ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#031

2019-02-28 12:22:12 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第31話『お母さんと呼んで』

(1973.2.16.OA/脚本=田波靖男&四十物光男/監督=澤田幸弘)

資産家の娘(青木英美)が誘拐され、身代金が要求されるんだけど、実は父親の愛情を確かめる為に娘が仕組んだ偽装誘拐だった!ってなオチ。様々な刑事ドラマでさんざん使われて来たプロットだけど、当時はまだ珍しかったかも知れません。

ただ本作の場合、それが父親の後妻(赤座美代子)の視点から描かれてるのがユニークで、ゆえに父と娘のドラマなのか、血の繋がらない母と娘のドラマなのか、焦点が定まらない欠点にも繋がってます。

見所はやっぱ、マカロニ(萩原健一)のがむしゃらアクション。今回は走行中のバス車内における乱闘、アパートの一室から階下のスナック店内へとなだれ込む乱闘と、2ラウンドの(いずれも多勢に無勢の)ファイトをたっぷり時間を割いて見せてくれます。

今回のヒロインは本来、母親役の赤座美代子さん(マカロニは歳上女性との絡みがホントに多い!)なのですが、ここでは娘役の青木英美さんに注目したいと思います。

『太陽』ファンには言うまでもなく、青木英美さんは後に七曲署捜査一係の初代マスコットガール(庶務係)=永井久美として、第53話『ジーパン刑事登場!』からレギュラー出演される事になります。

同じスタッフによる学園ドラマ『飛び出せ!青春』『われら青春!』のセクシーな女生徒=森下真樹役で知られる女優さんで、七曲署でも天真爛漫なキャラと見事な脚線美で我々を楽しませてくれました。

ファッションモデルとしても世界で活躍し、最近は舞台演劇への出演やボランティア団体の代表も務めておられます。

ルックスは好みが岐れるかも知れませんが、そのサバサバした感じは女性視聴者にも支持され、歴代マスコットガールの中でも一番キャラが立ってたように思います。
 
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『消耗品刑事/エクスペンダブル・コップ』(仮)

2019-02-28 00:00:15 | 刑事ドラマ2000年~






 
この春、とんでもない刑事ドラマがスタートする模様です。なんと今どきハードアクション物、しかもフィルム撮影による連続ドラマで、視聴率がどうであれ最低1年間は必ず続ける予定だそうです。

仮タイトルは『消耗品刑事/エクスペンダブル・コップ』。主演を務める萩原健一さんがS.スタローンの『エクスペンダブルズ』シリーズを観て刺激を受け、かつての共演者やライバル達を集めて「いっちょ派手なアクションを、是非フィルムで!」と、かつて『太陽にほえろ!』『傷だらけの天使』で組んだ岡田晋吉プロデューサーに企画を持ち込んだそうです。

勿論、普通ならそんな企画が現在のテレビ業界で通るワケが無いんだけど、大人の男性が観て楽しめる番組が皆無である現状に心を痛めていた岡田さんは、かつて『大都会』シリーズでタッグを組んだ石原プロモーションに話を持ち掛け、2年も前から粘り強く交渉を続けて来られたんだとか。

長らくヒット作が無い石原プロとしても実現させたい企画であり、東宝との共同製作を前提に話を進め、これまで封印して来た過去作品のDVDや『西部警察』写真集などを矢継ぎ早に発売する事で資金を集め、ようやく実現に辿り着いたとの経緯があったそうです。

かつての『大追跡』や『ゴリラ/警視庁捜査第8班』等の「多発する凶悪犯罪に対抗すべく設立された特殊セクション」という設定を踏襲しつつ、さらに「退職した元スゴ腕の武闘派刑事たち」が老体に鞭打ってハードアクションを展開するという新機軸が加わります。

しかも’70~’80年代の刑事ドラマで武闘派刑事を演じて来た俳優さん達が、各番組でのキャラクターそのまんまで登場するというから驚きです。例えば舘ひろしさんは『西部警察』シリーズの鳩村刑事、武田鉄矢さんは映画『刑事物語』シリーズの片山刑事といった具合。

皆さん今やベテラン俳優であり大スターでもある為、本来なら各自のギャラだけでとんでもない額になってしまうんだけど、『太陽にほえろ!』の初代新人刑事「マカロニ」役で刑事ドラマの礎を築いたショーケンさんから直々のオファーを受け、渋々ながら(?)格安のギャラで出演を引き受けたんだそうです。

以下、ずらり揃った超豪華レギュラーキャストとキャラクターをご紹介します。本当に夢のような、奇跡のキャスティングです。


☆沖田淳一(萩原健一)

元・神奈川県警港街署失踪人課勤務。凶悪犯を制圧する為なら手段を選ばないアンチヒーローぶりが、かつてのマカロニ・ウェスタン映画の主人公みたいという事で、犯罪者たちから「マカロニ野郎」と噂され、彼が率いる退職刑事チームも「マカロニ軍団」と恐れられている。

『太陽~』のマカロニ刑事は殉職してる為『あいつはトラブル』で演じた「沖田課長」のキャラクターが採用された模様です。そもそも、この沖田は「もしマカロニが死なずに刑事を続けていたら……」という発想で創造された人物ですから、実質的にはやっぱマカロニ刑事なんですよね。

なお、沖田の妻=伸子(元・警視庁七曲署勤務)として、高橋惠子さんもセミレギュラー出演される模様です。


☆片山 元(武田鉄矢)

