吉男、古谷一行、愛川欽也、小野寺 昭、中井貴一、片岡鶴太郎、役所広司、上川隆也、稲垣吾郎、長谷川博己、池松壮亮、吉岡秀隆、加藤シゲアキ、といった顔ぶれ。

加えて舞台やラジオドラマも挙げていくとキリがなく、これほど多くの俳優が演じてる「架空の人物」は空前絶後かも知れません。

だからこそ、同一人物でも演じる俳優によって味わいが違ったり、ストーリーの解釈が創り手によって変わる楽しさが「金田一耕助シリーズ」の肝じゃないかと私は思ってます。

中でも『悪魔の手毬唄』を初めて映像化した東映の1961年劇場版は、究極の異色作と言えるかも?

まず、これが生涯一度きりの金田一役となった高倉健さんの、この出で立ち!



スーツ姿は片岡千恵蔵シリーズを踏襲したにせよ、グラサンにオープンカーという軽薄さは「健さん映画」として観てもかなり異色。

唯一、石坂浩二シリーズの坂口良子さんを彷彿させる、天真爛漫な旅館の女中さんだけが「金田一映画」っぽさを感じさせます。



その女中さん相手に、金田一がよく喋るんですよね! 実写版『ゴルゴ13』が「チョー無口な殺し屋を演じる健さん」を楽しめばいい映画だったように、本作も「やたらおしゃべりな健さん」を楽しむべき映画と言えそうです。

なにせ金田一のキャラだけでなくストーリーも原作とかけ離れてて、手毬唄になぞって人が殺されていく「見立て殺人」の要素すらバッサリ削除されてる!(最初の殺人シーンで偶然ラジオから手毬唄が流れるだけ)

これは監督の渡辺邦男さんがボツにしたシナリオを、脚本家の結束信二さんが原作を読まずに書き直した(!)ことによる改編で、本来ヒロインである筈の青池リカ(石坂浩二シリーズで岸惠子さんが演じた役)も登場しない!

で、その替わりに(?)金田一探偵に白木静子(北原しげみ)という美人秘書がいる!



白木静子は原作シリーズの第1作『本陣殺人事件』のみに登場するキャラだけど、片岡千恵蔵シリーズでレギュラー化され、本作にも受け継がれた模様です。

ほか、石坂浩二シリーズで若山富三郎が演じた磯川警部に、神田 隆。



ちなみに本作における金田一耕助は警視庁「嘱託」の探偵という設定。いわばフリーランスの刑事で、これはもう金田一モノであることを忘れて「若き健さんの刑事モノ」として楽しむのが得策かと思います。



入浴シーンまでサービスしてくれるし!



けど、それだけじゃない。本作では石坂浩二シリーズで永島暎子が扮した「里子」がヒロインになるんだけど、演じる若手女優(当時)の志村妙子がとってもキュート!



当時まだ高校生だった志村妙子さんは、東映ニューフェイス第6期生としてデビュー後、俳優座から文学座へと移籍され、いつしか「杉村春子の後継者」と言われるほどの大女優に成長。

その頃には芸名を「太地喜和子」と改め、本作の約11年後にゲスト出演されたTVドラマ『太陽にほえろ!』第11話では山さん(露口 茂)を誘惑しまくる悪女役で、番組屈指(おそらくナンバーワン)のお色気シーンを演じて下さいました!



「1970年代半ばには、大河ドラマ『風と雲と虹と』で共演した俳優、露口茂の名前を理想の男性として挙げていた」ってWikipediaに記されてるけど、きっかけはこの『太陽〜』第11話だったかも知れません。


 

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