私が小学校に入学する前、事件は起こった。
3歳になる弟が大やけどを負ったのだ。
ある日
母は、沸かしたヤカンのお湯を、テーブルの上に置いてあるポットに注ごうとしていた。
その際に母の手元が狂って、
テーブルの椅子に座っていた弟の身体に熱湯をかけてしまった。
弟は泣き叫び、母はパニックに陥った。
平日の昼間で、父は仕事で不在だった。
近所に病院はなく、母は車の免許も持っていなかった
身体を冷水で冷やしながら、すぐに救急車を呼ぶべきレベルの大火傷だったが
母は救急車を呼ぶことを躊躇ってしまった。
母の脳裏にまず浮かんだのは、
(敷地内同居している)舅と姑に何て言えばいいんだろう!
救急車を呼べば、近所の人に自分が子供に火傷を負わせたことを知られてしまう!
ということだった。
母はお風呂場で弟の身体にシャワーをあてながらも、パニックになりしばらく何もできなかった。
弟の火傷は重症で、病院へ行くと即日入院となった。
医師からは、
なぜ直ぐに救急車を呼ばなかったのか、
もっと流水で冷やさなかったのか、
と責められたという。
そうすればここまで重症にならなかったかもしれないと。
幼い弟は一年近くに及ぶ入院をし、
形成手術を繰り返すことになる。
母は罪悪感から自分を責めるようになり、少しずつおかしくなっていった。