様々な地方警察署を渡り歩いて来た経歴から「ジプシー」と呼ばれる事を強く望んでいるが、他のメンバー全員から却下されて落ち込む、見かけはしょぼくれた老刑事。

ところが一旦怒りに火が点くと、ジャッキーも真っ青なカンフー技で敵を打ちのめす暴力刑事に変貌。ハンガー等の日用品を武器にして「僕は死にまっしぇーん!!」と叫びながら説教を垂れる、厄介な男。


☆牧野次郎(寺尾 聰)

元・警視庁城西署勤務。クールかつシャープな捜査を信条とし、レイバンのサングラスがよく似合うセクシー・ガイ。愛銃はもちろんマグナム44。

『西部警察』の「リキ」は殉職してる為、寺尾さんは『大都会 PART III』の「ジロー」として参戦。『太陽にほえろ!PART2』の喜多刑事も捨てがたいけど、武闘派となればやっぱこちらですね。


☆鳩村英次(舘ひろし)

元・警視庁西部署勤務。銃の構え方、バイクの乗り方、煙草の吸い方など、一挙手一投足で格好つけずにいられないナルシスト刑事。マカロニ軍団に所属しながら、なぜか沖田を「団長」と呼ぶ事を頑なに拒んでいる。

かつては自ら「鳩村軍団」を立ち上げたものの、全く育ってくれない若手たちに愛想を尽かし、解散を決意した経緯がある。

一体いくつ刑事キャラクターを演じて来られたのか数え切れない舘さんですが、西部警察メンバーを代表する意味で「ハト」が選ばれたみたいです。


☆大下勇次(柴田恭兵)

元・神奈川県警港署勤務。最もスタイリッシュで最も俊敏で、最も口数が多い自称「セクシー大下」。鳩村とは初めて会った気がしない。

恭兵さんにも『大追跡』や『はみだし刑事情熱系』等がありますが、代表作と言えばやはり『あぶない刑事』って事になるのでしょう。


☆本城慎太郎(水谷 豊)

元・警視庁代官署勤務。変装技を駆使した潜入捜査が得意で、犯人逮捕の際には必ずプロレス技を使う等、定石に囚われない柔軟さが光る男。なぜか彼だけ沖田の事を「アニキ」と呼んでいる。

水谷さんは『刑事貴族2~3』のキャラクターで登場です。『相棒』と掛け持ちというハードスケジュールながら、出世作『傷だらけの天使』で相棒役に推してくれたショーケンさんへの感謝を込めて、友情出演となった模様です。


☆草野泰明(倉田保昭)

元・警視庁Gメン本部勤務。カンフーの達人ながら、本人は頑なに「これはカラテだ」と言い張っている。どうやら実は中国人で、日中関係の悪化を気に病み、出生は秘密にしているらしい。

倉田さんは勿論『Gメン’75』のキャラクターで、香港ロケを自らコーディネートされる程の熱の入れようなんだとか。未確認情報ですが、親交のあるジャッキー・チェン氏がゲスト出演を引き受けた模様です。


☆桜井哲夫(藤岡 弘、)

元・警視庁特命課勤務。情け容赦ない非情な捜査が信条で、あまりの冷徹ぶりに他のメンバー達から「実は改造人間なのでは?」と噂される程の凄腕ながら、由美かおるのオッパイを見ると途端に弱くなる。愛車の名は「サイクロン」。

藤岡さんは『特捜最前線』のキャラクターですね。鉄矢さんや恭兵さんと絡んだら一体どんな化学反応が起きる事やらw、私としては一番楽しみなキャストです。


☆野々村光太郎(竜 雷太)

元・警視庁公安部公安第五課勤務。普段は温厚な佇まいながら、実は射撃の名手で柔道の段を持つ猛者。怒らせて一番恐ろしいのは、実はこの人である。

沖田の事を「マカロニ」と呼び捨てに出来る唯一の人物でもあり、沖田もなぜか「ゴリさん」と呼んで慕っている。西部署の大門団長と木暮課長みたいな関係である。

ホンモノのゴリさんは殉職してるので、竜さんは『ケイゾク』と『SPEC』で演じた偽ゴリさん=野々村係長として登場。それによって最近の刑事ドラマとのリンクも可能になり、早くも中谷美紀、戸田恵梨香、渡部篤郎、加瀬 亮らのゲスト出演が内定済みとの事。


☆倉本 省(渡 哲也)

元・警視庁捜査第8班勤務。寡黙で礼儀正しい男だが、実は爆破のエキスパートで、日本各地の建造物や乗り物を意味も無く破壊し尽くした暗い過去がある。

現在は沖田らが溜まる居酒屋のマスターをしているが、いざマカロニ軍団がピンチに陥った際には、どこからともなくヘリをチャーターし、上空からショットガンで敵を皆殺しにする狂人ぶりを発揮する。

『西部警察 PART III』最終回で殉職した筈の大門くぅ~んを、後年の復活スペシャルでシレッと生き返らせるという、ドラマ制作者として一番やってはいけない事をしでかした過去を深く反省し、渡さんは団長ではなく『ゴリラ』のキャラクターで登場する事になりました。

ほか、マカロニ軍団を密かにバックアップする警視総監に伊東四朗、現場の捜査員を虫ケラみたいに扱う悪辣なキャリア官僚に織田裕二が扮し、女性初のSAT隊員=黒木メイサが毎回、必然性なくオッパイを見せてくれます。

3時間スペシャルとなる初回は、メインゲストに渡瀬恒彦(CG)を迎え、梅宮辰夫、片桐竜次、志賀 勝、中西良太らと「ネオ・ジャパンマフィア」を結成し、マカロニ軍団と死闘を繰り広げます。クライマックスは勿論、哲也vs恒彦の壮絶なる罵り合い!

