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2013-07-28 20:55:39 | 記録
東日本大震災と福島県の有機農業

2013年7月28日(日)10:00~12:00 アキタ・スクエア4階で「福島県農業の今を学ぶ会」が開催された。

 NPO法人福島県有機農業ネットワーク(以降、ネットワークと表現する)の東京在住の東京事務所の高橋久夫さん、福島県二本松市在住の亊務局員高松祥子さん、伊達市在住の有機果樹栽培農家の草野学さんを招いて、秋田県立大学 環境社会学研究室主催の学習会。

 冒頭、ネットワークの三氏から現状についての話しがあった。理不尽な現状について言うべき言葉はない。JAのような農業団体に属さず、個人的な努力で販路を開拓し、優良な生産物を提供してきたネットワークの能業者たちは、その独立心の強さ故に今言いようのない苦境に立たされている。全ての事務手続きを自ら行い、各省庁並びに東電などの説明会に遠路出席することを必要とされ、中山間地の非常に手間ひまを必要とする作業に加えて、表土を剥ぐことや反展耕果樹の皮剥除染や棚田の一枚一枚に丁寧に行なった除染、こうした作業は農家の自主的な活動として公的な評価はされていない。

 また、様々な除染方法を農水省主導で行なってきたが、粘土質土壌の国内の田畑と以前不幸な原発事故で多くの健康障害を生じたベラルーシなどの地域の土質の違いが明らかに成り、土壌改良剤を混入しなくても土壌への放射性セシウムの吸着は促進されていることが分かってきた。半減期30年のセシウム137に汚染された土壌などの処理法はまだ確立されていないのだが…

 そして、今、福島県の農産品は、首都圏を初めとして販売は拒否され、ひいては、東北の農産品についても同様の対応がみられる。カロリーベイースが食糧自給率30%を切る昨今の国内事情を考えると東北は自給率100%を越える県がほとんどだ。

 さて、福島県のホームページに市民の提案に対する知事の発言が掲載されている。

「福島県の農業・農村の20年後を考えた提案」;「提案の一つ目は、福島県からの何らかの支援により、農家の嫁にパートに行かないで、農業に従事してもらえるようなシステムができないかということです。

 二つ目は、自給自足ができる福島県です。日本の食料自給率は40%ですが、福島県は80%を超えておりますので、食料自給率の極めて低い都市部を考慮しなければ、福島県の中だけで自給自足ができるということなのです。

 農業をやっている方も、漁業をやっている方も福島県内で全部売れるのであるならば、やめないで確実に続けていくのではないでしょうか。福島県内でとれた物で、フードマイレージ(食料の輸送距離)が小さい、自給自足システムをつくっていただきたいと思っております。

 また、もう少し中間業者が入らない形で、流通システムをつくっていくことも大切だと思います。現状では、例えば、大根1本が100円で売れても、生産者に入るのは10~20円くらいにしかなりません。直売所関係では可能なのですが、生産者に6割から7割入るようなシステムができないものかと思っております。

 三つ目の提案は食糧保険です。都市部では、例えば大阪は食料自給率が2%で、東京はさらに低いという状況にあります。今後食糧危機などがあった場合に、食糧が不足している所に対して福島県が助けてあげるというような、がんや交通事故の保険同様の食糧保険制度ができないかと思うのです。

 生産者と都会の方が直接やりとりすることは難しいと思いますので、間に保険会社のようなものが入り、食料自給率の低い地域の人が毎月の保険料を支払い、そのお金がプールされて、生産者の収入を保障するとともに、加入者は、もしものときに一定期間の食糧が保障されるという形です。

 もしもどれか使えそうなものがありましたら、ぜひ検討していただければありがたいと思います」

 この提案に対する福島県知事の発言;「 福島県の農業産出額は2,500億円で、食料自給率は83%です。東北で食料自給率が一番低いのは宮城県ですが、その他の県は100%を超えています。

 私は、福島県の産業全体の中で、農業生産をもっと進めなければいけないと思っています。外国産の事故米の事件のように、最近は、毎日のように食品の偽造や偽装に関する事件が報道されていますが、そのような状況から、だんだんと国内産品への回帰が強まり、地産地消を進めたり、食料自給率を高めようという形になってくると思っています。今、農業にとって風はフォローになりつつあると思い、取り組んでいます。

 また、先日、岩手県の高齢者の皆さんが、生き生きとして炭焼きやそばづくりをやっている姿を見たのですが、農家の方々が大切にしていることは、ものを生産すること自体の価値だと思いました。

 今は、お金の価値を優先する社会になってしまっていますが、再び、そのような価値を大事にしようということで、農業が見直されてきていますし、そこに現金収入があれば、そのような回帰はさらに進むのではないかと思っております。

 その一環となるかもしれませんが、福島県の直売所での売上げは70億円ぐらいありますが、これは、圧倒的に女性の皆さんの力で、これから直売所もどんどん増えていくのではないでしょうか。

 先日の商工会連合会さんとの懇談の中で、高齢者が多い集落でも、生産まではなんとかできるが、生産した物の運搬や店頭に並べることは難しくなっているので、商工会の青年部と農家が連携を取りながら何かやっていけないだろうかという話になりました。より多くの新鮮な物が、より多くの消費者に届けられるように、私どもも努力をしなければいけないと思っています。

 それから、保険制度もとてもよい発想だと思います。かつて「ふるさと運動」を展開し、特別町民制度をつくった町長さんがいらっしゃいました。その運動の中で、食糧危機のときに食糧を供給するという制度をつくろうと、ある信販会社と一緒に取り組もうとしましたが、当時の都市部では、食糧危機や地震災害などは現実問題としてまだあまり考えられなかったこともあり、実現はしませんでした。

 先週の土曜日に、県内各地から県民約90名が会津坂下町に集まり、生産者の皆さんと交流を深めました。地方と大都市部の間でも、食糧保障という一つの安全保障の観点から連携を取りながら、そのようなことにだんだんと取り組める時代が来ていると思います。」
この発言に対する問い合わせ先は、<連絡先>知事直轄県民広聴室〒960-8670 福島県福島市杉妻町2-16 電話:024-521-7013 FAX:024-521-7934 e-mail:koucho@pref.fukushima.lg.jp

 この提案と知事の発言は、農業に特化しているが、農業の一分野である畜産農家や林業家についても勿論適用されるものと思われる。
 県内消費が今まで以上に促進され自給率が充足されれば、自ずと他地域への供給も可能となるが、優良な産品を産出している農家は、より高い次元での取引を求めると思われるので、そうした場合の販路の開拓を個人で行なうことが困難であれば、行政がサポートし、恊働することが最も早い販路の拡大と消費地への供給を可能にする。

 しかし、この重大事故を引き起こした東京電力の消極的な事故処理対応と地域住民から全てを奪ったことに対する重責を充分に認識して欲しい。

 世界に公害という言葉を認識して企業活動をすることを身を以てしめしたチッソ水俣工場では、構内の巨大なタンクに有機水銀を保管している。何らかの事由でタンクが破損した場合は、地表に流れ出す危険を包含している。
東電の事故も廃棄物処理が出来ない状況なので、水俣と同様に常に非常事態になる危険を孕んでいる。科学技術は、便利で快適な暮らしを提供したかに見えるが、滅亡への種まきをし続けているとも言えよう。

 この学習会で、JAでは外食・中食産業への販路を確保し、各農家の事務代行を行なうなどして、放射能測定基準値を下回る農産品の販路を確保したいるが、個人営業の有機農産品を産出している農家は作っても売れないというジレンマに陥っている。光が当たらない農家への支援をどのようにしていくかが問われていると感じた。