6月5日(日)のシダクラ尾根地図読み山行の反省会(という名の打ち上げ)で、新人の男性1人が「岩登りの練習をしたい」と言っていました。という訳で、1週間後の12日に岩トレを実行することに。山行計画を公表すると、同じ日のもう1人の新人女性も参加を申し込んで来ました。「僕ひとりで2人の初心者を教えるのは大変だな~ぁ!」と思っていたら、それを察したK野さんが手伝いに来てくれることに。感謝! 感謝!
初心者2名への岩トレ体制はスタッフ面では心配なくなりましたが、もっと心配なのは天気でした。何日も前から気象庁やウェザーニュースやらをチェックし続けていましたが、気象庁は慎重派で「曇り時々雨」みたいなレベルの予報から良くはなりません。ウェザーニュースの飯能市の予報を見ていると、2日前くらいだったか、1時間おきの予報の中に雨マークが消えて、午後からは晴れマークばかりになったことも一瞬ありました。でも、すぐに午後から3~4時間は雨になります。最終的にはウェザーニュースでは前日夜からは曇りが続いて、当日正午まで曇り。午後2時間ほど時間降水量が0.5ミリほどの小雨が降り、その後は晴れ、そんな予報が出ていました。これなら、1日中岩トレ出来そうだな、と思いました。岩場も完全には乾かないでしょうが、生乾き程度にはなるかな? と。
当日になって、予報を詳しくは見ませんでしたけれど、空に広がっている雲は薄雲で、ときおり薄日も射すほどでした。ただ、夜中に2時間ほどかなりの雨(50ミリ以上)が降ったみたいで、岩場はびしょ濡れ、一日中乾くことはないだろうと、思いました。
天覧山の岩質はチャート系で濡れると滑り易くなります。ですから、少し難しいグレードのクライミング練習は出来そうにありません。4級は登れないでしょう。3級の岩場だけでの練習になるでしょう。本来ならば、4級+のルートくらいは触って欲しかったのですが、そこは諦めることにしました。
2022年6月12日(日) 天覧山岩登りトレーニング
天候も微妙でしたから、飯能駅集合は9時25分。そこから住宅街の外れにある天覧山へ行き、最下部岩場へ降りて行きました。驚いたことに、こんな季節こんな日なのに、僕たち以外のパーティーがいます。最下部岩場の易しい右側のエリアに2本のザイルをトップロープにセットしてあります。
僕は朝食もまだでしたから、ゆっくりとサンドウィッチを食し、ミルクチャイを飲みます。新人2人がハーネスを装着する前に、岩場の下を左から右へトラバースしてみよう、と言いました。一番左端は少し難しいので、そこは外しました。一度やって見せて、あとはK野さんに任せます。K野さんは基本となる三点確保等を教えてくれていました。岩場はびしょ濡れです。
▲11:18。サンドウィッチを口にしながら、僕もハーネスを装着して、岩場の左側にトップロープのセットをしました。K野さんの確保で、まずは男性の哲さんが登ります。易しいルート(3級-)を登って、そこをクライムダウン(登り同様に自分の手と足で降りて来る)します。続いて、女性のO崎さん。写真は最初にザイルで確保されている安心感を知ってもらうために、ザイルに身を預けてもらっているところです。
▲11:19。O崎さんも哲さん同様、易しいルートを登り、クライムダウン。
▲11:30。同じ練習の2度目です。哲さんは最初のルートの少し左を登ろうとしています。でも、そこは少し難しく3級+くらいはありそうです。さらに少し左のルートを登ってみたらと指示しました。この写真のルートですが、最初よりは岩場が立っていますけれど、思いのほかホールドがしっかりしていて登り易いんです。3級でしょうね。クライムダウンは最初と同じルートを降りて来ます。そして、地面から1mの辺りでクライムダウンを止めて、ザイルに体重を預けてもらいました。そして、そのままザイルを下ろして行きます。ロワーダウンですね。
▲11:39。K野さんにも登ってもらいました。哲さんには人生初確保をしてもらいました。当然、写真に写っていない手前のザイルを僕がしっかりと握っています。K野さんはちょっと難しい3級+のルートを登って行きました。スタンス(足場)が小さいので、運動靴では登りにくいんですけどね。