その初回で早速、鳩村刑事が殉職するそうで、舘ひろしさんがインタビューでこんなコメントをされてました。

「大丈夫、しばらくしたら鷹山として復帰するから(笑)。前例があるもんね。刑事役のストックならいっぱいあるから、何回でも復帰出来ちゃう。どのキャラでも芝居は一緒だろ? OKベイビー」

これはあながちジョークでもなくて、売れっ子ベテラン俳優たちを長期に渡って拘束するには限界がある為、レギュラー刑事を月に1人のペースで殉職させていくプランがあるようです。

そのつど新メンバーを投入する事によってマンネリ化を防ぐ狙いもあり、既に神田正輝(太陽にほえろ!)、藤 竜也(大追跡)、草刈正雄(華麗なる刑事)、国広富之(トミーとマツ)、中村雅俊(誇りの報酬)、勝野 洋(ジャングル)、世良公則(ベイシティ刑事)、三浦友和(スーパーコップ)、苅谷俊介(西部警察)、横谷雄二(俺たちは天使だ!)らの順次レギュラー入りが決定してる模様です。

そして第2話以降のゲスト俳優も、現在はもっぱら善人役に甘んじてる小林稔侍、石橋漣司、森本レオ、風間杜夫、平泉 成、西岡徳馬、内藤剛志、遠藤憲一らが続々と悪役復帰し、水を得た魚のように人殺しや強姦を繰り広げる予定だそうです。

テーマ音楽は勿論、ショーケンさんの盟友である大野克夫さんが担当しますが、エンディング主題歌のみ杉良太郎さんが担当し、かつての名曲のアンサーソング『俺は君のためには死なない』を熱唱されます。

日テレ・東宝・石原プロの共同製作で、放映日時はもちろん金曜夜8時!

更に深夜枠の新番組として、山村警部補(露口 茂)、立花警部(若林 豪)、古畑警部補(田村正和)、杉下警部(水谷 豊)ら渋すぎるメンツが、驚異的な推理力で数々の難事件をあっと言う間に解決しちゃう、10分間のミニドラマ『全員、警部か警部補』も同時にスタート!

そして『消耗品刑事』の姉妹番組として、火曜夜9時から天海祐希(BOSS)、米倉涼子(交渉人)、篠原涼子(アンフェア)、中谷美紀(ケイゾク)、宮崎あおい(ケータイ刑事)、多部未華子(デカワンコ)、上戸 彩(絶対零度)らがレギュラー出演する『七人の女刑事』もスタート。女性初のSAT隊員に扮する黒木メイサが毎回、必然性なく全裸ヌードを披露します。

……とまぁ、ここまで書けば、もはや信じてくれる人は誰もいませんよねw 最初はうっかり真に受けちゃった方でも、鉄矢さんの「僕は死にまっしぇーん!」辺りで気づかれた事と思いますw

言うまでもなく、上に書いた事は全て私の妄想であり、勝手な願望に過ぎませんm(_ _)m

だけど、このレベルの妄想を本当に形にしちゃったのがスタローンの『エクスペンダブルズ』なんですよね。本気でやっちゃう人が現実におられるんです。

だから日本でもやってやれない事は…… まぁ、100%無理でしょうw よしんば出来たとしても、喜ぶのは一部のマニアだけですから商売になりません。だけどもし万が一、素晴らしい創り手の方々が実現させてくれた暁には、私が責任を持ってDVDーBOXを2個ほど買わせて頂きますm(_ _)m
 
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『あいつがトラブル』#01―2

2019-02-27 12:00:22 | 刑事ドラマ'80年代









 
お互い刑事で、同じ犯人を追ってると判って、新宿署の沖田(萩原健一)と港街署の美咲(南野陽子)は手を組む事になりました。

2人が追うのは、新宿署管内で現金輸送車を襲撃し、3億5千万円を強奪した上に3人も殺して逃走中の凶悪犯=氷室(又野誠治)。2人は氷室の元恋人=麻由美(相楽晴子)が住むマンションを張り込みます。

「沖田さん。いつもこんな無茶してるんですか?」

「氷室だけは別だ。アイツだけは必ず俺の手で逮捕する」

「どうしてです?」

「……お前こそどうして署に戻らない?」

「このまま戻ったらクビになるに決まってるもん」

「よく刑事になれたな」

「射撃の選手だったんで優遇されたんです。オリンピックの候補に決まってたんだけど、プレッシャーに弱くて結局モノにならなくて……」

「刑事には向いてねえな」

「分かってます。でも、このままじゃ負け犬みたいだし、一生後悔しそうだし……どうせなら1人ぐらい犯人逮捕して、自信つけたいなって…… 沖田さん?」

「黙ってろ」

麻由美の部屋の電話に着信があり、沖田はそれを盗聴してるのでした。もちろん違法捜査ですw ちなみに当時はまだ携帯電話が普及してません。

電話はやはり氷室からでした。「これからそっちへ行く」との用件ですが、なぜか麻由美は異常に怯えてます。

そしていよいよ氷室が登場するワケですが、演じる又野誠治さんの圧倒的な存在感と貫禄たるや、とても20代の若者とは思えませんw(当時29歳)

