【孫子】
孫子は、春秋戦後時代の軍事家で、呉王に仕えました。その著者は、歴代中国における兵法書の代表格です。孫子は、戦争の法則性を追求し、現実主義的な立場から「戦わずして勝つ」戦術を確立しました。
そもそも、戦争とは国家の一大事です。人的、物的コストが高く、長引けば、国の土台である経済が破綻してしまいます。そのため、なるべく素早い問題解決が必要です。また、無駄な戦争もするべきではありません。戦う場合でも、勝利が第一条件で、状況的に有利な時だけ戦うべきです。戦争とは、手段であって目的ではありません。目的は、相手を政治的にコントロールすることです。そのため、孫子は、戦わずして勝つことが最上の策だとしました。また、勝利をした後も、恨みを買うだけなので、敵をあまり追い詰めるべきではありません。
【組織の強化】
孫子は、敵が攻めて来ないことを期待するのではなく、備えは万全にすべきだとしました。そのため、用意周到に味方の防御を固め、敵が容易に攻撃出来ない態勢を作っておきます。強い軍隊を作るのに必要なのは、部隊編成による統治です。各部隊には、適材適所に人材を配置させますが、いつ戦死するか分からないので、あまり人材に頼りすぎてもいけません。
また、上司と部下が同じ目標を持つために、指揮の命令系統を整備することも重要です。一個の生物のように、臨機応変に動けることが理想とされています。やるべきことは「部下にルールを守らせること」「褒美で手なずけこと」「刑罰で統制すること」です。また、任務は与えるだけで、理由は説明してはいけません。下手に説明すると、混乱するだけだからです。
【事前の準備】
食料は、生きる上で不可欠なものです。そのため、まずは食料補給を断たれないようにしなくてはいけません。また、軍事品についても、出来るだけ使い慣れた自国のものを使うべきです。戦争をするには、兵士のやる気がなくては始まりません。そのため、意図的に自軍を戦わざるおえない状況に陥らせます。その上でやるべきことは、事前に敵を弱体化させることです。計略によって、敵を分裂させたり、外交交渉で孤立化させたりします。
自国の準備を整えたら、次に敵を知るべきです。そこでスパイを使って、敵の情報収集活動を行います。今後の対応を考える上で、その情報は重要だからです。ただし、その情報は正確でなくてはいけません。諜報活動は、敵に知られては意味がないので、極秘にやるものです。
また、戦争を有利に進めるには、心理戦にも勝つ必要があります。何事にも裏があるので、相手の話を額面通りに受け取らず、その意図を見抜かなくてはいけません。例えば、困ってもいないのに謙った態度をとるのは、進撃してくる可能性があります。逆に、弱っているのに強硬な態度に出るのは、撤退する前兆かもしれません。
【臨機応変な対応】
全ては状況によります。味方の兵が少ない場合は、隠れるか、退却するか、守りを固めるべきです。敵が高い位置にいるなど、こちらに地の利がない場合は、戦うべきではありません。特にリスクが高く、すべきでないのが城攻めです。こちらの勝利の条件が欠けている時は、無理に戦うべきではありません。
「窪地」や「茂み」には、よく敵が潜むものです。鳥が飛び立ったり、獣が驚いて走り出したら、 敵が潜んでいる可能性があります。戦争では、状況の変化をとらえ、その場に応じた臨機応変な対応をしなければなりません。変幻自在の作戦行動で、敵をかき乱し、その主導権を握っていきます。戦争においては、的確な判断力によって、機会をとらえなくてはいけません。対応が遅れれば、機会を逃してしまうからです。たとえ十分に味方の準備が出来ていなくても、素早く行動した方が良いとされています。敵が万全の防御態勢を整える前に、攻撃を仕掛けた方が相手を混乱させられるからです。
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