▲11:59。僕も登らせてもらいました。その確保はO崎さん。彼女は直前にハーネスとヘルメットを買ったんだそうです。沢登り用のハーネスだそうです。安全環付カラビナとルベルソはK野さんが貸してあげたもの。
▲12:07。3級ルートの登攀とロワーダウンを繰り返します。
▲12:09。ロワーダウンは懸垂下降の姿勢と同じですから、その準備練習としても有効です。哲さんは岩場は初めてだそうですが、クライミングの机上講習のようなものを受けたことがあるそうですね。ヘルメットもハーネスも、幾つか器具も持っています。
▲12:19。3級ルートの上部はこんな感じです。このルート自体は高さ6mくらいでしょうか。
▲12:21。O崎さんも哲さんもロワーダウンを怖がらずに降りて来ます。怖がって、足で立つ姿勢をとってしまう人もいます。体が起きてしまうと、逆に足が滑り易くなるんですよね。足は岩場と垂直になるくらいに思った方がいいのです。
▲12:25。K野さんが登っています。哲さんはしっかりと確保しています。
この後、僕たちは昼食タイムにしました。しかし、すぐに遠くで雷の音が聞こえ始めます。雷鳴は鳴るたびにどんどん接近して来て、すぐに大音響を轟かせるようになりました。雷雨の予想を見ても、どうやらこの場所を直撃するようです。僕たちは荷物が濡れないようにして、天覧山中腹広場の東屋へ避難することにしました。
▲12:55。豪雨の中、この東屋に逃げ込みました。まさにバケツを引っ繰り返したような雨です。すぐ近くの景色も雨で白く煙(けぶ)っています。
▲12:58。少し雨の量は減りましたが、大雨ではあります。
▲13:16。雨がやみました。
▲13:16。青空も覗いています。
気象庁のデータを見ると、飯能市では30分間で20ミリ以上の雨が降ったようですね。そのうち10分間では17ミリですから、1時間換算では100ミリ降るような激しい雨だったわけです。ただ、僕の個人的感想では、もっと降っていたように感じます。気象庁が設置している飯能市の観測地点よりも天覧山の方がより多く降っていたと思います。
▲13:45。さ~て、午後の練習、再開です。午前中から張ってあるトップロープの場所に懸垂下降用のザイルもセットしました。自分の好きなルートを登って来た哲さんは岩場の上まで来て、まずはセルフビレイを取り、8環に懸垂下降のためのザイルをセットします。そして、セルフビレイを外し、トップロープのザイルで確保されたまま、懸垂下降。哲さん、人生初の懸垂下降です。
▲13:50。O崎さんも続きます。
▲13:56。同じように懸垂下降。O崎さんも人生初の懸垂下降です。これを2人とも2度実践しました。
▲13:59。右の木を使った2ヶ所のシュリンゲはトップロープ用。左は僕のセルフビレイ。左上から右下へ伸びている水色のザイルは懸垂下降用ザイルです。
▲14:27。最後に僕も懸垂下降。ルベルソ5を用いての正式な懸垂下降です。ルベルソは体からは少し離れたところにセットしています。そして、黄色いシュリンゲですがマッシャー結びで体の近くにセットしました。最近の懸垂下降ではこのマッシャー結び等で安全装置をセットすることが、主流になっているようです。懸垂下降の途中でアクシデントがあって、ザイルから両手を離してしまっても、その場で自動的に停止します。安全意識が時代と共に高まって来ているのでしょう。以前から、8環なら仮固定ですぐに留まることが出来るけれど、ATCやルベルソではどうするんだろう? と思っていました。こうするんですね。
▲14:50。最下部岩場は静かです。まだびしょ濡れのままですが、陽射しも降り注いでいます。実は、もうひとつのパーティーが移動したんです。僕たちが雨宿りしていた東屋に行くと言っていました。そこでザイルワーク中心に練習するんでしょうね。ですから、最下部岩場を僕たち4人パーティーが独占しています。
