少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

ABC予想

2019-11-04 17:44:57 | 読書ブログ
宇宙をつなぐ数学(加藤文元/角川書店)

数学には、〇〇予想と呼ばれるものがいろいろあって、たとえばリーマン予想は、フェルマーの最終定理などとは比べ物にならないほど重要。そうした予想の中に、ABC予想というのがある。数年前に、日本人数学者がそれを証明したという報道が流れたが、その後、数学界で認知された様子もない。

この本は、ABC予想を証明することができるIUT理論という新たな数学を提唱した望月新一教授と親交のある数学者が、理論の核心を説明するとともに、その理論が、あまりに革新的なので、数学の世界でたなざらしにされている事情も含めて解説したもの。

ABC予想がどういうものかは、中学生ほどの知識があれば理解可能だが、IUT理論は、巧みな比喩で説明されても、わかるものではない。足し算と掛け算の正則性を崩して、複数の宇宙の数学間で、対称性をたよりに特定の不等式を証明する、と言われて、何を理解できるだろうか。

しかし、その理論が何か素晴らしいものだということは確かに理解できるし、この本自体、内容がわからない、ということを除けば、読みやすい本ではある。そして読書とは、つまるところ、わからないものを読むことなのだと思う。