この課長補佐はイベントFMラジオ局を作りたいと考えていたのだが、民放のラジオ局に相談すると予算もさることながら、中身についてハードルが高く「できない」と判断せざるを得なかった。そこへ住民ディレクターの噂が入ってきたらしい。初めて会った瞬間、この人はできると感じた。内容や態勢、そしてなにより彼が考えていることを実現するための予算など至急詰めたが、彼はだめだとは言わない。「こうできないか?」「これだけの予算でやるには?」「こうすればどうなる?」次々とやるための質問が出る。しかも国体のときではなく、国体終了後の住民ディレクターの活動が大事だという主旨もよく理解してもらった。国体のときは大きなイベントなので皆張り切る。しかし、終了後にここで鍛えた力を地域に生かすことが大きな目的だった。課長補佐は全面的に私の主張を受け入れてくれた。結果的には私も彼の熱意にほだされ、相当困難が予想されたが引き受けた。
私は前年からの講習と国体時までに100人余りの住民ディレクターを養成する必要を説いた。住民がやるということは日々の暮らしの合間の時間を活用してやることになる。特にボランティア活動なら、報酬がない代わりに動けるときに動ける気安さ、手軽さが必要だ。結局2年間想像を超える激しく厳しい、しかし楽しい、でも大変な国体顛末記がダイナミックに描かれた。今ではこのときの信頼できるメンバーが一緒になってNPOくまもと未来を運営している。
この国体の顛末記については●パブリック・アクセスを学ぶ人のために(12章岸本晃 担当:世界思想社)「IT時代の紫式部と國創り/行動する熊本の住民ディレクター」に詳しく書いた。住民参画の現場という意味では非常に濃密で学ぶことの多かった現場だ。今でもこの時の経験が大いに役立っている。たまたま最近いくつかお尋ねが重なったので色々と思い出した。
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