『太陽にほえろ!』のブルース刑事役でデビューし、番組終了後はもっぱら悪役ゲストが多かった又野さんですが、2003年の映画『GUN CRAZY Episode4/用心棒の鎮魂歌』ではヒロイン(加藤夏希)に力を貸す用心棒チームのリーダーという、ヒロイックな役を演じておられました。

私はその映画の撮影に参加してましたので、又野さんのヒーロー演技&アクションを間近で見られて本当に幸せでした。ところが翌年、又野さんは自殺しちゃいます。

『あいつがトラブル』はアクション物ファンにウケたものの視聴率は奮わず、同時期の石原プロ作品『ゴリラ/警視庁捜査第8班』(本作にも又野さんがゲスト出演)も途中から地味な人間ドラマに路線変更しちゃう等、役者としてこれからって時に、アクションドラマが絶滅しちゃったんですよねぇ……合掌。

氷室は麻由美の部屋を訪ね、ごっつい手で彼女の首を絞めるのですが、駆けつけた沖田に気づいて逃走します。氷室は麻由美を殺すつもりだったのか? それとも……?

沖田は氷室を追い詰めますが、肝心なところで美咲が氷室に捕まっちゃいます。

「銃を捨てろ! この女殺すぞオラァ!!」

「……勝手にしろ」

沖田は愛銃コルト・ガバメントを氷室に向けます。決して命中精度の良い拳銃とは思えないけど、命中させる気が無い沖田には関係ありませんw

「分かった!」

全くひるまない氷室を見て、仕方なく沖田はガバメントを投げ捨てます。

「沖田さん……」

「馬鹿野郎っ! どこまで邪魔すりゃ気が済むんだ!?」

沖田は美咲を巻き込まないよう手錠で繋いでおいたのに、彼女はヘアピンを鍵代わりに手錠を外し、氷室に捕まった挙げ句に愛銃デベルカスタムを奪われた=敵に武器を提供しちゃったワケです。

「おいっ! 麻由美を連れて来い! この女は人質だ!」

そんな氷室の要求に対して、沖田は人質の交換を要求します。自分が美咲の代わりに人質になると言うのです。

「俺は心臓が悪いんだ。医者から激しい運動はするなと言われてる。麻由美を連れて来ることは出来ない」

沖田が心臓を患ってるのはどうやら事実で、走ったり興奮したりする度に左胸を手で押さえる姿が描かれてます。でもそれだけで、ストーリーにはあまり活かされてなかった気がしますw

「そのコが代わりに連れて来る。もし連れて来れなかったら俺を殺せ!」

「イヤよそんなの! そんなムチャな約束守れないわ!」

「どうする氷室?」

「沖田さん!」

「……デカなんだろ、お前」

「…………」

氷室は沖田の要求を呑み、美咲を解放します。そうなれば氷室を罠に嵌める事が可能になり、沖田もそれを狙ってたみたいだけど、美咲はバカ正直に麻由美が療養中の病院へと向かいます。

たまたまかも知れませんが、この展開は『太陽にほえろ!』初期(マカロニ編)の名作『危険な約束』(第36話、市川森一脚本)とよく似てます。沖田は「もしマカロニが生きていたら」っていうキャラ設定ですから、意図的にマカロニ編を再現した可能性も充分に考えられます。

病院では港街署の城野(織田裕二)と虎田(宍戸 開)が麻由美のガードに就いており、怪しい物音に気づいた2人は病室に飛び込みます。

「美咲?」

「何やってんだ、お前?」

病室の窓から忍び込んだ美咲でしたがアッサリ見つかり、2人に事情を話します。そして城野に拳銃を貸してくれるよう頼むのですが……

「条件がある。俺も手伝うぞ」

現在のリアリティ優先のドラマ創りだと、こんな脚本を書いたら「有り得ない」の一言で却下されそうだけど、こういう友情の描き方が出来ない時代って、なんだか寂しいですよね。

「……ありがとう」

「だっ、駄目だ、俺は絶対そんな事やらんぞ。もうすぐ刑事課に転属出来る、大事な時だからな!」

制服巡査の虎田は、刑事課に欠員が出たら即、私服刑事に昇格する予定なのです。

「何だよ、もうすぐって?」

「お前が美咲の手伝いをすれば間違いなくクビだから」

「お前なあ!」

「とにかく絶対俺はやらんからな! 警察官としての誇りがあるんだっ!」

絶対協力しない!って言い張ってた張本人が、あっさり次の場面で協力しちゃってるのは伝統的古典ギャグですw

それにしても、なぜ氷室は警察に捕まる危険を冒してまで、麻由美に執着するのか? 氷室と2人きりになった沖田は、強奪した3億5千万円を麻由美が隠し持ってるんじゃないか?とカマをかけます。

「図星か。オメエみたいな血の通ってない人間は、女に執着するなんて事はねえからな。人の命なんか何とも思っちゃいねえんだ」

「説教垂れるんならな、逮捕してからにしたらどうだよ」

「俺はお前を逮捕しに来たんじゃない……ハジきに来たんだ。お前が新宿で殺したデカな……あいつは、俺の相棒だったんだ」

「ハジきに来た」っていうのは多分「撃ち殺しに来た」って意味でしょう。それにしても『太陽にほえろ!』の礎を築いたマカロニ刑事と、終盤を支えたブルース刑事の、最初で最後のツーショット。『太陽』マニアとしては感慨深いものがあります。

