一番最初にケン・ローチ監督の映画を観たのは、岩波ホールでやっていた「大地と自由」である。
それ以来、ケン・ローチ監督の新しい映画が出ると観に行っている。
今回観た映画は、「家族を想うとき」。
ヒューマントラストシネマ有楽町に観に行ってきた。
ほぼ満席だった。
この映画を観ていると、アルバイトや派遣などの非正規労働者として働いていた時のことや日本で働きながら生活する外国人労働者のことや私たちの働く教育現場のこと、子どもたちの親たちのことが頭に思い浮かんできた。
家族のために、生活する賃金を得るために働く。
目の前にいる自分を必要とする人のために働く。
一生懸命がんばって働く。でも、生活はよくならない。
8時間労働制は?
労働者の権利は?
労働者を守るための制度はまるでなきものにされ、労働者の生活が破壊される。
自分の自由に使える時間、家族との時間も奪われる。
新自由主義経済政策によって、こんな理不尽な働かせ方が、日本中あちこちでまかり通ってしまっているのではないだろうか。
「自己責任」という言葉によって、労働者の権利が無視されている現実をケン・ローチ監督は、怒りをもって描いている。
教育現場も無関係ではない。
「自己責任」という考え方は、どれだけ都合のよい言葉であろうか。
冬休み前の職員会議で、管理職が過労死した教員の例を挙げて、「過労死した教員も、周りの教員が『大丈夫?』と声をかけても『大丈夫』と答えていたそうです。ストレスが溜まると自分が大丈夫でないこともわからなくなってしまうそうです。だから、みなさんも体調管理に気をつけてください」というようなことを言っていた。
教員の長時間労働を放置した管理職の責任、現場にいろいろな仕事を強制してくる文部科学省や教育委員会の責任を不問にし、過労死を教員個人の問題にすりかえる「自己責任」の考え方である。
長時間労働・過労死は、個人の問題ではないことをはっきりさせなければならない。
私たちの毎日の時間外労働も勝手にやっているものとされ、「自己責任」とされていると思うと許せない。
映画終了後に「報道特集」のキャスターをしている金平紀茂さんのトークイベントがあり、お話を伺った。
「舞台はイギリスですけれども、日本のことだと私は思いました。」
「いつのまにか慢性的にひどい状況に置かれているので、私たちは慣れてしまっている。もっと怒れと言われているように感じました。」
とおっしゃっていた。
私は金平さんのお話を終始共感をもって聞いていた。
もっと話を聞きたいくらいいい話だった。
まだ観ていない方は、ぜひ観に行ってください。
ケン・ローチ監督には、長生きしてまた次の作品を作ってほしい。
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