弟がやけどをしたことで、母は病院に泊まり込むことが増え、
家に残された私は、祖母にあれこれと尋ねられた。
「どうしてあんなことになったの?
弟くんはなんでやけどしちゃったの?」
幼い私は正直に答えた。
「ママがカップラーメンを作ろうとしてお湯をわかして、
それでママがやかんを持ったとき、まちがえて弟くんにこぼしちゃったの」
母は料理をするのが嫌いで、カップラーメンを私達きょうだいによく食べさせていた。
家の跡取りである孫に大怪我をさせ、
その原因がカップラーメンと聞いて、祖母は激怒したのだろう。
後日、祖母から何かを言われた母は、
祖母に話をした私に対して怒り狂った。
「おばあちゃんに余計なことをいいやがって!」
「弟くんのことでお母さんはこんなに苦しんでいるのに、
なんでお前はお母さんをもっと苦しめる様なことをするの?」
「弟くんがカップラーメン食べたいって言うから作ろうとしただけなのに!」
母のヒステリーが一度始まるとなかなか止まらない。
母は泣きながら大きな声で私を怒鳴り続けた。
幼稚園児だった私には、自分が怒られている意味がわからなかった。
ただ、余計なことをしてしまった自分を責めながら、
嵐が過ぎ去るのを待っていた。