一方、美咲らは看護師や医師に変装し、麻由美を病室から連れ出します。このナース姿も含め、ナンノさんは初回だけで5種類のコスチュームを披露されてます。マメなお着替えはヒロイン物のお約束ですね。

ついでに言うと、ドクターに化けた織田裕二さんは『振り返れば奴がいる』の悪徳医師そのまんまですw

「あなたの安全は守るわ。ね、協力して? あなただって氷室が逮捕されない限り安心出来ないでしょ?」

麻由美を救急車に乗せ、氷室の逮捕に協力することを依頼する美咲ですが、予想外の答えが返って来ます。

「逮捕したって安心出来ないわ。氷室を殺してよ。どうせアイツは死刑になるんだから」

「麻由美さん……」

「協力しないわよ。殺してくれないなら」

言うまでもなく、氷室が死んでくれさえすれば、3億5千万円は麻由美の独り占めです。麻由美の部屋で氷室が首を絞めたのは、彼女が隠した金の在処を聞き出す為だったのでしょう。

しかし、麻由美の協力が得られないとなると、人質にされた沖田の生命が危うくなります。このピンチを美咲はどう切り抜けるのか?

一方、沖田自身は美咲に助けてもらう気など最初から無かった模様です。

「まぁ、普通のデカだったら麻由美を連れて来るような事はしねえわな。デカが人質なんだから、犯人逮捕が優先だ。残念だったな」

「残念はどっちだ?」

そう、誠に残念ながら、美咲たちはバカ正直にやって来てしまったのでした。かつてのマカロニ刑事みたいに。

救急車から、ロングコートに帽子というハードボイルドな出で立ちの麻由美(?)が降り立ち、氷室が立てこもる廃屋へと近づいて来ます。(?)なんて書いちゃうとオチがバレバレなんだけどw、嘘を書くワケには行きません。

ところが番組スタッフは大嘘つきでw、この場面の途中まで(その女が麻由美じゃなく美咲である事が判明する直前まで)相楽晴子さんに演じさせるという、大胆不敵なミスリードをやってくれてます。

氷室が沖田を盾にしながら外に出て来ると、歩く麻由美(実は美咲)のコートのポケットが、まるで冴羽 僚(シティハンター)の股間みたいにモッコリして来ますw

「!?」

異変を感じた氷室が、ようやく女の正体が美咲である事に気づき、とっさに銃口を向けます。と同時に美咲のモッコリが火を吹いた!

彼女は城野から借りたコルト・ローマンを、コートのポケットに入れたまま撃って、みごと氷室の右肩を射抜いたのでした。いくら射撃のオリンピック候補でも不可能だろうとは思いますがw

地面に落ちたデベルカスタムを拾おうとする氷室ですが、その手を沖田が思いっきり踏みつけます。ショーケンさんは手加減を知らない人ですからw、踏まれた又野さんは相当痛かった筈です。

今度は沖田がデベルカスタムを手にし、その銃口を氷室の口に突っ込みます。いよいよ相棒の仇を討つ時が来たのです。

「撃たないで! 私の拳銃で人殺しなんかしないでっ!」

美咲の悲痛な叫びを聞いて、沖田の動きが止まります。その拳銃を殺人に使ってしまったら、美咲の刑事生命は確実に絶たれてしまう事でしょう。

「……沖田さん?」

沖田は振り返り、若い刑事たちに向かって怒鳴ります。

「なに見てんだ!? 早く逮捕しろっ!!」

かくして氷室は無事に逮捕され、隠された3億5千万円も回収されたのですが、沖田は勝手な単独捜査&違法捜査の責任を取り、新宿署を依願退職するのでした。

そんな沖田を、港街署の水原署長(橋爪 功)は、新設された「失踪人課」の課長に任命します。

「勘弁して下さいよ。新宿に帰して下さい。俺は横浜が大嫌いだ」

「大嫌いは結構だけども、デカやれんの此処だけだぞ。辞められんのかよ、デカを?」

「…………」

もちろん刑事課の金子課長(伊武雅刀)は顔を真っ赤にして反対しますが、署長はいつも通り聞き流しますw

「心配しなさんなって。課長になりゃ変わるよ、沖田君だって」

辞める覚悟を決めてたのは沖田だけじゃありません。美咲も城野も虎田も、どうやらハミダシ者が大好物らしい水原署長に拾われ、失踪人課への異動が決まりました。

「……冗談じゃないよ」

色んな意味で不本意な沖田課長ですが、刑事を続ける為には受け入れるしかありません。

かくして、日本警察においては初となる「失踪人課」がここに誕生。沖田は美咲たちから「代表」と呼ばれる事になるのでした。

……とまあ、ドラマがあるような無いようなw、とにかくノリだけで突っ走り、オシャレさで魅せるのが'80年代後期アクションドラマの特徴なんですね。

そこに感動は無いし、何の余韻も残らないんだけど、とにかく観てる時間が楽しけりゃそれでいいじゃん!っていう姿勢。まさにバブル時代の産物であり、放映局=フジテレビの当時を象徴するような作品だったと思います。
 
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『あいつがトラブル』#01―1

2019-02-27 00:00:06 | 刑事ドラマ'80年代









 
☆VOL.1『こんな刑事いる!?』

(1989.12.2.OA/脚本=大川俊道/監督=一倉治雄)

