ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

崩壊がさらに進む水無川本谷

2012年10月17日 | 沢登り/金目川水無川水系

今回もまたS崎君と男二人の沢登りです。もともと彼にとっての地元の山は丹沢なのですけれど、ほとんど丹沢の沢へは入っていないとのこと。ならば、久し振りに丹沢の沢の代表格でもある“水無川本谷”を登ろうということになりました。
この沢には過去幾度も入渓したことがあります。トレーニングの意味合いで入渓することの多い沢でした。10回ほどは遡行していると思います。なかでも23年前の水無川本谷での出来事はその後の僕の登山に大きな影響を与え続けています。
その出来事はともかく、直近では8年前にY根君と二人で入渓しています。その際は、F8の高巻きで沢床に戻れず、そのまま登山道まで登ってしまいました。ですから、今回はちゃんとF8を高巻いて、その上流も遡行して見たかったのです。

2012/10/14  電車は前回の葛葉川本谷の時と同じ。渋沢駅を8:20の大倉行きバスに乗ります。何度歩いても、戸川林道のアプローチは詰まりません。戸沢を過ぎ、源次郎沢出合を過ぎ、堰堤を左の鎖場から乗り越えて、遡行スタート地点の河原で身支度を整えます。

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▲ここが堰堤の上の河原です。ずっと昔は、ここからの遡行スタートの順番を競うように、林道歩きも急いだものです。それがこの日は、誰も来ません。僕たちだけでした。10:31ころ。

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▲毎度お馴染みのF1です。直登も出来ますが、やっぱり左の鎖場を登りました。いつか直登したいと思います。10:44ころ。

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▲F2です。このすぐ手前にセドの沢の出合があります。10:48ころ。

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▲滝の左に残置のロープなどが設置されているのですが、右の壁の方がそそられます。S崎君がノーザイルで試みましたが、少し厭らしいということで、ザイルを出して登ることに。10:54ころ。フォロウしてみると、3級+~4級-くらいのグレードで、出してくれて正解だと思いました。

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▲丹沢にはサガミジョウロウホトトギスという絶滅危惧種が生育しているのだそうで、すわ! これがそうか? と期待したのですが、サガミジョウロウホトトギスは黄色い花なのだそうです。11:00ころ。
でも、この花は普段よく野山で見かけるヤマジノホトトギスともどこか雰囲気が違っているようです。葉がどこかしらほっそりと繊細です。家に帰って調べても、よく分かりませんでした。確信は全くありませんが、“ホトトギス”ではないでしょうか?

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▲S崎君がこんなことを言いました。「F1、F2、F3、………、F8なんて呼び方ばかりで、どうして滝の名前が付いていないんだろう」と。確かにそうですね。支流には木ノ又大日沢とか金冷シ沢とか、何かしら謂れのありそうな名前が付けられているのですから、滝にもそれなりの固有名詞が付けられていても不思議ではありません。
僕が思うにこれは沢屋の怠慢だったのではないでしょうか? 恐らく、幾つかの滝には由緒ある名前があったはずです。でも、当時の沢屋さんたちにはそんな名前はどうでもよく、ただ機械的にナンバーをふっていったのでしょう。
ちなみにこの滝はF3のようです。11:27ころ。

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▲小滝が続いています。どれがF4だか分かりませんでした。看板も見落としたのでしょう。11:35ころ。

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▲これは正真正銘F5です。以前は右壁を斜めに鎖が付けられていました。その鎖が岩場の小崩壊で切れてしまっていました。上の写真に上半分の鎖が垂れているのが見えます。11:39ころ。
鎖があった頃は鎖につかまってザイルなしでも行けたのですが、(初心者にはザイルを付けてもらったとは思いますが)今日はそういうわけにはいきません。鎖がないとそれなりに難しい滝の登攀となりました。11:48ころ。

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▲F5のすぐ上流で書策新道が横切っています。12:02ころ。

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▲F6には大きなチョックストーンがあります。この右を登るのですが、出口は被さり気味で左手のホールドが見つかりません。結局、残置してあるたくさんのロープを目いっぱい掴んでのA0登攀になってしまいました。12:14ころ。
いつかフリーで越えてみたいものですね。

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▲右岸に付けられていた看板によるとこれがF7です。6mの滝だったようですが、今はありません。山の崩落で埋まってしまったのでしょうか? 13:00ころ。

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▲F7を過ぎ、F8直前で目の前にこの滝が現われます。これを登らなければならないのかと思いきや、沢は右に曲がっていて、この滝が支沢の出合にかかっているのだということが分かるのです。ちょっと奇妙な出合でした。13:15ころ。

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▲F8・25mです。この滝の前に立って、僕の心境は複雑です。23年前までは左岸に比較的安定した巻き道がありました。ちょうど滝の落ち口に出たものです。23年前から左岸の崩壊が始まり、その最初のほんの僅かな崩れが前途ある女性の人生を大きく変えてしまいました。
滝には、沢には、山には、自然には、見えない危険が隠れています。小心になり過ぎることはありませんが、細心でなくてはいけません。謙虚に、あらゆる蓋然性に心を開いていなくてはなりません。13:17ころ。

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▲F8から離れるように右のルンゼを高巻き始めます。13:21ころ。
8年前のY根君と高巻いた際には滝の落ち口へトラバースすることはおろか、沢床へ下りるルートさえ見つからず、上へ上へと追いやられました。そのうち沢床へ下りるより、稜線へ出た方が近くなったので、そのまま稜線の登山道へ飛び出したものです。
でも今回は何と残置ロープが何十メートルと設置されていて、危なっかしいザレて脆いルンゼのトラバース等を助けてくれます。無事に沢床へ下りることが出来ました。

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▲今回F8をちゃんと高巻きたかったのは久し振りにF9を直登したかったからです。右のスラブ状を高巻き気味に登ると2級程度なのですが、水流のすぐ左を登るルートは少しいやらしい。
しかし、F9は滝そのものが崩壊していました。まったく別の滝になってしまっています。写真の滝がF9ですが、滝の前がゴソッと崩れています。まだ崩壊の最中でしょうから、登攀するのは危険でしょう。右から大きく高巻くことにします。13:39ころ。

ここも大高巻きになりました。水無川本谷はF9が最後で、後は詰め登るだけです。僕たちは沢床に戻ることは諦め、そのまま登山道へと向かいました。

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▲鹿道を拾いながら、稜線の登山道へ向かいます。霧雨がザックや衣服を濡らしました。気温も下がっています。14:01ころ。

塔ノ岳山頂には14:14、大倉尾根を下り、大倉へは16:24に着きました。16:38のバスに乗り、渋沢駅ですぐ電車に乗ります。あれ? そうなんです。今日は打ち上げなし。S崎君の翌朝からの仕事の都合で打ち上げが出来ませんでした。
仕方がないので、家へ帰り、S子と打ち上げ!


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