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フーコーの「言表」とは何か?

2023-10-18 11:17:00 | 西洋哲学

【言表】

 特定の「時間」「場所」において、偶発的に言われた一回だけの言葉の出来事を言表「エノンセ」と言います。言表とは、発話と言う日常の出来事を一つの行為としてとらえた概念です。それは、言葉という個々の表現として目の前に現れます。言表は、有限な長さの語群であり、一つ以上の文からなる言語の組み合わせです。言葉というものは、まったく同じことが二度と起きません。一回限りの反復不可能な出来事です。言表とは、物質的な存在ではありません。それは、独特な存在様式を持っています。言表とは、言葉という出来事を言語学的に表現したものです。



【言説との関係】


 言表は、言説「ディスクール」の基本単位であり、その要素だとされています。言説とは、歴史的に「集積」「編制」された個々の言表の総体です。その総体は、一つの時代を特徴づけています。時代ごとに、言葉遣いが違うのは、そのためです。例えば、現代では、江戸時代のような喋り方をしてません。言説は「一時代」「一定の場所」で、会話が成り立つ基本的な土台となっています。その土台がなければ、会話は成立しません。言表は、その言説によって囲い込まれ「制約」されています。制約とは、言説による「強制」や「抑圧」のことです。それによって、特定の「語り」「思考」「行為」が可能になりますが、それ以外は予防されます。ただし、制約されるとは言っても、文法的な規則には完全には支配されません。そのため、ある程度の柔軟性はあります。例えば、特定の地域では、特有の話し方をしていますが、完全に同じ話し方ではありません。それは、人によっても、違ってくるからです。また、言説には「非文法的なもの」や「無意味なもの」まで含まれます。


【日本で例えると】


  例えば、現代の日本と言う場所で、ある日本人が日本語を発したとします。そのある日本語が言表です。正確には、話した個々の言葉と言う「出来事」が言表と呼ばれています。その言葉を発することが出来るのは、日本語と言う言語の総体が存在しているからです。そうした言語の総体を言説「ディスクール」と言います。もし、それがなければ、日本語を話すことが出来ません。

 言説とは、日本語の話し方の「習慣」や「規則」のことです。この言説があるからこそ、日本人は、日本人的な話し方をすることが出来ます。日本人という人種だから、日本語を話せるわけではありません。例えば、アメリカで育った日本人は、英語を話しています。日本語というものは、社会に内在しているものです。そのため、日本で生活していないと、うまく使うことが出来ません。日本語という言説は、日本人がこれまで日本語を話してきたから、出来上がったものです。それは、日本語を話すことを可能にしますが、それ以外の話し方は抑制されてしまいます。また、それには個人差があり、誰が使っても完全に同じではありません。そのため、日本語の規則からは自由だとも言えます。



