聖なる死を迎える病院

末期医療の患者さんばかりを集めた病院の院長先生の御話を番組で見ました。

（ケース、その１）
末期ガンの９０歳に成られるお婆ちゃんの話です。
もう歩くことも出来なくなってきた時、お婆ちゃんは院長先生に頼みました。

お婆ちゃん：
「先生、最期の最後のお願いがあります。
１度だけ自宅に帰らせてください。そして、瓜の漬物を漬けたいのです。
これだけを出来れば、もう私は満足です」

院長先生：
「なぜ、漬物なんですか？」

お婆ちゃん：
「今の時期に瓜を漬ければ、これを食べる頃には私はコノ世には居ません。
でも、孫たちや家族が瓜の漬物を食べるたびに、私が居たことを思い出してくれるでしょう。
それだけで私は嬉しいのです」

お婆ちゃんのこの要望を院長先生が家族に伝えますと、ご家族は直ぐに方々から集まり準備をされて、お婆ちゃんに瓜を漬けさせてあげました。
その後に、やはりお婆ちゃんは亡くなられましたが、家族がボリボリと瓜を食べるごとに、お婆ちゃんは家族の心中に居られたことでしょう。
そして、すべての瓜が無くなってから、お婆ちゃんは安心して旅立ったと思います。

（ケース、その２）
３人の子供を持つ、まだ３０代の男性が末期ガンでした。まだ若いだけに、全身への転移が早かったそうです。一番下の子供は、まだ１歳半でした。

男性：
「先生、お願いがあります。
どうしても今の内に、東京ディズニーランドに子供たちと行きたいのです」

院長先生：
「かなり難しいです。まず、その痛みの中で、長い距離を荷物と共に歩けるのでしょうか？
でも、なぜ遊園地に行きたいのですか？」

男性：
「一番下の子供と私が写る、思い出の写真を残したいのです。
一番下の子供に、“私が存在した思い出”を残してあげたいのです。」

院長先生は了解し、色んな場合の痛み止めの薬を男性に渡して、送り出しました。
数日後に男性は、少し日焼けをして無事に戻られました。
しばらくしますと、男性は再度、

「先生、お願いがあります。自宅に風呂に入りに帰らせてください。
一番下の子供と、一緒に入浴した思い出がまだ無いのです」

男性はすでに歩くことが困難であり、座ることがやっとの状態でした。
院長先生は無理だと判断し、病院内で御家族と入浴できる体制を整えて、ご家族を病院に呼びました。

大人の男性患者で体重があるので、転倒防止のために院長先生も入浴を介助しました。
男性は、１歳半の子供の背中を懸命に手で撫でて洗っていました。すると、他の幼い兄弟二人は、男性の背中を懸命に磨いていました。
男性は、一歳半の小さな小さな背中を手で撫でながら、コノ世で分かれることを心中で謝っていたのかも知れません。
上の子供二人は、お父さんの肌にただ触れたかったのでしょう。

横からその光景を見ますと、親ガメと子ガメ。一直線の数珠つなぎの電車、・・・・命の連鎖、を院長先生は思いました。
その後に男性は亡くなられましたが、彼なりに精一杯の「思い出」を子供たちに命懸けで残したのでした。

私たちが普段にアタリマエにしている「行為」も、末期ガンの患者さんにはアタリマエでは無いのです。
どの患者さんも、「思い出」のために、最期の命を懸けて「行為」に「挑戦」されました。
だから生きる私たちも日常生活の中で、行為と、前向きに挑戦する気持ちが大切なのです。

死を迎えるどの患者さんも、最期に望まれたのは「思い出」だったのです。
失業中であろうと、何があろうとも、今を懸命に生きていれば、それで良いのです。
コノ世での結果がダメでも、自分が懸命に努力したならば、それは後悔の無い思い出に変わります。

自分が懸命に生きなかったことが、死後に誰もが後悔する汚点に成ることを、私はハッキリと記憶しています。
結果よりも、その「過程」を重視して、自分なりに「良い思い出」を創って生きましょう。
そうすれば、人間は必ず満足（成仏）するのです。

生かして頂いて　ありがとう御座位ます

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