前日の夜に廃校を宿泊所にした「であいの里」で区長さんらから蜷川地区の歴史や伝説、近況などのお話を聞き、翌朝実際に現地を案内していただいた。黒潮町はクジラウオッチングや砂浜を美術館に見立てた砂浜美術館で知られるところだが、少し山に入った蜷川地区はなんと!?後醍醐天皇の第1皇子「尊良親王(たかながしんのう)」の隠れ屋敷跡がある。と、いっても一般にはピンと来ないかもしれない。時代は南北朝時代、足利尊氏に土佐に追われ、隠れ住んでいたというのがここ蜷川だったということで、詳しく調べた橋田さんのお話によれば、言い伝えや口伝が中心とはいえ、残された地名や神社、寺社をみれば相当信頼性は高い。しかも尊良親王を慕う地元の人たちの気持ちが修復された神社や寺社のひとつひとつによく表れている。親王を偲ぶ祭りや行事も大事に伝承している。親王と土地の人々の交流、お互いの信頼感が子々孫々伝わってきたのが本当に5人の方の話しっぷりや動きでよく伝わってきた。
私が一番驚いたのは、その口伝を巻物にして整理された橋田さんが癌を患い、余命も心配される中、この郷土史を残す事業に邁進され、とうとう病を克服されたということだった。さらに区長さんや受講生が撮影したビデオを試写して見るうちに5人全員が80歳近いというのに、非常に素直な感想を述べられた。共通していたのはビデオに映った自分の顔や姿勢を見て、自分が思っていた以上に年をとったということや、背中が曲がっている、声が出ていない・・・、などなど自らのことを始めて客観的に見て大いに感じることがあったということだった。さらに、先祖代々地元に伝わる「べからず集」があって、自分たちの世代が生き方を見失い、ぶれていたので後世にキチンとバトンタッチができないことを心配していたが、今回皆で一緒に歩いて、質問されたり、映されたれたりする中で、自分たちがしっかりしなければ、と改めて気付いたという感想まで出た。この話は「知られる権利」でよく話すが、人は知られることで元気になるという実例になった。
このあたりの話は本当に感動した。あちらも感動しておられるのがよく伝わった。区長はさっそく区でカメラを買うと宣言された。住民ディレクターはまさにこのような場を求め、少しでもお役に立てればと、始めたものだったので私も胸がじーんときた。うれしかった。やっててよかったと心から感じた。
この話は書くだけでは伝えきれないので何とかがんばってプリズムTVに上げたいと思う。衛星放送「南の國から」でも放送することを計画中!
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