6年生の社会科は今、政治単元の学習中だ。
東京書籍の教科書では、「私たちの願いを実現する政治」という単元名になっている。
それまでの歴史学習とはちょっと違った中身だけに、子どもたちの受け止め方が気になったが、何と彼らはその歴史学習を無駄にしてはいなかった。
それまで私が専任で授業をしてきた社会科であるが、「この単元は是非自分でやってみたい」という若い女性担任の意向もあり、彼女がメインで私がサブに回る形で授業を進めている。
まさに理想的な形だ。
教科書では身近な問題として、「福祉施設を作って欲しいという市民の願いをかなえるため、市や市議会はどのような働きをしているのか」というような展開から政治単元を始めているが、彼女はここを組み替えて授業したいと主張した。
つまり、国の政治から入って、後で自治体の政治も同じようになっているんだとする指導計画だ。
この指導計画の変更に、私は賛成するとともに彼女のセンスの良さを感じた。
教科書通りに指導するのも政治単元では難しいのに、それを自分の考えで変更するとは実に見上げたものだ。
実はこの実践には伏線があった。
通常は2学期に実施する6年の社会科見学を、学年の都合で1学期にやってしまったのである。
この時、二人の担任はこの見学を無駄にしたくないということで、私の通常の授業とは別に「国会見学で分かったこと知りたいこと」を特別授業でまとめていたのである。
授業前日に、私たちは簡単な打ち合わせをするが、基本的には彼女が授業の流れを提案し私がそれを補足修正するというパターンだ。
この日の中心となる資料は、「衆議院議員選挙の投票率」という棒グラフで2012年の前回総選挙まで10年単位くらいで表示してある。
明らかに右下がりのグラフである。
まず初めに、このグラフは何を示したものかを子どもたちに問うことから開始。
「投票率」という言葉が出てきたところで、その意味を説明。
投票できる者は20歳以上の全ての国民であることを確認。
ここで、「25歳以上の男子で一定の税金を納めていた者」に限定されていた大日本帝国憲法の時とは異なることも確認した。
このグラフを見て気づいたことを発表させた。
「年々減ってきている。」
「2012年では59%くらいまで減っている。」
ここで、担任が問いかけた。
「投票率が下がってきていることに対してどう考えるますか?」
さっそくノートに書かせた。
その後に3人程度の小集団で話し合いをさせ、代表がそれぞれ発表。
この学習方法は他の考えも聞きながら考えられるので有効だ。
次々に発表するのを聞きながら担任は板書する。
キーワードを中心に簡単に記述するやり方もスピーディーでなかなかのものである。
子どもたちの発言は大きく二つに分けられた。
一つは、投票率が減ってきた原因を分析したものだ。
「若い人があまり選挙に行かなくなったのだと思う。」
「選挙に興味を持つ人が少なくなったから・・・・。」
「忙しいから選挙に行く人が減ってきたのだと思う。」
等々。
もう一つは、投票率が減ってきたこと自体に自分の考えをぶつけたものだ。
「選挙に行く人が少なくなると、多くの意見が政治に反映されなくなる。」
「なぜ選挙に行かない人が増えてきたのか、このままでは国民の意見が広まらない。」
「できるだけ沢山の意見を出した方がいいので、もっと選挙に行ったほうがいい。」
等々だが、その中でも際立っていた発言があった。
「こんなに投票率が下がっていって国民の意見が弱くなると、少ない意見で政治が決まるようになる。太平洋戦争の時みたいに、上の人の考えで政治が決まってしまうかもしれないので選挙に多くの人が行ったほうが良い。」
この子の発言は歴史学習をしっかりふまえて考えたものだった。
側らで聞いていた私は非常に嬉しかった。
この発言を今の有権者の大人たちに聞かせたい。
「多分、選挙には行かないと思います。だって、どの政党もちょっとって感じだし、私たちのことを考えてないみたいだから・・・」
と、街頭インタビューでしたり顔して答える「専業主婦」。
「今の政治には期待していません。それより仕事をどうしようとか今日の生活を考えることの方が先です。」
と、全くトンチンカンなことを言うサラリーマン。
選挙権のある大人たちがこんな状態だから投票率が下がってきたのだ。
私は授業の最後に子どもたちに話した。
「2012年の次はどんな数字で表されるかな? 更に減るかな、増えるかな? 今日学習したことは今実際に行われている選挙のことだね。家に帰ったらうちの人と今日の学習したことを話し合ってみてください。」
今この時期に合わせて絶妙な指導計画を立てた若い担任、真摯に問題に立ち向かって考えた子どもたち。
文科省の学習指導要領で示された小学校社会科の最終的目標は「公民的資質の基礎を養う」である。
これをきっちりやりきった今回の学習であった。
まさに民主主義を体現する実践、このような社会科を積み重ねていくことが戦後の民主教育の原点に立つ教育と言えるのではなかろうか。
