PISAの学力テストはしばしば話題になるが、日本が最も好成績(相対的順位が高い)だった2012年の調査は、まさに「ゆとり教育」を受けた世代が調査対象者だったと証言するのは、前川喜平前文科省事務次官だ。
前川氏によると、2018年の調査で順位が落ちて問題になったのは、「脱ゆとり教育」を受けた世代だと言う。
文科省がいわゆる「ゆとり教育」を開始したのは、それまでの知育偏重の詰め込み教育を見直して、指導内容の精選と授業時数の大幅削減を行ったことから始まる。
子どもたちがゆとりある学校や地域での生活をベースに様々な体験を重ね、受験学力に象徴される暗記型学習ではなく思考力を鍛えることを重視するものだった。
これは大きな流れとしては1972年に日教組が提起した「ゆとり教育」と「学校五日制」の考え方に近いものではあった。
しかし、国の進める「ゆとり教育」は必ずしも私たちが目指すものとは一致せず、まして教育内容の「自主編成」とは真っ向から対立するものであった。
それは、臨時教育審議会(臨教審)による介入(教育の民営化・自由化等の発想は現在にも脈々と流れる)や中教審・教課審が具体的に現場に下ろしてきた「総合的学習の時間」や「新学力観」でしばりをかけるものだった。
今でも忘れられないのは、一時、「ゆとりの時間」という授業枠があったことだ。
ゆとりを生むために授業時数を減らしたのに、何で縛りをかける必要があるのか⁉︎
「学校文化」とも言うべきか、何かが変わるとそのために何かしなければと考える悲しい性につきまとわれていたようだ。
<すばる>