なるほど……今にして思えば彼は?彼女は?そういう人種だったのか?……と思い当たる人間が何人かいる。
少し調べて見るとコミュニティクラッシャーなる人種の『主たる動機は歪んだ承認欲求』なんだそうな……。
真実の力では敵わない……そこで『嘘の流布・陰口』に努めて引きずり降ろす事を目論むという心理の人だとあった。
何かの…諍(いさかい)いとか揉め事とか?
その人間との間にあったのなら……ストレートに理解も出来る……。
しかし、むしろ自分と一見良好な関係と思っているから『相手の悪意を自覚』するまでに随分と時を要するのである。
一人の男……中学から何かと周囲に居た一人だった。温厚そうな雰囲気、そんな立廻りとは程遠い印象だった。
大学に入った頃からまた周囲の知り合いに返り咲いた……気が付けばそこにいる?存在感は薄かった。
大学四年間……過ごす内に彼の直接の知り合いではない、僕を通して知り合った人間と何時の間にか近付き……気付けば凄く近い関係になって行く?
様々の枝葉のグループの内の何個かに食い込み
そのグループは僕と疎遠になっていた。
流石に……社会人になると彼に居心地の悪い違和感を感じる様になり距離を置く様に心掛けた。
しかし『彼のコミュニティ破壊の熱意』は冷めなかった。
僕の経営する会社にも素知らぬ顔をして出入りしていたけれど……僕は余り本気では取り合わない様に努めた……。
社内のギャンブル依存症の男と何時の間にか?交流を始めた……ギャンブル依存症の男はまた自分の横領の引け目から、陰では『サークル・クラッシャー』そのものの言動で立ち回る様になっていた。
『負と負の共鳴?』なのか?あらぬ風説を伝え聞く様になった。
同級生の心ある人間がコミュニティクラッシャーの振り撒く荒唐無稽の嘘をそっと耳にいれてくれたり……同僚の依存症の男の語る被害者演技による嘘が耳に入るようになった。
コミュニティクラッシャーの同級生は『自分の付いた嘘がホントそのものといった風情』で喋りまくってる……と聞いたのは交流を絶って20年以上もの空白期間の話だった。
詰まり彼は『自分が知らない筈の僕の話』を極めて詳細に様々の彩りを添えて語っていた。
郊外から中心地に引っ越した時は……余りの借金の大きさによって僕は夜逃げした!と彼は真っ赤な嘘を流布していた。
彼の『見て来た様な様々の話』は同級生達の中のシャーデンフロイデ好きの人間には格好のネタだったらしい。
心ある同級生の親友は、俺が暴いてやる!なんて憤りを隠さなかったけれど……止めた方が良いと僕は言った。
この頃になると『負の感情の虜になった人間は止まれない事』を学んでいたからだった。
分かっていてくれる人間が一人居てくれたら良いんだ……と僕は腹を括ったのである。
人の口に戸は立てられない?……昔の人ってそんな人間の不思議な心理をよく分かってたんだなぁ……と思う。
大体が?ホントに現実に僕が被害に合わせた人間なら分かるけれど……。
何も責められる事をしてない人間を嘘の話の伝え聞き一つで……陰湿な感情を、燃やして背中から斬り付ける様な人間に僕は用なんぞなかった。
この頃になると……コミュニティクラッシャー君は……知り合いの人間を判定する試薬の役目を果たしてくれる様になった。
『そういう目』で見ればクラッシャーの嘘は酷く単純で幼稚なモノ。ソレに飛び付く人間はダボハゼ状態で人の不幸話に食い付くんだな?と僕は看破していた。
同級生の親友が同窓会の写真を見せてくれた時僕は息を呑んだ。アイツ、こんな顔になってるんだぜ!と指差した先に……醜く異様に太りゴツゴツに変形した彼がいた。加齢による変化ではない、とても不気味な人相だった。
コミュニティクラッシャーより……厄介なのはシャーデンフロイデに夢中の彼の嘘に踊り狂う『人の不幸漁り』に夢中のその他大勢のギャラリー達のしつこさだった。
意味のないよそ他所しさだった当初……。
ま、幼稚なイジメ心理そのまんまで『弾いてやるぞ!』ってな態度だった。
その後、全てのカラクリを理解してからは『逃げの一手』に徹した僕を探して懲りることなくやって来た。
偽情報から勝手な下劣な想像を巡らしては様々な言葉をかけてくる。
にこやかに応じること、それとサッサと手短に切り上げることに専念した。
仲間外れにしてくれたら良いのに?彼等は逃げる僕を追わずにはいられない異様な執着を見せ続けたのである。
先般書いたけど……やがてそんなこんなを繰り返してる内に彼等も哀しい心理の虜なのだと気付いた。
『自分を頼れない自信の無さ』から尽きることのない自分の嫉妬心に自分が振り回されている姿。取合わないと彼等は自分で勝手に惨めになって引き上げていく。
自分を諦めた代わりに他人を引きずり降ろす事に執念を燃すことの哀しさがハッキリ見えた。
彼等がとても寂しい人種だと理解できた今……僕に出来ることは……彼等の視野から完全に離れ消えて上げることに徹している。
『悪いがコレから予約』、とか?『外せない用事で外出』とか?……スタッフに目配せしてスタコラサッサと一目散に逃げるのである。
心の汚さから蠢いている人間からは……『三十六計逃げるに如かず』である。
昔から何時の世もそんなのが居たんだなぁ?
『汝の敵を愛せ』とキリスト様は言ったとか?
僕は到底その域に達せそうもないけれど……そんな敵の哀しい心に思いを馳せることは出来るようになった。
詰まり同情心を発動出来るようになれたのである。
彼等の下劣さに腹ばかり立ててた僕にしては格段の進歩を遂げた?……と得心に至って今を楽しみ生きれるようになったのである……。
『人を呪わば穴(墓穴)二つ』……。
人の悪意に対して目には目を!!とばかりに怒りを燃やしたこともあったけれど……今は人の悪意は『僕の担当する問題じゃない』とはっきり認識出来るようになれた。
その悪意は悪意を抱いたその人自身の問題なのである。
他人が抱いた悪意をわざわざ引き受け自分の心に呪いが芽生えれば……その呪いは自分のモノになっちまう。結果……自分も滅びちゃうよ?っていう教えである。
人間界を生きるとき自分は自分の責任者にしかなれない。
他人の感情にまでお付き合いする力も、必要もないのである……。