<やったるで>
東京書籍の教科書では、「私たちの願いを実現する政治」という単元名になっている。
それまでの歴史学習とはちょっと違った中身だけに、子どもたちの受け止め方が気になったが、何と彼らはその歴史学習を無駄にしてはいなかった。
それまで私が専任で授業をしてきた社会科であるが、「この単元は是非自分でやってみたい」という若い女性担任の意向もあり、彼女がメインで私がサブに回る形で授業を進めている。
まさに理想的な形だ。
教科書では身近な問題として、「福祉施設を作って欲しいという市民の願いをかなえるため、市や市議会はどのような働きをしているのか」というような展開から政治単元を始めているが、彼女はここを組み替えて授業したいと主張した。
つまり、国の政治から入って、後で自治体の政治も同じようになっているんだとする指導計画だ。
この指導計画の変更に、私は賛成するとともに彼女のセンスの良さを感じた。
教科書通りに指導するのも政治単元では難しいのに、それを自分の考えで変更するとは実に見上げたものだ。
実はこの実践には伏線があった。
通常は2学期に実施する6年の社会科見学を、学年の都合で1学期にやってしまったのである。
この時、二人の担任はこの見学を無駄にしたくないということで、私の通常の授業とは別に「国会見学で分かったこと知りたいこと」を特別授業でまとめていたのである。
授業前日に、私たちは簡単な打ち合わせをするが、基本的には彼女が授業の流れを提案し私がそれを補足修正するというパターンだ。
この日の中心となる資料は、「衆議院議員選挙の投票率」という棒グラフで2012年の前回総選挙まで10年単位くらいで表示してある。
明らかに右下がりのグラフである。
まず初めに、このグラフは何を示したものかを子どもたちに問うことから開始。
「投票率」という言葉が出てきたところで、その意味を説明。
投票できる者は20歳以上の全ての国民であることを確認。
ここで、「25歳以上の男子で一定の税金を納めていた者」に限定されていた大日本帝国憲法の時とは異なることも確認した。
このグラフを見て気づいたことを発表させた。
「年々減ってきている。」
「2012年では59%くらいまで減っている。」
ここで、担任が問いかけた。
「投票率が下がってきていることに対してどう考えるますか?」
さっそくノートに書かせた。
その後に3人程度の小集団で話し合いをさせ、代表がそれぞれ発表。
この学習方法は他の考えも聞きながら考えられるので有効だ。
次々に発表するのを聞きながら担任は板書する。
キーワードを中心に簡単に記述するやり方もスピーディーでなかなかのものである。
子どもたちの発言は大きく二つに分けられた。
一つは、投票率が減ってきた原因を分析したものだ。
「若い人があまり選挙に行かなくなったのだと思う。」
「選挙に興味を持つ人が少なくなったから・・・・。」
「忙しいから選挙に行く人が減ってきたのだと思う。」
等々。
もう一つは、投票率が減ってきたこと自体に自分の考えをぶつけたものだ。
「選挙に行く人が少なくなると、多くの意見が政治に反映されなくなる。」
「なぜ選挙に行かない人が増えてきたのか、このままでは国民の意見が広まらない。」
「できるだけ沢山の意見を出した方がいいので、もっと選挙に行ったほうがいい。」
等々だが、その中でも際立っていた発言があった。
「こんなに投票率が下がっていって国民の意見が弱くなると、少ない意見で政治が決まるようになる。太平洋戦争の時みたいに、上の人の考えで政治が決まってしまうかもしれないので選挙に多くの人が行ったほうが良い。」
この子の発言は歴史学習をしっかりふまえて考えたものだった。
側らで聞いていた私は非常に嬉しかった。
この発言を今の有権者の大人たちに聞かせたい。
「多分、選挙には行かないと思います。だって、どの政党もちょっとって感じだし、私たちのことを考えてないみたいだから・・・」
と、街頭インタビューでしたり顔して答える「専業主婦」。
「今の政治には期待していません。それより仕事をどうしようとか今日の生活を考えることの方が先です。」
と、全くトンチンカンなことを言うサラリーマン。
選挙権のある大人たちがこんな状態だから投票率が下がってきたのだ。
私は授業の最後に子どもたちに話した。
「2012年の次はどんな数字で表されるかな? 更に減るかな、増えるかな? 今日学習したことは今実際に行われている選挙のことだね。家に帰ったらうちの人と今日の学習したことを話し合ってみてください。」
今この時期に合わせて絶妙な指導計画を立てた若い担任、真摯に問題に立ち向かって考えた子どもたち。
文科省の学習指導要領で示された小学校社会科の最終的目標は「公民的資質の基礎を養う」である。
これをきっちりやりきった今回の学習であった。
まさに民主主義を体現する実践、このような社会科を積み重ねていくことが戦後の民主教育の原点に立つ教育と言えるのではなかろうか。
<やったるで>