「神奈川県警・港街署の美咲令子。動いたら容赦なく撃つわよ!」

真っ赤なパーティードレスに身を包み、バッチリよそ行きメイクを決めた美咲令子(南野陽子)が、鏡に向かって拳銃を構え、決め台詞を練習する場面からドラマは幕を開けます。

「ヘマしないわよ、今日こそ」

彼女が愛用するのは、S&W・M39デベルカスタムという中型オートマチック拳銃。グリップの一部がスケルトンになってて、弾倉を抜かなくても弾丸の残数が一目で確認出来るスペシャル仕様です。

新米刑事(しかもこの時点じゃ少年係所属)の彼女が、なんでこんなマニアックな拳銃を所持してるのか、説明は一切ありませんw

確かなのは1つだけ。脚本の大川俊道さん&銃器特殊効果のBIG SHOTさんという『クライムハンター』チーム(つまり好き者集団)が再結集した作品なんだって事ですね。

美咲はとある事件の犯人を逮捕すべく、カフェバーで開催されるパーティーに潜入しようとしてるワケですが、それを知った港街署の捜査課長=金子(伊武雅刀)は署長の水原(橋爪 功)に猛抗議します。

「いや、すまんなぁ。本人が是非にと志願したもんだからね」

「これは模擬訓練じゃないんですよ? 相手は警視庁が手に負えなかった凶悪犯なんですから!」

「分かっとるよ、そういう事は」

「いいですか? 美咲に出来るのは、動かない標的を撃つ事だけなんです。そりゃ射撃の腕は一流でも、刑事としては全く無能なんです!」

「その汚名を返上しようと、本人もね、一生懸命なんだから」

「あいつが一生懸命になればなるほど、必ずトラブルが起こるんです、必ず! 不吉なこと言わないで下さいよ」

主人公たちを目の敵にする上司が伊武雅刀さん、フォローする上司が橋爪功さんってなワケですが、お2人ともめっちゃ若い! 特に伊武さんのギラつき方はハンパじゃありませんw(ただし頭髪は既にレッドカードです)

美咲が捕まえようとしてるのは、新宿署管内で現金輸送車を襲撃、現金3億5千万円を強奪した上に警備員や警察官らを射殺し、横浜方面に逃走中のチョー凶悪犯=氷室修二(又野誠治、当時のクレジットは又野成治)。

繰り返しますが、美咲は少年係の刑事なんですw 細かいリアリティは気にせず、面白さ最優先のドラマ創りが出来た最後の時代ですよね。

美咲が潜入するパーティーは、氷室の元恋人=高野麻由美(相楽晴子)がウェイトレスを務めるカフェバーで開催されてるのでした。氷室が横浜に向かった目的は彼女しか考えられないってワケです。

すると仮面姿の大男が拳銃(実はパーティーグッズ)を持って登場したもんだから、美咲はここぞ!とばかりにデベルカスタムを構えます。

「警察よ、動かないで!」

ところが、その仮面と拳銃は余興のアトラクションだった。そうとは知らず大声で警察を名乗った美咲を見て、麻由美は逃走します。

麻由美を演じる相楽晴子さんは、ナンノさんを一躍メジャーにしたドラマ『スケバン刑事 II/少女鉄仮面伝説』に「ビー玉のお京」としてレギュラー出演されてました。

今回のゲスト出演は『スケバン刑事』ファンへのサービスと思われますが、もしかすると「美咲令子と容姿がよく似てる」っていう設定条件に合ったのが、たまたま相楽さんだっただけかも知れません。(ナンノさんが役作りの為に髪をバッサリ切ったら、相楽さんと同じ髪型になっちゃった)

「ああ、クビだわ今度こそ」

必死で麻由美を追いかけるも波止場で見失い、焦る美咲に何者かが拳銃を突きつけて来ます。

「高野麻由美だな」

その男こそ、後に美咲の上司となる沖田淳一(萩原健一)なんだけど、現時点ではお互いの顔を知りません。沖田は美咲を麻由美だと思い込んでるみたいです。

「氷室の仲間だ。心配すんな、助けに来た」

実は新宿署の刑事である沖田も、氷室を捕まえる為の潜入捜査をしてるのでした。

そこに、港街署捜査課の熱血刑事=城野 裕(織田裕二)が覆面パトカーで駆けつけます。やはり氷室を逮捕すべく麻由美を追って来たワケですが、彼の眼には美咲が中年の悪党に襲われてるようにしか見えません。

「美咲っ!?」

ここは沖田としても(潜入捜査がバレないよう)悪党を演じきるしか無く、美咲を車に押し込み、銃を向けて運転させます。かくしてカーチェイスが始まりますが、城野の覆面車は駆けつけた警邏課のパトカーと激突しちゃいます。

