ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『俺たちの勲章』1975

2018-09-22 00:00:22 | 刑事ドラマ HISTORY









 
とある若者が○月○日に銀行強盗を計画している、みたいなタレコミを受けた時、あなたが刑事ならどうするでしょうか?

その決行日に銀行を張り込み、若者が強盗をやらかすのを待ち構えて現行犯逮捕するのが、武闘派の刑事マシーン=中野祐二(松田優作)のやり方。

片や、若者が強盗しちゃう前に何とか見つけ出し、説得して思いとどまらせるのが、平和主義のヒューマニスト刑事=五十嵐貴久(中村雅俊)のやり方。

その時は思いとどまっても、やる奴はどうせ又やるに決まってる。それが中野刑事の人間観。対して、人間の本質は善だと信じて疑わないのが五十嵐刑事。

考え方は対照的なんだけど、両者とも組織の中で働くには自己主張が強すぎて、サラリーマン的な上司や同僚達から疎まれちゃうハミダシ者。

そんなヤツらはまとめて厄介払いしてしまえって事で、2人は毎回あちこちの地方署に出張させられちゃう。

横浜を拠点にしながらも、日本全国あらゆる町を舞台にして、優作が走り、雅俊が吠える。『俺たちの勲章』は、そんなユニークな設定の刑事ドラマでした。

1975年の春から秋、日本テレビ系列で水曜夜8時に放映された番組ですが、頻繁にナイター中継を挟んだお陰で、全19話という当時としては少ない話数。視聴率もやや苦戦気味だったらしいです。

だけど片や『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役、片や『われら青春!』の沖田先生役で、それぞれ鮮烈なデビューを飾って人気スターの座に就いた2人がコンビで主演ですから、そりゃもう我々世代の男子にとってはたまらん番組でした。

特にやっぱり、革ジャンに革パンの黒づくめで決めた優作さん=中野祐二の、情け容赦ないバイオレンス刑事ぶりが鮮烈で、めちゃくちゃ格好良かった。少年ジャンプに連載された漫画『ドーベルマン刑事』の主人公も、中野刑事をモデルに造形されたんだとか。

萩原健一&水谷豊の名作探偵ドラマ『傷だらけの天使』は、健全路線の『太陽にほえろ!』でマカロニ刑事を演じてたショーケンさんが「俺はもっとアダルトで尖ったドラマがやりたい!」とか言って、プロデューサーにダダをこねた事から生まれた作品でした。

同じように優作さんも、純朴キャラのジーパン刑事役には相当ストレスを溜めておられたそうで、そのワガママに『太陽』プロデューサーが応えて生まれたのが、この『俺たちの勲章』という企画だったんですね。

だからと言って、クールな松田優作がやたら暴れ回るアクション一辺倒の刑事ドラマかと思ったら、実は全然違ってたりします。

本作は後に中村雅俊の『俺たちの旅』や勝野洋の『俺たちの朝』等へと続いて行く『俺たち』シリーズの第1弾でもある。つまり本質は「青春ドラマ」なんですね。

だから、五十嵐がいくら人間の性善説を信じても大抵は裏切られてしまうし、中野の内に秘めた正義感や優しさを理解してやれる人間もほとんどいない。青春とは、痛くてほろ苦いもんなのです。

扱われる事件も、男と女の情念が絡んだ現実的なものが中心で、必ずしも善人が報われるとは限らない、辛辣な結末を迎えるエピソードが多かったように思います。

ゆえにゲスト俳優も水谷豊さんはじめ実力派の人達がキャスティングされ、殊に関根恵子(現・高橋惠子)、篠ひろ子、浅茅陽子、五十嵐淳子、真野響子といった、旬の若手女優さんが毎回起用されるのも大きな見所になってました。

で、五十嵐がいちいち彼女らに惚れちゃうんですよね。美人はみんなイイ人だと思い込んでるフシがあるw 演じる雅俊さんは実際、その中の1人である五十嵐淳子さんと結婚しちゃいましたからね。

製作は日本テレビ&東宝テレビ部の『太陽にほえろ!』チームで、メインライターは後に『男女7人夏物語』や『金曜日の妻たち』等を手掛けるヒットメーカー・鎌田敏夫さん。音楽は吉田拓郎&トランザム。

レギュラーキャストは他に、中野&五十嵐が所属する相模警察本部捜査第一係の係長に北村和夫、事務員に坂口良子、鑑識課員に柳生 博&山西道広、行きつけの小料理屋「あすか」のママに結城美栄子、店員に佐藤蛾次郎、中野が捜査の合間にデートする謎の美女に鹿間マリ、といった面々。

プロデューサーの岡田晋吉さんは、ご自身が手掛けられた幾多の名作・ヒット作の中でも、この『俺たちの勲章』が一番の自信作なんだそうです。

また、後に中村雅俊&根津甚八のコンビで続編的内容の『誇りの報酬』('85) が、更にその後番組として舘ひろし&柴田恭兵の『あぶない刑事』('86) が製作される事にもなります。

放映スタートはテレビ朝日系列『TOKYO DETECTIVE/二人の事件簿』の方が1日だけ早かったけれど、日本のバディ物刑事ドラマの原点はやはり、この『俺たちの勲章』と言って差し支えないでしょう。

黒豹みたいな松田優作のハードアクションに痺れるも良し、青春ど真ん中な中村雅俊の悲恋に泣くも良し、’70年代を彩った若手女優たちに萌えるも良し。未見の方は是非、DVDやBlu-rayでご鑑賞あれ。
 

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2 コメント

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Unknown (相模警察本部)
2018-09-22 20:25:11
俺たちの勲章の記事、有り難うございます(^〇^)
バップのVHSビデオ、全巻揃えて何度も観ました。

あ、細かい事で恐縮ですが、二人の所属は相模警察「本部」ですので_(^^;)ゞ
>相模警察本部さん (ハリソン君)
2018-09-22 22:29:53
所轄署なのになぜ本部?という疑問を抱きつつw、記事は訂正しておきました。『警視K』の主人公が警視じゃなかったりw、昭和ドラマは自由でしたよね。

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