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10 コメント

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フリクション (ベアリングエンジニア)
2024-11-11 19:21:48
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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マルテンサイト変態千年グローバル (サムライ鉄の道リスペクト)
2024-11-14 08:24:41
一神教はユダヤ教をその祖とし、キリスト教、イスラム教が汎民族性によってその勢力を拡大させたが、その一神教の純粋性をもっとも保持し続けたのは後にできたイスラム教であった。今の科学技術文明の母体となったキリスト教は多神教的要素を取り入れ例えばルネサンスなどによりギリシャ・ローマの古代地中海世界の哲学なども触媒となり宗教から科学が独立するまでになった。一方でキリスト教圏内でも科学と宗教をむしろ融合しようとする働きにより、帝国主義がうまれた。宗教から正当化された植民地戦争は科学技術の壮大な実験場となり、この好循環により科学と宗教を融合させようというのである。その影響により非キリスト教圏で起きたのが日本の明治維新という現象である。この日本全土を均質化した市場原理社会する近代資本主義のスタートとされる明治維新は欧米などの一神教国が始めた帝国主義的な植民地拡張競争に危機感を覚えたサムライたちが自らの階級を破壊するといった、かなり独創的な革命でフランス革命、ピューリタン革命、ロシア革命、アメリカ独立戦争にはないユニークさというものが”革命”ではなく”維新”と呼んできたのは間違いない。しかしその中身は「革命」いや「大革命」とでもよべるべきものではないだろうか。
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潤滑機素設計関係 (ベアリング技術者)
2024-11-16 08:03:52
「材料物理数学再武装」といえばプロテリアル(旧日立金属)製高性能特殊鋼SLD-MAGICの発明者の方で久保田邦親博士(工学)という方のの大学の講義資料の名称ですね。番外編のFacebookにおける経済学の国富論で、価格決定メカニズム(市場原理)の話面白かった。学校卒業して以来ようやく微積分のありがたさに気づくことができたのはこのあたりの情報収集によるものだ。ようはトレードオフ関係にある比例と反比例の曲線を関数接合論で繋げて、微分してゼロなところが最高峰なので全体最適だとする話だった。
何年か前にノーベル賞候補(化学賞)にも挙げられていたCCSCモデルという境界潤滑理論(摩擦理論)の提唱者でもありますね。摩擦プラズマにより発生するエキソエレクトロンが促進する摩耗のトライボ化学反応において社会実装上極めて重要な根源的エンジンフリクション理論として自動車業界等の潤滑機素設計のコア技術として脚光を浴びつつありますね。人類というものは機械の摩擦や損傷という単純なことですら実はよく理解していないということを理解させられる理論です。
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AI革命の旗手リスペクト (元鉄鋼商事関係)
2024-11-24 18:45:12
「材料物理数学再武装」なつかしいですね。トライボロジーにおけるペトロフ則とクーロン則を関数接合論でつなげてストライベック曲線を作成する場合、関数の交点近傍でなくても繋げることができる関数としてAI技術の基礎となるシグモイド関数が出てくるあたりがとても印象的でした。なお、ストライベック曲線(シュトリベック線図・Stribeck curve)は、ドイツ人研究者のRichard Stribeck(リヒャルド・シュトリベック)が20世紀はじめに、すべり軸受の摩擦特性や、転がり軸受の静的負荷能力の実験から、導き出した軸受定数G(ゾンマーフェルト数;無次元数の一種)に対する摩擦係数の挙動を示す特性曲線です
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今年のノーベル賞 (史上最強の弟子ケンイチ)
2024-12-01 05:28:05
日経クロステックの記事に今年のノーベル賞は「「AIの父」ヒントン氏にノーベル賞、深層学習(ディープラーニング)の基礎を築いた業績をまとめ読み」と題して紹介されていましたが、物理学賞、化学賞ともにAIがらみあったんですね。しかしながらブラックボックス問題の解明には至っていないようです。
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焼入れ性半冷時間 (土木機械関係)
2024-12-01 05:31:40
「材料物理数学再武装」なつかしいですね。私なんかは特殊鋼の熱処理の焼入れにおけるマルテンサイト変態の際、重要となる焼入れ性評価に用いるTTT曲線の均一核生成モデルでの方程式の解析をPTCのMathCADで行い、熱力学と速度論の関数接合論による結果と理論式と比べn=2~3あたりが精度的にもよいとしたところなんかがとても参考になりました。
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アントレプレーナーたちに告ぐ (ファイナンシャルプランナー)
2024-12-01 05:33:39
AI半導体大手のNVIDIAのCEOも「AIと日本の優れた製造業、ロボット技術を合わせれば、日本は新しい産業革命を起こせる」と述べ、日本が持つ可能性に対して強い期待感を表明している。このようなAI技術は地球環境問題だけでなく人口減少に伴う労働力不足の解決策ともなろう。今後ロボットは高度な多軸、多関節化がおこることが予想されるため日本人の経営者も指導力を発揮すべきでは。
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グリーンスチール (製鉄機械エンジニア)
2024-12-08 08:50:19
トランプ大統領当選や、兵庫県知事問題でいよいよオールドメディアのおかしさがバレバレになってきましたね。真っ当なエンジニアはそろそろ気づいていますよね。
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雲伯油屋ミカドオイル (ストライベック)
2024-12-17 06:23:06
それにしても古事記はすごいよな。ドイツの哲学者ニーチェが「神は死んだ」といったそれよりも千年も前に女神イザナミ神についてそうかいてある。この神おかげでたくさんの神々を生まれたので日本神話は多神教になったともいえる。八百万の神々が出雲に集まるのは、国生み・神生みの女神イザナミの死を弔うためという話も聞いたことがある。そしてそこから古事記の本格的な多神教の神話の世界が広がってゆくのである。私の場合ジブリアニメ「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」「天空の城ラピュタ」などのの感想を海外で日本の先進的な科学技術との関連をよく尋ねられることがあった。やはり多神教的雰囲気が受けるのだろうか。
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ストライベック線図 (鉄鋼メーカーエンジニア)
2024-12-21 16:58:14
「材料物理数学再武装」なつかしいですね。トライボロジーにおけるペトロフ則とクーロン則を関数接合論でつなげてストライベック曲線を作成する場合、関数の交点近傍でなくても繋げることができる関数としてAI技術の基礎となるシグモイド関数が出てくるあたりがとても印象的でした。ちなみにストライベック曲線(シュトリベック線図・Stribeck curve)は、ドイツ人研究者のRichard Stribeck(リヒャルド・シュトリベック)が20世紀はじめに、すべり軸受の摩擦特性や、転がり軸受の静的負荷能力の実験から、導き出した軸受定数G(ゾンマーフェルト数;無次元数の一種)に対する摩擦係数の挙動を示す特性曲線です。
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