少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

ランチ酒

2021-08-28 07:00:00 | 読書ブログ
ランチ酒 今日もまんぷく(原田ひ香/祥伝社)

題名のとおり、お酒を飲みながらの昼食を描いた作品で、シリーズ3作目。

図書館で見かけたとき、題名と装丁に魅かれた。昼から飲める店を紹介するエッセーだと思っていたら、そうではなかった。エッセーが大好きな私は少しがっかりして、読了にいたらなかった。

しかし、再びこの本を見つけて、読んでみたいと思った。同じ作品かと思ったら、シリーズが進んでいた、という訳だ。

私としては、この作品は「料理に関する本」の枠で紹介したい。読めばおいしい料理で飲みたくなる。バツイチ女性の物語も付随しているが、お通しのようなものだと思えば邪魔にならない。店ごとの話も短くて読みやすい。女性がランチで一人酒をする状況の設定も悪くない。しかも、紹介されている店は、固有名詞こそ出していないが、調べればすぐにわかる実在する店のようだ。

多分、1作目、2作目も探して読むことになるだろう。

最終人類

2021-08-21 07:00:00 | 読書ブログ
最終人類(ザック・ジョーダン/ハヤカワ文庫)

舞台は、無数の宇宙種族が共存するネットワーク宇宙。独自の進化によって宇宙に進出する段階に至った種族は、ネットワークに参加するか否かの選択を迫られる。参加すれば、脳内のインプラントによりネットワークに接続し、超光速移動をはじめさまざまなサービスを受けられる一方、知性のレベルに応じた圧倒的な格差社会で生きることになる。拒否すれば、宇宙への進出を断念させられる。

そのような世界の片隅で、他種族に偽装して生きる少女。どうやら人類は、ネットワークに反旗を翻したために絶滅させられたらしい。最後の生き残りである彼女を育てているのは、硬い外骨格を持つ、蜘蛛型の殺人種族。

このような設定で始まる、いかにもSFらしい作品。(読みたくなりましたか?)

上下2巻でそれなりの量があるが、楽に読めた。登場人物もそれほど多くない。SFファンにはお勧めする。

しかし、誰もが読むべき一冊、とまでいうつもりはない。その理由を説明すると、たぶんネタバレになる。


物理学者のすごい思考法

2021-08-14 07:00:00 | 読書ブログ
物理学者のすごい思考法(橋本幸士/インターナショナル新書)

3月下旬に紹介した『「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた』と同じ筆者。

作品中に、「牛を球だと考えてみよう」というフレーズが出てくる。別の本に、同じことが書いてあったはずだと思って調べてみると、『物理学者はマルがお好き』だとわかった。読んだのはずいぶん前だが、かなり面白かった気がする。筆者は、ローレンス・M・クラウスという宇宙物理学者で、「宇宙が始まる前には何があったのか?」という本も書いている。こちらは本格的な宇宙論で、宇宙の最後は、ビッグフリーズ(限りなく広がり、最後にはすべての物質が消滅する)であることを説明している。

いずれにしても、牛を球だと考える、というのは、物理学者的な発想で、ジョークのネタにもなっているらしい。

筆者は、超ひも理論を専門とする京大大学院の教授。今回、紹介する作品は、科学解説書ではなく、軽いタッチのエッセー。いわゆる理系の人にとっては、非常に面白いのではないか。もちろん、文系の私も、楽しく読ませていただいた。

白銀の巫女

2021-08-07 06:00:00 | 読書ブログ
白銀の巫女(乾石智子/創元推理文庫)

5月下旬に紹介した『赤銅の魔女』に続く「紐結びの魔導士Ⅱ」。

前作では、いわゆる旅の仲間が紹介されつつ、物語の大きなテーマが提示される。

旅の仲間は、まず、隣国からの軍の侵入によって館を捨てて西に逃げる紐結びの魔導士の一行3人。軍の魔導士が、館に埋葬された邪悪な魂を呼び覚まして主人公を襲わせる。「拝月教」の巫女で幻視の力を持つ女性(この人が白銀の巫女)が、予知した災厄を防ぐため、主人公に加勢する。逃げていった先の村には星読みの少女(この人が赤銅の魔女)がいて、古い予言を読み解こうとしており、成り行きから行動を共にすることになる。それに、村の若者(抜けない剣を抜いてしまう役回り)や、ウィダチス(動物に変化する魔法)の魔導士らが加わる。

大きなテーマは、まず、主人公を襲う邪悪な魂の顛末。これが前座で、真打ちは、千五百年前にかけられた、魔女の呪い。

この作品では、一行は魔女の呪いの真相を探りつつ、軍との戦いにも対処する。主人公は、赤銅の魔女とともに、邪悪な魂との対決の場に飛び込んでいく。一方、白銀の巫女は、途中からある意図をもって別行動をとる。

物語は主人公の一人称で語られるが、白銀の巫女の視点から三人称で語られる部分もあり、彼女の真意は、この巻では隠されている。ともかくすべては最終章で、ということだ。

この作品の最大の魅力は、さまざまな魔法使いがそれぞれの闇を抱えながら、生きいきと暮らしている作品世界そのものにあるから、このくらいの内容の紹介は大丈夫かなと思っているが、ネタバレと感じたとしたら、ごめんなさい。