▲14:53。岩場の右に懸垂下降用のザイルを移しました。この上へは安全に歩いて行けるのです。懸垂下降を確実なものにするために何回も練習してもらうことにしました。哲さんが懸垂下降で降りて来ています。
▲15:05。このルベルソ4(かな?)は哲さん自身のだったと思います。ルベルソを体の近くに置いて、安全装置のフリクションノットは遠いサイドにセットしていますね。フリクションノットはクレイムハイストですね。下降器と安全装置の位置関係はどちらがいいのか、僕はまだ分かりません。ただ、公式には先ほどの僕のように安全装置の方を体に近づけていますね。
▲15:10。O崎さんも懸垂下降。
▲15:15。哲さんもこの方(安全装置が体の近く)がやりやすい、と言ってましたね。
哲さんもO崎さんも懸垂下降を数回繰り返すうちに、K野さんからのアドバイスなしに懸垂下降が出来るようになりました。岩場上部でのチェックを任せていたK野さんも最後に懸垂で降りて来ました。
続いて、時間的に最後の練習メニューになりますが、カラビナの掛け替えをしました。岩場の下の所々に打たれているリングボルトを利用して、横に数メートル、ザイルを張りました。途中の2ヶ所でカラビナの掛け替えをするようにセットしました。そこでカラビナの掛け替えの方法と意味を説明します。固定されたザイルにフリクションノット等をセットして登る(移動する)際に必要となるのがカラビナの掛け替えです。シビアな状況でのカラビナの掛け替えでは、片手でザイルが一瞬たりともカラビナから外れることなくすり替えるように掛け替えをする方法もあります。これは家で何度も何度も練習しておかないと難しいですね。また、ヨーロッパアルプスでのヴィア・フェラータのように人間側のセルフビレイ的なものを2つにしておく手もあります。逆に、固定された支点側のプロテクション的なものを2つセットしておく手もあるでしょう。
でも、今回はいちばんいい加減な方法、落ちるはずのない場所でのいい加減な方法を練習しました。本来的にはこんなやり方では駄目だというやり方です。でも、沢なのでは実際上はこんな風にやっていることがほとんどだと思います。(でも、プロテクション的なものを2つにした方がいいのだと思います)
▲16:06。僕は終了点にいます。上ではザイルを固定しています。途中、だいだい色で囲んだ箇所でカラビナの掛け替えをします。いま哲さんが登って来ています。下ではK野さんがザイルを引いて、哲さんのフリクションノットが動き易いようにしてあげています。
▲16:06。哲さんが最初のカラビナの掛け替えを実行中。安定した足場なので、カラビナを外して(本当は駄目なんですが)、自分のフリクションノットの下方に移し替えているのです。(やっぱり、ヌンチャクを2つセットするのを基本にしようかな) 2番目のカラビナ掛け替えも行なって、岩場の上に上がり、歩いて元の場所に戻ってもらいます。
▲16:13。続いてO崎さん。最初のカラビナ掛け替えもやって、2つ目のカラビナ掛け替えをやるべくトラバース中です。
このカラビナ掛け替えも2回ずつやってもらいました。そして、最後にザイルの末端でK野さんに上がって来てもらって終了。
ちょうどいい時間になったので、この日のトレーニングも終了です。岩場が濡れていたせいで、いつもあまりやらない種類のトレーニングをいろいろとすることが出来ました。これはこれで充実したトレーニングになったと思います。
下山途中、あのパーティーがまだ東屋で何かトレーニングをしていました。熱心ですね。人数もこちらの倍以上いたので、時間はかかるんだと思います。
入ろうと思っていた居酒屋さんは地元客で一杯でした。2軒目はこの日は品揃えが乏しく、3軒目に入りました。それから延々3時間以上。哲さんが場を盛り上げるのが上手で、しかも4人ともアルコールに弱くなくて、飲み続け、喋り続けました。僕は近いのでいいのですが、3人は遠いですから、僕が気を回してあげて、早くお開きにしなければ駄目だったんですがね。僕も気分が良くなると、そんな配慮も吹っ飛んでしまいますからね。