住民ディレクター活動を薦めるとき、いつも映像を作るときに誰に発信するかをイメージしてやりましょう、と話している。私が14年間いたテレビ局時代はいつも不特定多数の見えない顔、人の形をした人形のような影(視聴者)を相手にしていた。だから、いつも反応が見えないし、投げた石がどこに当たっているかがわからない状況で番組を制作していた。しかし、ある時からそれはやめた。たまたま自分が作った番組を自宅で見ている時、横に義母がいた。私が作ったということは黙って見ていたら、横で義母が「あれはどういうこつね?(どういうことね)」「あぎゃんこつはなか(ああいうことは熊本ではない)」「これはおかしか(これは言ってる事がおかしい)」などと、独り言を言い始めた。いつものことだが、いちいちグサッときた。いつものことというのは、水戸黄門を見ている時にいつも「そろそろ黄門様が出てくる」とか「こん人は悪かもんばい(悪い人だよ)」と、解説があるのだ。
義母の素朴?な疑問や批評が自分が作った番組に発せられた時に、「そうか、これからは義母のことをイメージして番組を作ればいいんだな」とわかった。いつも不特定多数を相手に作っていた番組が実は自分の義母にこんなに理解してもらえない番組だとわかって、すっきりした。そのうちにいろんな人の顔が見えてきて、不特定多数から特定少数になってきた。マスコミにいながら、特定少数に特化して番組を作り始めたら、非常に全体の反応がよくなってきた、という皮肉な結果が次々と出てきた。
かなり勘違いしているんだな、ということがわかってきた。我々はいつも何百万人、何十万人を相手にしてきたが、その人たちの顔を見てなかった。しかし、そのうちの一人である義母が「ただの一人」ではなく、何十万人の最大公約数のある何かを感じとってくれている「一人」だった。「一人」のことが実は「何十万人」のことに通じる。不特定多数のマジックに惑わされてきたことに気付いてから、視聴率のマジックがわかった。
視聴率ではなく視聴質だという議論が随分前からあるが、私は今でも両方必要だと考えている。住民ディレクターはまずは「質」から入る、しかし、その「質」は必ず大きな量になっていくことがこの活動の目指すべき方向だと考えている。そのためには、しっかりと一緒にやっていける人がある一定の数になっていかないと行かないということもよくわかるので、この11年間はそこに徹底的にこだわってきた。時間はかかるが住民ディレクターは2刀流の宮本武蔵を目指す。
(写真はテレビ朝日系の熊本民放のゴールデンタイム{PM7:00~8:00}で放送された山江村の村民手作りドラマ:企画から撮影、編集、出演のほとんどを村民で実施したドラマ、プリズム企画、プロデュース)
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