「馬鹿野郎っ!」

「何が馬鹿野郎だ! 刑事課だからってでけえツラすんじゃねえぞっ!」

城野に怒鳴り返したのは、制服巡査の虎田 猛(宍戸 開)。刑事課への昇格が半分決まっていながら、今は欠員が出るまで順番待ちの身分です。

「テメエの相手なんかしてるヒマねえんだ! 美咲がヤバい」

「なにっ?」

城野も虎田も港街署勤務ゆえ、美咲とは顔見知りで憎からず思ってる様子。虎田が城野の覆面車に乗り込み、2人で沖田の車を追跡します。

「この先は海だ。袋のネズミってワケだ、ハハハ!」

運転免許取りたての美咲が、あわや車ごと海に突っ込もうとするもんだから、助手席の沖田が慌ててハンドルを握り、車をスピンターンさせます。

「アクセル踏め! 踏みっぱなしにしてろっ!!」

そのまま走れば、追って来た城野の覆面車と正面衝突する事になりますが、沖田は構わず美咲に突っ込ませます。

「何が袋のネズミだ!?」

「よけろバカ!!」

結局、激突寸前に城野が急ハンドルを切って覆面車を横転させる羽目になり、沖田の車はそのまま走り去って行くのでした。

「よけやがって、臆病者が!」

「テメエがよけろって言ったんじゃねえか!」

この城野&虎田の若手コンビも、やがて美咲と一緒に沖田の下で働く事になります。

2人ともやっぱ若いんだけど、宍戸開さんが近年お父上(宍戸錠さん)そっくりに老けて来られたのに対して、織田裕二さんの容姿はほとんど変わってないのはさすがです。

さて、沖田は町外れのモーテルに美咲を連れ込み、目立たない服装に着替えるよう指示するのですが……

「動かないで!」

着替えを見物するワケにも行かず、沖田が眼を逸らしたスキを逃さず、美咲がデベルカスタムを構えます。

「何の真似だ?」

「神奈川県警・港街署の美咲令子。動いたら容赦なく撃つわよ!」

朝、鏡の前で練習して来た甲斐がありましたw

「あいつがデカですって?」

一方、署に戻った城野&虎田は、水原署長から沖田の正体を聞かされ、目が点になります。

「ああ、沖田淳一つってな。ま、信じられんかも知れんが、新宿署の捜査一課のデカだ」

「信じられませんよ、あんなムチャクチャな野郎がデカだなんて!」

署長もかつて新宿署に勤め、沖田と同僚だった時期があるのでした。

「まぁ沖田は当時新米で、かなりムチャクチャな事やったもんだけど」

「今でもメチャクチャじゃないスか!」

「そうですよ、まともなデカがどうして美咲を誘拐しなくちゃならないんですか!」

沖田淳一のキャラクターは、新宿・七曲署の早見 淳……すなわち『太陽にほえろ!』の初代新人刑事=マカロニ(萩原健一)の20年後をイメージして造形されたそうです。

『太陽』降板後は刑事役を避けて来たショーケンさんですが、中年(当時40歳)になってそろそろ刑事アクションに返り咲きたいと思ってた矢先に、この『あいつがトラブル』のオファーが来たんだそうです。

それだけに『太陽』マニアの私としても本作には注目しましたし、マカロニ刑事の頃と変わんないメチャクチャな拳銃の撃ち方が嬉しかったですw 署長役も竜 雷太さんか小野寺 昭さん(つまり七曲署OB)に演じて欲しかったですね。

それはさておき、新宿署は沖田の行動を一切関知しないと通達して来たらしく、恐らく彼に帰る職場はありません。

「沖田のヤツ、どうやらクビを覚悟で氷室を追ってるらしい……」

署長と同じく、かつて新宿署で沖田の同僚でありつつ犬猿の仲だった金子課長は、非情にも沖田の逮捕を部下たちに指示しますが、美咲を人質に取るフリをした沖田は、まんまと捜査網を突破。もちろん、それは美咲の協力があればこそ。

「美咲もやるもんだね、けっこう」

なぜか美咲に……と言うよりハミダシ者に甘い水原署長に、典型的なサラリーマン刑事である金子課長が、また食ってかかります。

「なに感心してるんですか? トラブルメーカーが2人一緒にいるんですよ!?」

「沖田も新米の相棒が一緒だったらあまり無茶やらんだろう」

「署長……そんな呑気なこと言わないで下さい。あの2人は、針の動き出した時限爆弾みたいなもんなんですよ?」

「そっか。あの2人、結構うまくいくかも知れんなぁ」

「署長ーっ!?」

金子課長がイライラする気持ち、解らなくもありませんw 規則に従って実直に働いてる者からすれば、好き勝手を許容されてるライバルの存在って、そりゃあ目障りに決まってます。

ましてや、針の動き出した時限爆弾が2つ、拳銃片手に街を暴走してるワケですから。氷室の運命やいかに!?w

(つづく)
 
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『あいつがトラブル』1989~1990

2019-02-26 12:00:20 | 刑事ドラマ HISTORY








 
1989年12月から’90年3月にかけて全15話が放映された、フジテレビ系列の刑事ドラマです。

放映枠は土曜夜8時、なんと『オレたちひょうきん族』の後番組です。フジテレビがフィルム撮りのアクションドラマに取り組むのは8年ぶりだったそうで(そして恐らく最後の作品)、勢いがあった当時のフジらしい大胆な編成ですね。

先行の『あきれた刑事』も『ベイシティ刑事』も『ゴリラ/警視庁捜査第8班』も視聴率は振るわず、その一方で人情系の『はぐれ刑事純情派』がヒットしてしまい、アクション系のドラマが枯れ果てつつある時期での登場ですから、私も含めて好き者どもは大注目でした。

しかも『スケバン刑事』出身の南野陽子と『太陽にほえろ!』出身の萩原健一がダブル主演!って事ですからね。

人気絶頂でありつつ相当なバッシングも受けてた当時のナンノさんは、初めての正統な刑事役だったし、ショーケンさんも「マカロニ」が殉職して以来17年ぶりの刑事役でした。

横浜・港街署に新設された「失踪人課」の、トラブルメーカーな課長=沖田淳一(部下たちは『代表』と呼ぶ)がショーケンさんで、トラブルメーカーな新米刑事=美咲令子がナンノさん。

さらに、まだカンチ君も青島刑事も演じてない新人時代の織田裕二、同じくデビューして間もない宍戸 開がイキのいい若手刑事として加わります。

ほか、沖田をフォローする署長に橋爪 功、目の敵にする刑事課課長に伊武雅刀、情報屋に寺田 農といった面子。あの頃はみんな若かった!

ちなみに第1話のゲストは又野誠治さん(マカロニとブルースの競演!)と相楽晴子さん(スケバン刑事コンビ再共演!)でした。

メインライターは『太陽~』出身の大川俊道さん。そして銃器特殊効果で『あぶない刑事』『ベイシティ刑事』のBIG SHOTさんが参加されてます。

横浜が舞台のアクション物と言えば『プロハンター』『あぶない刑事』等のセントラル・アーツ作品を連想しますが、本作はキティ・フィルム社の制作。セントラルの作品は作風が自由奔放すぎて、私の生理にはイマイチ合いません。その点、本作はユーモアを交えながらも決して脱線しないのが心地良いです。この辺りは人によって感じ方が違うと思いますが……

もしかすると一般的な眼で観れば本作は、シリアスさも弾けっぷりも適度に足らない、中途半端な印象だったかも知れません。視聴率は振るわず、途中からうじきつよし氏が投入される等のテコ入れがありました。

廃れつつあったアクション撮影にも手を抜かない姿勢や、マニアックな銃器描写はコアなファンの間で高く評価されたものの、大方の視聴者にはイマイチ響かなかった。

’80年代後半になってから『リーサル・ウェポン』や『ダイ・ハード』等、戦争映画並みに派手でリアルなアクションを取り入れた刑事物のアメリカ映画がヒットして、更にレンタルビデオが普及した影響もあって、視聴者の眼が肥えちゃったのかも知れません。

と同時にお笑いブームも経て、軽いノリやユーモアに対するハードルも上がった事でしょう。リアリティへの要求も厳しくなって、それまで通じてた作劇上の嘘も許されない空気になってたような気がします。

『あいつがトラブル』にせよ『ゴリラ』にせよ、生まれた時代が違ってたら、世間の評価もまた違ってたかも知れません。つくづく、ヒット作を生み出すってのは本当に難しい!

ところで今あらためて観ると、やっぱ南野陽子って人は可愛いです。自慢の髪をバッサリ切ったのはショーケンさんに勧められての事らしく、ご本人は後悔されてたみたいだけど、ショートカット好きの私としては萌えましたw

ショーケンさんが演じる「代表」こと沖田淳一は、「マカロニ」こと早見淳が殉職しないで、やがて管理職に就いたとしたら?っていう発想から生まれたキャラクターなんだそうです。

だから組織のしがらみやルールをたびたび無視して突っ走る困った上司で、名うてのトラブルメーカーである筈のナンノさんはじめ、若手らが逆に翻弄されちゃう場面もよく見られました。

それこそが本作の肝だと思うんだけど、トラブルメーカーどうしが互いにトラブルの起こし合いっこしてるみたいな様が、視聴者にはあまりにバカバカしい空騒ぎに見えちゃったのかも知れません。

それに『太陽にほえろ!』や『傷だらけの天使』の頃の若いショーケンさんが演じる八方破れと、中年になったショーケンさんが演じるそれとは、やっぱ観る側の感じ方も違って来ちゃいます。

若い頃のショーケンさんは、どんなに突っ張って見せても少年の可愛さがあって、何となく儚さや切なさまで感じさせたもんだけど、中年になっちゃうと単なる怖いオジサンにしか見えないんですよねw(あくまで私感です)

黒澤映画に出た辺りからの「萩原健一」と、それ以前の「ショーケン」とは全くの別人である、みたいに表現されてた方がおられたけど、言い得て妙だと思います。

織田裕二さんはまだ無色な感じで、がむしゃらな芝居に好感が持てます。センスの点じゃ遠く及ばないものの、マカロニ刑事を彷彿させてくれます。

そのせいか、服装や小道具などのディテールにこだわる織田さんにショーケンさんが茶々を入れてからかい、一触即発のピリピリ感が撮影現場にあったんだとか。それを間に入ってなだめてたのが、世間からワガママ女優としてバッシングされてたナンノさんだと言うんだから、なかなかイイ話ではないですか。

なお、犯人役あるいはチョイ役で出演されたゲスト俳優陣の中には、内藤剛志、今井雅之、宇梶剛士、豊川悦司、萩原聖人、渡部篤郎、椎名桔平etcと、その後のTVドラマ界を支えて行く実力派が多数含まれてます。

あと『あいつがトラブル』っていうタイトルは、失踪人課はトラブルメーカー揃いなんだけど、当人達は自分がトラブルの元ではなく「あいつがトラブルなんだ」ってお互いに思ってる……てな意味だそうです。

現在なら『TROUBLE/警視庁特別失踪人課』みたいに無個性なタイトルになっちゃうだろうと思います。今どきのドラマ制作者さん達も、これ位は捻ったものを考えて頂きたいもんです。
 
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